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【ホンダ アコード 新型】デザイナーが語る「美しいセダン像」から見えた新型の個性

  • 《写真撮影 中野英幸》
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  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
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  • 《写真撮影 中野英幸》
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  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
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  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 内田俊一》

ホンダは日本のラインナップではフラッグシップとなる『アコード』を2024年春にフルモデルチェンジすると発表。2023年12月より先行予約受け付けを開始する。それに先立ち一部報道陣にコンセプトやデザインに関しての説明会が行われた。新型アコードのデザインの肝とは。

エクステリアデザインを取りまとめた、本田技術研究所 デザインセンター オートモビルデザイン開発室 プロダクトデザインスタジオ チーフエンジニアデザイナーの石井裕樹氏に話を聞いた。

◆低く、薄く、長くワイドに見えるというセダンの個性
—-:日本ではフラッグシップであり、中国やアメリカ市場ではかなりのボリュームが見込めるアコードのエクステリアデザインの担当が決まったとき、石井さんはどう思われましたか。

石井裕樹氏(以下敬称略):嬉しかったですね。グローバルの機種ですし、また非常に歴史の長いクルマでもあります。いろんな方から期待されていますので、腕の見せどころ。本当に良い仕事の担当をさせてもらいました。わくわくしましたね。

もちろんプレッシャーはものすごかったですが、デザイナーとしてはスタイリングの魅力が求められるクルマですから、やりがいのある機種でした。

—-:しかしセダン市場はグローバルで見てもシュリンク傾向です。その状況を踏まえながら新型のアコードをどのようなデザインに仕上げていこうと考えたのでしょう。

石井:はい、その部分をしっかりと定めないといけないと考えていました。セダンというカテゴリーには競合車がたくさんあります。それと同時に市場の台数は年々減っている状況ももちろんわかっていましたので、考え方をきっちりとしていかないとその他大勢に埋没してしまうと思いました。

先代アコードのスタイリングは、エクステリアも含めて非常に好評で、喜んでくださる方がたくさんいらっしゃいます。その状況を踏まえ次はどうするのかは、とても注目されていると考えて、市場全体をちょっと俯瞰してみたのです。

そうするとSUVは合理的だからという理由でセダンから乗り換えられたお客様が相当数いる一方、意思を持ってセダンを選んでくださっている方も一定数いるんです。ですので、まずはきちんとセダンの魅力を伸ばすことで選んでいただけるようにすることが必須だと思いました。

—-:「セダンの魅力」というと具体的にはどんなものでしょうか。

石井:キーワードになったのは、低く、薄く、長くワイドに見えるというセダンの個性をしっかり伸ばしてあげる。そこがまず基本としてありました。

そして、SUVと違い、ヒップポイントが低いと長距離を移動したときなどに最も快適なんですね。そこをグランドコンセプトである“Driven by My ACCORD 相棒アコードとより高みへ”に紐付けています。目的があってそこに移動している間に、自分が活力で満たされていくという体験をお客様にしていただきたい。それがセダンの役割だと思うのです。そこに特に注力してコンセプトを作っていきました。

◆全身の骨格で表現した“CREATIVE BLACK TIE”
—-:グランドコンセプトを受けてデザインのコンセプトは“CREATIVE BLACK TIE”になったということですが、なぜこういうワードになったのでしょうか。

石井:ここも紆余曲折あったんですが、まずBLACK TIEという言葉自体はドレスコードとして実際に存在します。セダンであるからにはやはりフォーマルでなくてはいけません。このクルマでどこに乗っていっても恥ずかしくない。しかしつまらないものであってはいけない。あまりにもトラディショナルであるがために乗っているこの人は挑戦をしないんだなとか、保守的すぎる人に見られたくないという気持ちがこのアコードを選ぶお客様にはあるだろうと想像しています。

そういう思いもあって、周りの人からこのクルマに乗っているこの人は、保守的なばかりでなく先進的な考え方も持っていたり、よりいい仕事をしてくれるだろうという期待と信頼も感じさせる。そういったクルマにしたいなと思いました。ですので、CREATIVE BLACK TIEとすることでその人のセンスとともに、信頼感やフォーマルの部分もしっかりと表現できる。そういったところを内外装でも表現したいと考えたのです。

