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【スズキ フロンクス】日本専用開発の乗り心地、こだわりは「後席と直進安定性」そのねらいとは

  • 《写真撮影 山内 潤也》
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スズキが秋に販売を開始するクーペライクSUVの新型車『フロンクス』。インドで先行して販売され人気を博しているモデルだが、日本仕様では乗り心地の面で違いがあるという。一体どのようなねらいで差別化がおこなわれたのか。スズキの開発担当者に話を聞いた。

◆後席の乗り心地と直進安定性の両立
まず、日本仕様のフロンクスが目指した乗り心地や操縦安定性とはどのようなものだったのか。

スズキ 四輪車両技術本部 四輪車両運動性能評価・制御設計部 車両運動性能評価Gの向畑信幸さんは、「後席の乗り心地と直進安定性の両立」と明言。日本専用として、タイヤ、コイルスプリング、ショックアブソーバー、EPSについて試作と評価を繰り返し行い、適合を進めていったという。

「インドは綺麗な路面もだいぶ増えては来ましたが、まだまだ路面が荒れているところが多いんです。一方で日本の道路はスムーズな路面が多いのですが、アスファルトの継ぎ目や橋の段差ではショックを感じることがあります。そこを良くしていこうと開発の当初に決めました」

具体的には、タイヤの違いだ。

「タイヤは日本専用で開発しますので、転がり抵抗の低いものでありながら、操縦安定性、乗り心地、ブレーキ、NVHの各性能をバランスよく達成しないといけません。さらに段差などを超えた時の当たりの丸さはタイヤで十分作り込めるところですので、そこも十分意識しました」

コイルスプリングについては、車重の違いが大きいという。「ベースはインドで1年前に発表したクルマではありますが、重量がちょっと重くなっていますので、コイルスプリングもその分バネ定数を上げないといけません。同時にショックアブソーバーも、それに合わせて適応させ、中高速ではフラットな感じを出すように意識。各々の部品が最大限のパフォーマンスを発揮できるように、日本の事情に合わせて適応させています」と説明する。

◆日本独自の4WD
日本向けはステアリング周りも変更されている。その目的はADASと連動するためだ。ただし、ステアリングギア比などは一緒だという。スズキには同じくインド仕様もあるコンパクトカーに『スイフト』もあるが、考え方に違いはあるのだろうか。どちらも目指しているのは「楽しい走り」だが、どう差別化しているのか。

向畑さんは、「フロンクスの場合は、直進安定性を重視し高速域の手応えを意識してしっかりとした手応えを感じていただけます。これはスイフトも同じですが、ハンドル戻りの方も、自然なキャスターアクションで戻るように開発しました」と語る。

そしてインドには設定のない四駆仕様だ。向畑さんは、「まず(二駆とは)重量差がありますので若干乗り心地に違いがあります。二駆の方がキビキビして車両が軽い感じがあるので、少し個性の違いが出ていると思います」と話す。

スズキ 四輪車両運動設計部 車両運動性能評価グループの増田千寛さんも、「二駆に対して重量が重いというところもありますので、バネ定数も専用セッティングです。ストロークも二駆と四駆では異なるセッティングでそれに合わせて減衰も四駆専用セッティングとしています。イメージ的には二駆はキビキビ、四駆はフロント側の伸びを気持ち強めにセッティングして、コーナリング時でも違和感のないような方向にしました」と説明する。

因みにこの四駆システムはビスカスカップリング式でタイヤの回転差などで4WDが必要と判断した時に、リアにトルク配分するものだ。

増田さんはフロンクスの乗り心地について、「家族みんなで乗ってドライブや遠出をしたときに、バネ上がゆさゆさ、常時激しく動かされてしまうと疲れてしまいます。そういったところがないようになるべくフラットに、かつ低速域のしなやかさを両立できるようにしていきました。誰が乗っても疲れないクルマです」とアピールする。向畑さんも、「ご家族を乗せてロングドライブに行った際に、後席の乗り心地や快適性とともに、運転している方は、直進安定性を体感できるでしょう」と語った。

後席に乗っているとコンパクトながら安心して座っていられる。その理由はクルマが安定しているから。それこそが開発陣が狙っているところで、直指安定性の高さから無駄な修正舵が入らず、結果としてボディの揺れが減っていくのである。これこそが開発陣が狙った挙動だと確信した。