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ダイハツがなぜ小型商用バンBEV発表? 『VIZION-F』開発者に理由を聞いた
ダイハツ工業のインドネシア現地法人「アストラ・ダイハツ・モーター(ADM)」は8月10日、ジャカルタで開催された「第30回 GAIKINDOインドネシア国際オートショー」(GIIAS2023)において、小型商用バンBEVのコンセプトカー『VIZION-F(ビジョン エフ)』を出展して注目を浴びた。
◆『グランマックス バン』をベースに製作
このコンセプトカーは、すでに市場で展開されている小型商用車『グランマックス バン』をベースに、ADMのR&Dが企画・製作した。バッテリーは中央部に配置し、駆動用モーターは駆動部に近いリアに設置。基本的なスタイルはグランマックス バンのコンバージョンEVに近い。
バッテリー容量は28kWh、モーター出力は35kW。開発の陣頭指揮を執ったADMのリサーチ&デベロップメントディレクターの三嶋英二氏によれば、航続距離はラストワンマイルでの活用を想定し、参考値で200km、実用150kmを目指しているという。
後部ドアはタッチセンサーで作動する電動スライド式で、後部はすべてカーゴスペースとなっており、定員は2名。デザインを担当したADMの上畑顕雄氏は、フロントのバンパー部はLED表示を組み込むためにもアクリル性としたが、「プラットフォームを含むボディ構造はグランマックス バンをそのまま活用し、デザイン上で出っ張りとなる部分を削ぎ落とすなどしてコンセプトカーとしてのイメージを作り上げた」という。
商用車とはいえ、ダッシュボードにはインフォテイメントシステムとして、様々な情報を表示できる大型ディスプレイを装備。カーナビゲーション以外に、商用で使うことを想定した機能を盛り込んでいるという。また、運転席前のメーター内の液晶ディスプレイには走行情報のほか、ウインカーを出すとその方向の状況を映し出して死角を減らす機能も盛り込んだ。シフト操作はタッチパネルによるもので、上畑氏の話では、低速ではあるがテストコース上を実際に走行して検証も行っているという。
◆BEV普及「商用車の方が乗用車よりも一定の需要があるのでは」
ダイハツ工業はトヨタグループの一員として、トヨタが掲げる、BEV一辺倒ではなく世界の顧客に多様な選択肢を提供する全方位の「マルチパスウェイ」戦略を堅持する方針を決めている。現在、ダイハツ工業ではハイブリッド技術として、『ロッキー』で実用化したシリーズ型ハイブリッド「e-SMART HYBRID」があり、トヨタの「THS」もある。このハイブリッド技術も含め、地域ごとに最適なパワーソースを提供していく考えだ。
そうした中で、インドネシアにおける商用BEVの可能性について三嶋氏は、「普及を考えるとBEVは商用車の方が乗用車よりも一定の需要があるのではないかと思っている」との考え方を示す一方で、「正直に言えば、我々はBEVに関しては経験が浅い。BEVで勢いを増す中韓勢に置いていかれないようキャッチアップしていく」と述べた。
実は昨年のGIIASでもADM独自で開発した『アエラ』ベースのBEVコンセプトを発表しているが、上畑氏によればアエラEVも出展後「発売するのか?」との多くの問い合わせが多数あったそうで、今回のVIZION-Fについても出展後の反応に期待を寄せている様子だった。