—-:エクステリアでそれが一番表現されている部分はどこでしょう。

石井:それは全身の骨格かなと思っています。フォーマルに見せながら、それでいて他のクルマとは違う際立った存在感を持つ美しさを持たせています。そうした理由ですが、日本のお客様が求めるセダンというのは、 “格”を見せたいとか、周りに対して主張したいというところが最も出てくるのですが、そういったところは日本国内の他の車種でも実現できるものです。

それに対して、ホンダが提供するセダンにどういった価値を感じてもらえるのかを考えると、そことはちょっと違うところで戦いたい。そういう意味ではやはり運転して楽しい、操る喜びをずっとやってきたクルマでもありますから、低く構えてとてもスリークで美しい流線型のフォルムを持たせることで、通常のスリーボックスではなく、例えばファストバックにインスピレーションされたような他のセダンとは違うシルエットを表現したかった。なので、骨格を見せるところを主眼に置いているのです。そのうえでノイズになるような要素は極力排除するように徹底的にやりました。

—-:ただ、そのあたりは先代から共通するような印象もありますね。

石井:そうですね。先代のアコードはトラディショナルなセダンとしてのスタイリングを極めたかなと思っています。それを超えるのは非常に難しいと思っていました。しかし、インテリアでは様々なアイテムが先進性をキーに進化していくことが求められる時代になってきています。それをエクステリアでも表現していくとすると、先代の面の抑揚は非常に魅力的ではありますが、これから先はもっともっとノイズレスにしていく時代になっていくだろうという予感があったんです。

ただし、それをやりながらも、主張やインパクトが欠けてはいけない、両立しなくてはいけないので思い切って塊をひとつのアールで作るような断面にしていきました。先代はサイドにある強いキャラクターラインの下にある面は大きく削いで、そこから豊かなフェンダーが出て来るような面構成を持たせていました。新型ではもうちょっと基本に忠実に、フロントからリアまでバレルシェイプで作っていくことを徹底してやろうと決めたのです。

◆「美しいセダン」を作るために何ができるか
—-:「バレルシェイプ」とはどういうものですか。

石井:俯瞰してみた時に樽のように見える形ですね。極論するとこれだけで勝負するというものです。

—-:先代はフロントが張っていてドア周りで削って、またリアフェンダーで出すイメージでした。

石井:それを前から後ろまでスムーズに繋がって見えるようなイメージにしたのです。ですからフェンダー単体でビュッと出ているようなところは極力なくして、上から見ても樽状のシェイプでできているし、断面を切った時(クルマを正面から見て輪切りにした状態)もきれいに樽状になって抑揚が感じられる。そして、前後の絞り込んだところからタイヤがしっかりと張り出している表現にかなりこだわってやりました。

同時にリフレクションがフロントフェンダーからリアまで綺麗にスバーッと流れるよう見せるというこだわりもあります。それから、クルマ全体のシェイプ自体もものすごく薄く見せる努力をしています。ことさらにフェンダー周りだけを強調しなくてもしっかりと低重心感が与えられるようにというところは考えています。

—-:近年は、キャラクターラインを極力排除して面で勝負するような傾向にあります。それを強く意識しすぎると、ぬめっとした抑揚のない面が出来上がり、つかみどころのない印象を持たれてしまいがちですが、アコードではあまりそういう印象はないですね。

石井:やはりホンダというのは、スポーティーさ、軽快さが大事ですから、このアコードの顔が精悍であるというところもそうですし、キャラクターラインもスパッと通すような線を意図的に作って、そういったところでクルマ全体をシャープに見せるようにものすごく意識した結果だと思います。

—-:最後に、ユーザーに向けて「新型アコードのここを見てほしい」というポイントを教えてください。

石井:このクルマは、走っているときに美しく見せるということにとってもこだわっています。走り去っていくときの光の移ろいや、交通の流れの中に溶け込む際に美しく見えるというところにものすごくこだわって作っていますので、ぜひそういうところまで見ていただけると嬉しいですね。

特にボディに映るリフレクションがヒューッと変化してくるところなどをどう見せるかなど、美しいクルマを作りたいと思いからそのために何すればいいかを考え尽くしました。そういった先代からの違いにも気づいていただけるとうれしいなと思います。