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AI制御自動運転バスを埼玉工業大学が国内で初めて開発、年6台の販売をめざす
「いち早く自動運転バスを具現化し、さまざまな車種に対応する自動運転AIの実用化、市販化をめざす」 埼玉工業大学は、トヨタ『プリウス』ベースの自動運転実験車で培ったノウハウをマイクロバスに移植。国内初のAI制御自動運転バスがいよいよ走り出した。
この日野『リエッセ II』ベースの自動運転バスは、身障者用自動車運転装置などを製造・販売するミクニ ライフ&オート(埼玉県加須市)によるジョイスティック運転システムを装備した日野 リエッセ II に、埼玉工業大学がマイクロバスむけに新たに設計・開発した接続マイコン、自動運転AI(AI Pilot / Autoware)を実装したモデル。
「これまでプリウス自動運転実験車で1000km以上のテスト走行を繰り返し、進化させてきた自動運転AIを、マイクロバスむけにさらに進化させた。障害物の識別・分類する検知機能などを強化させた」と話すのは、埼玉工業大学 工学部 情報システム学科 渡部大志教授(埼玉工業大学 自動運転技術開発センター長)。
ジョイスティックで操作できる制御機構と、自動運転AI(AI Pilot / Autoware)の間を、埼玉工業大学が開発した接続マイコンが結び、センサー情報と自動運転AIのディープラーニングによってマイクロバスが自動で、手放しで、走ることができる。
◆ガコンという衝撃も、自動運転バスならでは
8月1日、埼北自動車学校(埼玉県加須市)に行われた報道むけテスト走行では、LiDARなどでとらえた情報をもとに自動で走る姿を公開。直線路の前方に2台の乗用車があるのをセンサーがとらえ、車線を変更して回避するシーンも確認できた。
試乗してみて、いま巷でみかける乗用車タイプの自動運転車と違うと感じたのは、発進直後と停車直前。走り始めようとするときにガコンと衝撃があり、止まる直前、最後の最後にまたガコンと衝撃がある。
「実はこれが自動運転マイクロバスの難しいところ」と話すのは、制御接続マイコンを開発した、もと埼玉工業大学 准教授の和田正義 東京農工大学 准教授。
「マイクロバスは、油圧系パワーステアリングや空気油圧複合式ブレーキが採用されているため、ブレーキのコントロールが乗用車よりもデリケート。人間の足で操作する繊細な動き、たとえば停車直前に足をふわっと抜くような操作を、まだマイコン側がコントロールできていない。こうした点にもまだまだ開発の余地がある」(和田准教授)
そもそもなぜジョイスティック操作バスを選択したか。埼玉工業大学やミクニライフ&オートは、「もともとある制御システム、接続マイコンを流用することで、開発コストや製造工程を軽減・短縮でき、普及を加速化できる」と教えてくれた。
◆実験車両の販売目標は年6台、市場規模は年3億円
埼玉工業大学は、この自動運転バスの実験・更新を重ね、マイクロバス実験車両とマイクロバス対応自動運転AI・接続マイコンの市販化をめざす。実験車両の生産・販売目標は、年6台。バスへの安全支援機能後付けキットや安全運転支援機能付き「ジョイ・カー」も市販化させる構え。
ターゲットは、自動運転バス実験車両が自動運転実証実験を行う企業や大学。安全運転支援機能後付けバスは「より多くの運転手確保を目指すバス事業者」、安全運転支援機能付きジョイ・カーは、電動車いすに乗っている障がい者など。
「市場規模は、自動運転バス実験車両が年間3億円。現在の工期から算定し、年間出荷台数6台で想定。安全運転支援機能後付けバスが年間10億5000万円。年間出荷台数を350台、1台300万円で想定。安全運転支援機能付きジョイ・カーが年間125億円。年間出荷台数を2500台、1台500万円で想定して」(渡部教授)
「日本国内の公道を、特別な緩和措置や道路封鎖なしに実証実験できる自動運転バスの実験車両は4台しかない。しかもディープラーニング AI画像認識を活用した点が差別化ポイント」というこの埼玉工業大学版 自動運転バス。「間近で見てみたい」という人は、東武東上線 坂戸駅北口で8月17日に開催される「坂戸・夏よさこい」へ。