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「Bセグにこれ以上必要?」ヴェゼルサイズの電動SUV、ヒョンデ『コナ・エレクトリック』の“リビングスペース”インテリアとは
この秋に日本導入されるヒョンデの『コナ・エレクトリック』は、ホンダ『ヴェゼル』にほぼ近いサイズの電動SUVだ。今回はインテリアのデザインと装備を、現地取材からチェックしていきたい。結論から言うと、「欲しいものはすべて揃っている」と言って過言でないクルマだった。
◆インテリアはリビングスペース
インテリアは『アイオニック5』と同様に、「リビングスペース」をテーマにデザインされた。多様なライフスタイルに応える使い勝手と乗車体験を提供することが、このテーマの主旨だ。
ドライバー席の前に12.3インチのディスプレイが2つ並ぶのも、アイオニック5と同じ。助手席側の薄型アッパーパッドとその下のトレイが空間の広がりを演出することも含めて、まさに「アイオニック5の弟」と言えそうなインパネのデザインである。
日本導入される新型コナはBEVのコナ・エレクトリックだけだが、日本以外のマーケットにはICE(ガソリン)やHEV(ハイブリッド)もある。しかし新型はプラットフォーム開発の段階から、「電動パワートレイン・ファースト」を標榜。コナ・エレクトリックが新型コナのイメージリーダーであることを明確にするために、ICEやHEVも含めてアイオニック5の面影を色濃く残すインテリアデザインを採用したというわけだ。
◆ドライバーオリエンテッド感も表現
もちろんコナ独自の特徴も多々ある。なかでも大事なのは、センターディスプレイがドライバー側に向けて少し角度を付けてレイアウトされていることだ。これがドライバーオリエンテッドなコクピット感を、控えめながら醸し出す。コナのエクステリアはスポーティでダイナミック。インテリアも「リビングスペース」のテーマの範囲内でスポーティさを表現したということだろう。
コラムシフトの電子式ギアセレクターを採用したのは、センターコンソールの収納スペースを広げるため。エレクトリックだけでなく、ICE/HEVも同じというのはちょっと驚きだ。それゆえICEでもMT車はない。
室内空間はもちろんアイオニック5より狭いが、リヤのバックレストをあえてラウンドさせずにフラットにすることで、後席にも「リビングスペース」に相応しい広さ感を演出する。先代の後席居住性について市場から不満が出ていたので、ホイールベースを60mm延ばして実寸法を改善すると共に、視覚的な広さ感にも工夫したというわけだ。
アイオニック5で「リビングスペース」のコンセプトを強調するアイテムになっているのが、フロント席のリラクゼーションコンフォートシート。新型コナでは仕向地により設定が異なるようだが、少なくとの韓国のコナ・エレクトリックの上級グレードには装備されている。日本向けでも選べることを期待したい。
◆わかりやすいナビ画面はARも採用
韓国のコナ・エレクトリックには2つのグレードがある。上級の「インスピレーション」は、64.8kWhのバッテリーと150kWモーターを組み合わせたロングレンジ仕様。ベースの「プレミアム」ではそれに加えて、48.6kWhバッテリー/99kWモーターのスタンダードレンジ仕様も選べる。現地試乗したのは「インスピレーション」だ。
試乗車はヘッドアップディスプレイ=HUDを備えていた。「インスピレーション」の標準装備かどうかは未確認だが、いずれせよBセグメントでHUDを選べるクルマはまだ少ない。運転中の視線移動を最小化してくれるHUDは安全運転に寄与するものだけに、日本向けコナ・エレクトリックにはぜひこれを採用してほしいものだ。
ナビ画面も気が利いている。韓国では高速のジャンクションやインター出口が行き先に応じて2車線ある場合、路面がピンクやグリーンに塗り分けられている。こうした色分けは日本にもあるが、ナビ画面の交差点拡大図にも同じ色が表示されるのに驚いた。ルート設定していれば、どの色に従って走ればよいかを矢印と音声で教えてくれる。
さらに、分岐や交差点が近づくとナビ画面が実写映像に切り替わり、そこに進むべき方向の矢印が表示される。いわゆるAR=拡張現実だ。アイオニック5ではHUDにARの矢印が出るが、コナではそれをセンターディスプレイで行う。
これらの機能のおかげで不慣れな韓国での試乗を、ミスコースの不安なく楽しむことができた。一人で試乗していたため、ナビ画面を撮影できなかったのは残念だが…。
ちなみにヒョンデが「スマートセンス」と総称するADASでは、アイオニック5と同様に、カーブではナビ連動で速度を調節してくれるし、状況が許せばターンシグナルをオンにすると自動で車線変更する。HUDやAR矢印なども含めて、Bセグメント車に「これ以上、何か必要?」と思うほどクラスレスの充実装備だ。それらをすべて日本向けコナ・エレクトリックが備えてきたら、日本のBセグメント市場の常識を覆す「事件」になるかもしれない。
◆「e-ASD」のサウンドを楽しんでも電費は優秀
試乗車は150kWモーターを積むとあって、高速道路の合流で欲しい一瞬の加速にもしっかり応えてくれた。驚くほど速いわけではないが、市街地から高速道路まで、「Bセグメントとしては」という前提条件を超えた俊敏さを披露する。
そんな加速感を聴覚で補足するのが、「e-ASD」という機能だ。ASD=アクティブ・サウンド・デザイン。走行速度や加速度、モーターの発生トルクなどをベースに人工的に生成された音をスピーカーから流し、クルマとの一体感を高めようというものである。
「e-ASD」をオンにすると、市街地速度ではなるほどアクセル操作に応じて、ヒューンというSF映画の効果音のような音が聞こえてくる。一方、高速道路ではそれが控えめなのは、静粛性を優先しているからだろう。
片道50km余りの試乗コースを往復して、行きの電費が5.7km/kWh、帰りが6.7km/kWh。運営スタッフが乗る先導車の後ろについて数台でコンボイしたのだが、往路は先導車から遅れまいとアクセルのオンオフが多すぎた。帰路は「e-ASD」のサウンドを聴きながらだったとはいえ、もう少しスムーズに運転できたので、おそらくこちらが実力値に近いはずだ。コースの大半が高速道路で、けっしてノンビリ巡航したわけではないことを思うと、6.7km/kWhは優秀な数字だと思う。