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「運転中もスマホ見放題」へ法改正!だけど、まだまだ先の話です【岩貞るみこの人道車医】
【運転中もスマホ天国?】昨年末あたりから「運転中の携帯電話使用がOKになる!」と小躍りしている人を見かける。元ネタは昨年末に警察庁が発表した、道路交通法の一部を改正する法律案だ。
国会に提出された案には確かに、「携帯電話使用等を禁止する規定を適用しないこととするもの」という文言が見受けられる。
おお!
いやいやいや!これ、読み間違ってはいけない。これはあくまでも、自動運転中の話。技術者が定義するところの、レベル3での話である。そして現在、日本だけでなく、世界中でレベル3のクルマは販売されていない。つまりこの案は、来るべき未来の、レベル3のクルマが世の中で走り始めたときの話なのだ。
だから今、そして、今後しばらくも、携帯電話を手で持ちながらの使用や、画面を注視するような行為は禁止なのである。
◆ところでレベル3ってなんだっけ?
自動運転技術は、車両のシステムができることによってレベル分けされている。分けたのは、米国自動車技術者協会であるSAE(Society of Automotive Engineers)。日本でも、この定義を使っている。
ざっくりいうと、レベル0が、完全アナログで人が操作するもの。レベル1は、被害軽減ブレーキやACCなど、前後の運転支援技術。レベル2は、さらに、レーンキープアシストなど、横方向が加わった技術がついているものだ。
ここまでは「運転支援技術」であり、常に運転者に周囲の監視義務と責任が発生する。そして、いま、販売されているクルマは、ここまでだ。なぜなら、ウィーン条約やジュネーブ条約で、そう定められているからである。
では、レベル3とはなにか。一時的に完全自動運転になり、車両のシステムが周囲の監視義務と責任まで負うという、ジュネーブ&ウィーン条約の規定から外れたものになる。一時的と書いたのは、いまの技術では、西日で信号や白線が見えなくなったり、雪で路面が真っ白になったらお手上げで「すいませーん、運転を代わってください!」とSOSを発してくるからだ。
このとき、運転席にいる運転者は「はいよ!」と、即座にSOSに応えないといけない。これってでも、かなり危険だよね。自動運転の目的のメインは交通事故の削減なのに、いきなり「代わって!」と言われてもなあ。逆に事故りそう。
レベル4になると、ずーっと車両のシステムが周囲の監視義務と責任を負う、いわゆる完全自動運転なので、レベル3より安全が保ちやすいと考える技術者もいる。ただ、いまの技術では、道路など走るところを整えた範囲でないと実現はできない。
◆来るべきレベル3時代に対応するための法整備
さて、話をもどすと、警察庁が発表したのは、この「レベル3に於いて」の話。では、どうして販売されてもいないレベル3の道交法が?
それは来るべきレベル3の時代に対応するため。レベル3のクルマが登場してから整備するのでは間に合わないからだ。実際、いま、国会で話し合われているこの案も、実際に施行されるのは2020年の夏くらいになる。
だから今のうちに、レベル3の技術を把握し、どうすれば対応できるかを検討し、昨年末に案をまとめ、一般の人のパブリックコメントを募り、国会に提出したというわけ。
なので、携帯電話を手で持ってかけ放題だの、スマホの画面見つめてラインし放題というのは、法案が成立して施行されてから。そして、レベル3の車両で、システムが安全に走行しているときに限り、ついでに、システムが「代わって!」と警告を発したら、すぐに運転が代われる状態でなら、なのである。
◆クルマの中でスマホ見放題の時代は、まだまだ先の話
でもさ、事故を起こしたときに、人が運転していたのか車両のシステムだったかは、どうやったらわかるの?
もっともな疑問である。それがわかるように、車両には、車両システムの状態がわかる記録装置の搭載が義務付けられ、当然、記録は事故後の保存と提出が必要になる。さらに、携帯電話を手で持って話しているとき、それを見かけた警察官がすぐに判断できるよう、「視覚か聴覚で確認できる措置を(自動車メーカーに)求めることができる」という一言も付け加えられている。
今回の案では、同時に、携帯電話の使用については、罰則が強化される。手で持って使ったり、画面を注視したときは、これまで「5万円以下の罰金」だったのが、「6か月以下の懲役または、10万円以下の罰金」へ。さらに、これらにより交通の危険を生じさせた場合は、「3か月以下の懲役または、5万円以下の罰金」から「1年以下の懲役または、30万円以下の罰金」へと、引き上げられている。
運転中は、携帯電話は手で持って使ったり、画面をじっと見つめてはいけません。そして、クルマの中でスマホ見放題の時代は、まだまだ先の話です。どうぞ、安全運転で。
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。