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【ホンダ シビックタイプR 新型】シビックの血は操る歓び…商品企画[インタビュー]
1月にマイナーチェンジしたホンダ『シビック』。そして夏ごろには「タイプR」が投入される予定だという。そこで今回、商品企画サイドからタイプRを開発するに際し何をどう考えたのかについて担当者に話を聞いた。
◆育てていこう
まずは商品企画としてどのような考えのもとに、シビックタイプRの開発はスタートしたのだろうか。本田技研工業商品ブランド部商品企画課の齋藤文昭さんは、「2017年に発売したモデルが世の中にしっかり受け入れられたという確信のもと、お客様が求めていることをどこまで超えられるかを開発陣と一生懸命話をした。そのうえで、その期待を超えたシビックタイプRを“育てていこう”という姿勢を打ち出すことにした」と話す。
その “育てていく”ことがポイントだ。「現行はデビュー以来、今回まで特に手を入れて来なかった。そのこともあり、昨年11月にシビックのマナーチェンジを発表した際に、もうなくなってしまうではないかと噂をされてしまった。しかし、そういうことはなく、しっかりと育てていくということを伝えなければいけない。これを第一義として始まった」と語る。
◆市場に受け入れられた先代
では世に受け入れられたという確信はどこで得られたのか。齋藤さんは大きく2つあるという。ひとつは販売台数だ。「計画の年間1500台に対し3000台近くの要望をもらい届けることができた。投入した市場において、この価格でどこまで受け入れられるかを精査した結果の値付けでもあるので、(市場からは)より受け入れられたと考えている」とコメント。
もうひとつは、納車までの時間だ。「実際に納車にまで時間がかかることにお客様がどう捉えるか、その反応を見ようと思っていた」という。その結果は、「市場は1年待ってもよいほどのクルマだといってもらえた」。齋藤さんは、「もちろん(納車まで時間がかかったことで)迷惑をかけたことは反省しなければいけない。しかし、お客様の声からは価格やデザインなどの不満の声はなく、我々としては届けてよかったと確信した」と述べる。
◆タイプRだけではなくシビック全体として
新型シビックタイプRのキーワードは“育てていく”ことだと齋藤さんはいうが、では具体的に何を育てるのだろう。
「シビックはハッチバック、セダン、そしてタイプRと3機種ある。現在国内では“シビック”という名前が認知されており、特に“タイプR”という名前だけが大きく認知されているとは思っていない」という。その理由は、「国内では、ずっとシビックを手に入りやすいクルマとして販売してきたからだ」と述べる。そのうえで、「タイプRはシビックの高性能バージョンという位置付けなので、どうやってシビック(というブランド)をより認知させていくべきかを考えた結果、東京オートサロン2020でセダン、ハッチバック、タイプRを揃え、シビック全体として発信するのが一番伝わると判断した」と説明する。
つまり、4ドア、5ドアなどとわけず、まずはシビックというブランド全体として訴求をしようということだ。「これはいずれの系譜、起源も一緒だからだ。そこをしっかりとシビックシリーズとして訴求していこう。それが育てていく姿勢だ」と齋藤さん。
また、今回の商品改良の内容はタイプRが最も大きく、それを見て、「(シビックのラインナップとして)タイプRだけ残る、走るクルマだけ残るのではないかと感じている方もいる。しかしそうではなく、お客様が求めているシビックをきちんと育てていくことをアピールすべく、3機種揃えて一度に発信することに意志を込めた」と語る。
しかし、過去を振り返ると先々代シビックはタイプRのみの時もあった。それにもかかわらず今回はあえてシビックファミリーとして訴求するのか。
齋藤さんは、「確かにタイプRが最も進化幅が大きい。しかしこれは、それぞれの性格に合わせた進化であり、たまたまタイプRはよりこだわったことからちょっと大きな進化幅になったが、それはハッチバックとセダンの進化しろも含めた結果だ。そのうえでシビック全体として、その方向性は揃えている」とコメント。そのうえで、「その変化の格差のみが取りざたされてほしくない。流れている“血”をきちんとアップデートし、育てていくことに変わりはない」という。
その“血”とは、「操る歓びだ」と齋藤さん。「それはホンダの血とも思っており、走りを求めることや、チャレンジングスピリット、レーシングマインドになるだろう」と述べ、「今、台数が売れているクルマ達にホンダのイメージが先行してしまっており、そちらも大事だが、ホンダの血、タイプRの血、シビックの血をきちんと育てていこうという意味を込めている」と述べた。