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カタログ燃費超えは朝飯前!? ルノー アルカナ&ルーテシア「E-TECHエンジニアード」輸入車燃費No.1の実力とは

  • 《写真撮影 南陽一浩》
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7月の暑い日、川崎でルノー『アルカナ』と『ルーテシア』、双方の「E-TECHエンジニアード」仕様の初となる試乗会が行われた。これまではルノー・スポールの名残りで、「R.S.ライン」がスポーティ・グレードを受け持っていたのだが、アルカナは4月から、そしてルーテシアは6月末から、「E-TECHエンジニアード」という新しい仕着せをまとうことになり、いずれも太陽光の下で相まみえたのは初めての機会となった。

◆ゴールドのあしらいにもルノーのセンスが光る
その外観上の特徴は、公式には「ウォームチタニウムカラー」と呼ばれているものの、フロントグリルガーニッシュとサイドのスキッドプレート、そしてリアのスポイラーやツインエキゾーストフィニッシャーが、意匠ごと新しいのに加え、ゴールドのアクセントを採り入れたこと。

ゴールドと聞くと、さぞかし派手めでキツそうな仕上がりを想像するだろうが、そこはさすがフランス的なゴールドだった。夏の強い陽射しの下で目の前にしても、金属的なのにペールトーンを帯びたニュアンスで、エレガントな落ち着きすらあって、温かみあるモノトーンのボディカラーと難なく合う。先進的かつ地味派手スポーティな、ニュー・ルックという訳だ。

この辺りは、尾張や三河辺りの鯱(しゃちほこ)ライクな金色とかビタミン過剰なオレンジ、あるいは相模や上州辺りの赤やピンクといった、アクセント=ネオンカラーになってしまっている国産のスポーツモデルやSUVと、大きな隔たりがある。「明るく楽しく」の土壌やセンス云々はともかく、デザインとしてカラー&マテリアル領域でのアウトプットに、明らかに差がついているのだ。

よくデザインは「好き嫌いの問題」で片づけられがちだが、メルセデスでいう「アヴァンギャルド/エレガンス」、BMWでいう「Mスポーツ/ラグジュアリー」のような、「スポーティ/クラシック」の二元論的トリム設定ではなく、スポーティ・エレガンスでハイテク感すら漂う新しいプレミアム様式として「E-TECHエンジニアード」を提案できる点に、ルノーのデザイン力を認めない訳にはいかない。

一方でアルカナには特別仕様車として、F1ブレード風でないグリル意匠かつクロームメッキ仕様の「アントラクト」が、ルーテシアにはE-TECHでもインテンスとほぼ見た目同じ仕様の、よりコンサバ仕立ても用意されているが、価格帯も少し安い分、E-TECHエンジニアードと同列トリムではない。

◆ヤマハのパフォーマンスダンパーをベースにCOXが仕上げた
いずれにせよ輸入車のBセグ・ハッチバックやCセグSUVのセグメントで、両者とも随一の省燃費性を誇るとなれば、ハイブリッドの好まれる日本で放っておかれるはずもない。アルカナE-TECHエンジニアードはWLTCの市街地・郊外・高速道路のミックスモードで22.8km/リットル、ルーテシアE-TECHエンジニアードは同25.2km/リットルを、カタログ値として謳っている。もっとも条件のいい郊外モードだけならさらに伸びていくことは、後述するプチ・エコラン・チャレンジでもはっきり証明された。

E-TECHパワートレイン自体は、従来と特段の変化はないが、今回の試乗でアルカナにはディーラーオプションとして、「COX(コックス)ボディダンパー」という魅力的な装備が加わった。輸入車のチューニングで知られるCOXが、ヤマハ製パフォーマンス・ダンパーをベースに、アルカナ専用に取り付け位置や減衰力をチューニングして備え付けたものだ。具体的にはリアバンパーの裏側、パワートレインや動力バッテリーといったボディ剛性の「横桁」になりそうなものから、もっとも遠い位置に取り付けられている。

ボディは剛性が高くてもバネ要素の塊のようなもので、走行中はつねに振動や変形を繰り返し、そのエネルギーは熱エネルギーとなって発散される。すでに国産車でも装着例が多く定評あるヤマハ製ボディダンパーだが、ボディ剛性を補強するより、微振動や歪みによる振れを、穏やかに抑え込むことが目的だ。

果たして、アルカナの装着ケースではCOXボディダンパーの効果やいかに?というところだが、とくに後車軸周りからの微細なツンツンとかパンパンといった振動がすっかり丸め込まれ、静粛性や上下動の抑えがワンランク上がった。明らかに非装着のアルカナより乗り心地がまろやかになって、直進安定性も操舵時のリアの追従性も改善され、ステアリングフィールそのものに上質感が増したのだ。

羽田空港周辺の道路が平滑過ぎるのではないかと、轍だらけの工業用地の道路でも試してみたが、しっとり感1.5割増しという結論と感覚を裏づけるばかりだった。今のところ日本専用のディーラーオプションなので、大げさにいえば世界に先駆けて日本のアルカナが大人仕様になった、なんて言うこともできる。

