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女子大で考える自動運転「社会心理学的な視点も」金城学院大学が構想
路端から突然、子どもが飛び出してきてブレーキは間に合わない。対向車もきていて、ハンドルを切って子どもを回避したとしても、正面衝突は免れない……。そんな状況下で、自動運転のAIは、どう認識しいかに判断してコントロールするか。
そこに「多くの人がどう考えるかといった社会心理学的な視点もあわせて検討していく必要がある」と唱える専門家がいる。金城学院大学・人間科学部多元心理学科の北折充隆教授だ。
同大学は6月26日、メディアむけ研究発表会を実施。北折教授は「自動運転のAIが事故回避不能状況でどう判断するべきか」といった構想段階の研究目標を公表。「なにを正しいと考えるか?」というテーマで語った。
ここでの事故回避不能状況とは、冒頭のようなケースに加え、「交差点にさしかかり、右折車が回避できないタイミングで曲がってきた。直進すればその右折車と衝突。後続車両にも被害がおよぶうえ、ハンドル回避すれば歩行者をはねてしまう」といった滋賀・大津で起きた交通事故のような状況や、「満員の路線バスの前に子どもが飛び出してきて、急ブレーキをかけると乗客が将棋倒しになる」などがあげられた。
北折教授は、こうしたシーンに直面したさいに、社会心理学的な見地からのウェブ調査へむけて検討しているという。「こうしたケースに直面した場合、多くの人がどういった判断をするか、どういう心理特性を持った人がどう判断するかを、調査していく」と北折教授。
「ここで重要なのは、倫理・道徳的に正しい判断だとしても、それが多くの人が『望ましい』と考えられていない可能性がある点。AIが事故回避不能の状況下で、どんな判断をすべきかについては、哲学・倫理学的側面に加え、多くの人がどう考えるかといった社会心理学的な視点もあわせて検討していく必要がある」
また北折教授は法整備の遅れも指摘。「自動運転車が事故を起こした場合、責任のありかが不明。開発側やメーカー側が責任を問われることになれば、技術革新のスピードが落ちる」と。
同大学は、こうした視点から産官学による研究を加速させる構え。発表を終えた北折教授に「女子大でこういう話題は女子たちに注目されてるか?」と聞くと、「身近な経済を加えると女子たちもいろいろ考えてくれる。たとえば、道路建設費用について、ひとりあたり5万円かかる道路と、1万円かかる道路はどう違うとか。違いがないのになぜかかる金額が違うのかといった、自分自身にふりいかかる金の話題が加わるといっしょに考えてくれる」と教えてくれた。