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マツダ CX-5 が商品改良…強みを活かしてスポーツ系を拡充、個性明快なグレード体系
マツダは『CX-5』を商品改良し、9月4日から予約受付を開始した。「Exclusive Mode」、「Sports Appearance」、「Field Journey」のデザインを部分変更すると共に、特別仕様車「Retro Sports Edition」の新設定や「L Package」の廃止などグレード体系の再編も行っている。
◆スポーティ系の比重を高めた新グレード体系
昨年はラージ系商品群第1弾の『CX-60』が登場し、『CX-8』の大幅商品改良も行われたが、『CX-5』の販売がその影響を受けることはなく前年と同じ台数を維持。なかでも「Sports Appearance」や「Black Tone Edition」というスポーティ系のグレードが、『CX-5』全体の半数以上を占めるほど好評を得た。また、これらは他のグレードに比べて他社製品からの乗り換えが多く、マツダの顧客ベースの拡大にも貢献しているという。
そこで「Sports Appearance」と「Black Tone Edition」の中間に新たな特別仕様車の「Retro Sports Edition」を設定し、スポーティ志向の需要により手厚く対応したのが今回のグレード体系の大きな特徴だ。
その一方、「Proactive」を廃止してお買い得グレードを「Smart Edition」に一本化。プレミアム系グレードも「L Package」を廃止して、よりラグジャリーな「Exclusive Mode」だけに絞った。
もともと「Black Tone Edition」は「Proactive」をベースに、外装は黒いパーツで引き締め、内装はブラック基調に赤いステッチでスポーティさを強化したグレード。続いて2021年11月に登場した「Sports Appearance」は、より充実装備の「L Package」をベースとし、基本的には同様のデザイン変更でスポーティ表現を極めた。これらが好調に売れた結果、それぞれのベースになったグレードの存在感が薄まったことは否めない。
とくに「L Package」の販売は昨22年、CX-5全体の5%以下にまで低迷した。そこでこれを廃止。上質かつスポーティなグレードを求める人には引き続き「Sports Appearance」で応えつつ、プレミアム志向の需要には上質を極めた「Exclusive Edition」で対応することになったわけだ。これまでピュアホワイト内装はL Packageだけに設定されていたので、新型『CX-5』でそれを選べなくなるのは残念だが、これも需要が少なかった結果である。
同じく21年11月に追加されたアウトドア志向の「Field Journey」は、こちらも販売シェアは5%程度だったが存続する。国内商品マーケティング部の下村周平氏によれば、「Field Journeyは4WDだけなので、数字が伸びないのは想定内だった」とのこと。そしてこう続けた。「初代CX-5のお客様に選ばれており、(スポーティ系よりも)年齢層の高い40~50代のお客様が多い」。
初代CX-5はマツダ・ファン待望のSUVだった。本格SUVとしてそれを買った人たちにとって、スポーティなグレードより「Field Journey」がフィットするということだろう。そんな需要に応えるべく、主にインテリアのデザインをブラッシュアップしたのが新しい「Field Journey」だ。
◆縦基調ブロックメッシュのラグジャリー感
「Exclusive Mode」と「Sports Appearance」のフロントグリルは、太くて短い縦線を無数に並べた縦基調ブロックメッシュのパターン。従来型のブロックメッシュという基本を踏襲しつつ、横基調から縦基調に変えた。
一般論としてグリルパターンを縦基調にすると天地方向に分厚く見え、ラグジャリー感が増す。しかも上位機種『CX-8』の最上級「Exclusive Mode」も縦基調ブロックメッシュ。それと同じパターンにすることで、ラグジャリー感をわかりやすく訴求しようという作戦だ。
「Exclusive Mode」のグリル色はガンメタ塗装からピアノブラック塗装に変更し、スポーティさを強化。従来の「Sports Appearance」はポリカーボの材着で艶のあるブラックを表現していたが、新型は「Exclusive Mode」と同じピアノブラック塗装を採用し、同時に従来型にあった赤いアクセントを廃止した。
つまり「Exclusive Mode」と「Sports Appearance」のグリル本体が共用になったわけだが、シングネチャーウイングが違う。「Exclusive Mode」はラグジャリー感が漂うクロームメッキ、「Sports Appearance」は精悍な漆黒メッキ。この差異化は従来と同じだ。
「Exclusive Mode」のフロントバンパーがエアダム部分までボディ色なのも従来と同じだが、下端のセンターガーニッシュをブラックからシルバーに変更。ホイールの色もブラックからダークガンメタの塗装に変えた。黒い部分を減らして「Sports Appearance」との差異化を図りつつ、ラグジャリー感をもう一押しする細部の工夫である。
プレミアム志向の需要を一手に引き受ける「Exclusive Edition」は、内装デザインもアップデートした。従来型でセールスポイントだったインパネの本杢加飾をやめて、ハニカム柄を施したシルバー加飾を採用。シート表皮はディープレッド色のナッパレザーを踏襲しつつ、ステッチをダークレッドからライトグレーに改めてシート形状を引き締めた。ピアノブラックのグリルと同様、ラグジャリーななかにもスポーティさを醸し出す内装になっている。
◆Field Journeyからライムグリーンが消えたワケ
従来の「Field Journey」には、フロントグリルにライムグリーンのアクセントがあり、内装でもシートのステッチやパイピング、ベントグリルに同じライムグリーンを配していた。アウトドア感を色でわかりやすく表現するためのライムグリーンだったが、新型はそれを廃止した。
「本格的にアウトドアを楽しむ人は、気兼ねなく使えることに価値を求める」と松田陽一チーフデザイナー。前述したように「Field Journey」は初代CX-5からの乗り換えが多く、その人たちも「遊び心よりも実際に使いやすいカラーコーディネートを志向している、という市場からのフィードバックがあった」という。
そこでインテリアはブラック基調のモノトーン・コーディネートで機能感を訴求。ステッチやパイピングはライトグレーに変更し、ベントグリルには質感の高いサテンクロームを採用した。従来型のシート表皮はメイン材がスエード調人工皮革のグランリュクス、サイド材が合成皮革だったが、新型はメイン材も合成皮革に変えた。汚れても拭き取りやすいからだ。
なお、新設定の「Retro Sports Edition」については別記事でレポートしているので、具体的な内容はそちらを参照いただきたい。価格的には「Sports Appearance」と「Black Tone Edition」の中間だが、デザインテイストは中間ではない。
「Sports Appearance」と「Black Tone Edition」が魂動デザインの王道を行くスポーティ表現だとしたら、「Retro Sports Edition」はそこから少しハズしたスポーティさを表現するもの。好評のスポーティ系グレードの幅を広げ、新たな需要を喚起するのが「Retro Sports Edition」の役割である。