◆「小さな高級車の復活」をふたたび…
それにつけても、この乗り心地とハンドリングの楽しさに加え、E-TECHというハイブリッドのダイレクトさ、欲しい瞬間にトルクがクッと小気味よく立ち上がってはスムーズに加速が伸びていくパワー感を知ると、もはやアルカナは、ひとクラス上のSUVクーペを喰えそうな存在ですらある。競合互換するというより、代替できるという意味だ。

でも人間は欲張りなもので、出たばかりのE-TECHエンジニアードに乗っているにも関わらず、DセグSUVクーペに伍するには内装や静的質感の面で、もっとリュクスな「イニシアル・パリ」仕様もあって然るべきか?とも考えてしまう。かつての『25』や『21』、『5』や初代ルーテシアの「バカラ」から続くルノーの最上級トリムは、2000年前後から「イニシアル・パリ」として継承されてきた。日本未導入の『エスパス』などに設定され続け、じつはフランス本国では久しぶりにルーテシア(正確にはクリオ)現行世代のデビュー時は、設定されていた。

過去形なのは、「小さな高級車の復活」と一時は話題になったものの、販売不振によって数年前からクリオ・イニシアル・パリはカタログ落ちしてしまったからだ。だからこそアルカナでいっそ、イニシアル・パリ復活の目はないものか? メルセデスにも早晩、新しい『Eクラス』で「エクスクルーシブ」トリムが登場しそうなだけに、イニシアル・パリにも復活の期待をかけたくなる。

◆年代物のエンジンから、かくも美味しさを引き出せるとは
そんな、ぼやきにも似た妄想を抱えたまま、ルーテシアE-TECHエンジニアードに乗り換えた。外観上の特徴はアルカナE-TECHエンジニアード同様、ゴールドの挿し色が醸し出すシックさだ。ストライプのシート地といい、以前の限定車「ラ・パリジェンヌ」を彷彿させるところだが、フランスの服飾コードでテニス・ストライプは今でも、クラシック気味とはいえスポーツ相当なので、これまたウォームチタニウム色のステッチと併せて、いいセンを突いていると思う。

フルハイブリッドながら1310kgの軽さとあって、さすがにルーテシアでE-TECHパワートレインのラグのなさが、キビキビ感や軽快さとなって走りに表れてくる。45km/h前後まで電気モーターで走り、その上の領域は1.6リットルのICEが目覚め、アクチュエーターで繋がれるドグクラッチのスムーズさに注意を凝らしていると、その滑らかさと力強さに感心させられる。はっきりいって1.6リットルのガソリンエンジン自体は、ルーテシア2の頃から使っている年代物なので相当に古い。そこからかくも美味しい領域を、効率的で力強く滑らかに引き出しているのだ。

忘れもしない、2019年のフランクフルトIAAでキャプチャーに積まれて発表され、初めて目にしたE-TECHトランスミッションは、恐ろしくコンパクトだった。個人的にE-TECHとはフルハイブリッド化でもあるが、トランスミッション駆動の新方式だと思う。電気側が2速で、機械的ギアは4速、ただし組み合わせ次第でギア比は実質12速にも及ぶという。それを賢く素早く制御することで、電気でもICEでも動力源にかかわらず駆動力を高効率かつスムーズに伝えるのだ。

◆パーシャル走行で28.0km/リットル、余裕のカタログ燃費超え
アルカナのしっとりと収まりのいい足まわりと小気味よいドライバビリティ、ルーテシアの軽快でパンチの効いたフットワークの間で、E-TECH同士を比べると、甲乙つけがたく悩んだ末に、個人的にはルーテシアの軽さを選ぶと思う。

とはいえ、この暫定的結論を覆しそうな出来事が、直後に起きた。今回の試乗会に来た各媒体・各ジャーナリストは、アルカナE-TECHでプチ・エコラン・チャレンジにも参加したのだが、以前の長距離エコランの優勝者がルーテシアE-TECHで33km/リットル強を記録したと聞いていたので、アルカナで10%落ちぐらいの数値、29km/リットル台を目標に筆者は走ってみた。

川崎を出発してアクアラインから上総辺りのとある公園で折り返して、再びアクアラインで戻る往復ルートだった。夕方前なので往路ではペースメーカーになる大型車も見当たらず、普通のペースで走ったのだが、復路は浮島で高速道路を下りて、あとは下道を電気モーターだけでゴールしよう…と、姑息な判断をしたのが裏目に出た。帰宅渋滞が始まっていて結局、コンマ数km/リットルを失い、最終的な記録は28.0km/リットルだった。

順位だけ見れば27チーム中19位という大したことなさながら、驚いたのは、ややゆったり目ペースでパーシャルアクセル長めに走っただけで、アルカナE-TECHがカタログ値を優に超える燃費を記録したことだった。乗り手次第、走らせ方次第でさらにエフィシェントになるからこそ、長い時間かけてつき合える一台になるのではないか? そう思い知らされたのだ。

■5つ星評価

アルカナ E-TECHエンジニアード
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

ルーテシア E-TECHエンジニアード
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。