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ロールスロイス初のEV『スペクター』、250万kmの走行テスト完了…納車は年内から
ロールスロイス(ロールス・ロイス・モーター・カーズ)は6月9日、ブランド初のEVで大型2ドアクーペ『スペクター』(Rolls-Royce Spectre)のグローバル・テスト・プログラムを終了した、と発表した。
◆充電時間や航続など数多くの要素を繰り返し改良
グローバル・テスト・プログラムでは、250万kmを走行した。マイナス40度からプラス50度まで、極限の温度環境でテストを実施。車両開発期間は、合計で5万時間を超えたという。
250万kmのテストプログラムは、400年以上の使用を想定したものだ。120年にわたるロールスロイスの歴史の中で、最も厳しい要求が課された開発プロセスになるという。スペクターは-、北極圏の氷雪から砂漠、高地の山道、世界各地の巨大都市に至るまで、さまざまな条件を走破してきた。
その過程で、ロールスロイスのエンジニアは、スペクターに備えられた14万1200に及ぶデジタル送信・受信の関係や2万5000の性能関連機能を、細かく監視、分析、調整した。高度な技術を要するプロセスは、合計5万時間に相当した。その結果、スペクターの音響性能、コーナリング時の安定性、ステアリングの正確性から充電時間、航続、最大トルクまで、数多くの要素が繰り返し改良された。
◆ロールスロイス独自の「ライフスタイル分析」
スペクターの開発では、独自の「ライフスタイル分析」プロセスも行われた。これは、ロールスロイスの本拠地のグッドウッドで製造するすべての新製品の開発に導入されている。この追加テストプログラムは、標準的な自動車評価の域を超えるもので、顧客の日常生活で自動車が使われる状況を網羅しているという。
ライフスタイル分析を通じて、エンジニアはロールスロイスの新モデルに対する特別なニーズの予測が可能になる。また、技術やスタイルの最終テストに適切な機能やレスポンスが含まれていることを確認できるという。
ロールスロイスによると、顧客の好み、習慣、要望に関して独自の評価プロセスを経ることにより、スペクターを真のラグジュアリー体験とエンジニアリングを備えた車両にすることができるという
◆世界有数の高級住宅地とその周辺道路を実際に走行
エンジニアは、ロールスロイスの顧客に生じうる詳細な可変要素を幅広く検討した。例えば、 海南島(中国)、ドバイ(アラブ首長国連邦)、ナパバレー(米国カリフォルニア州)、そして英国のロンドンなど、世界有数の高級住宅地とその周辺にある道路での走行時に、スペクターのドライブトレインがどのように性能を発揮するかについて、調査を実施した。
このテストは、高速走行時の速度域にとどまらない。市街地でのテストでは、スペースが限られた地域の道路や建物の入り口へアクセスするために、全輪駆動などの機能が充分に作動するかを確認した。実際に、ロンドン市内のメイフェア、ケンジントン、チェルシー地区やその周辺で実施したテストでは、住宅街などに向かう時、リアアクスルが適切に操舵されたことを確認した。
同様に、今後スペクターが走行する世界中の環境を鑑みて、顧客が心配する問題を解決するべく、数多くの静的テストが実施された。これには、待機中のヘリコプターの横に停止した車内で通常の通話が可能か、特定の超高層ビルの谷間を走行する場合の車内インターネット接続の強さ、またフォーマルなイブニングスーツやガウンを保護するために使うガーメントバッグなどを車内に置いた場合の乗降性などが含まれている。
◆無理なく同じ速度で電動ドアを開閉できるよう調整
技術的なロードテストでは、ライフスタイル分析テストを段階的に導入し、車の仕様や性能で調整が必要な場所を明確にした。例えば、カリフォルニア州ロサンゼルスの急なドライブウェイを再現した急勾配の坂道でパワー・アシスト・ドアのテストを行った後、エンジニアはジャイロセンサーと重力センサーを追加し、駐車時の角度が縦向きでも横向きでも、無理なく同じ速度でドアを開閉できるよう調整した。
また、スペクターのステアリングの精度をテストするために、ある曲がり角が頻繁に使われた。そのため、エンジニアたちはウエスト・サセックス州グッドウッドのロールスロイス本拠地近くにあるスイッチバックを、「スペクター・コーナー」と命名した。
スペクターの最終スペックは確定していないが、EVパワートレインのモーターは、最大出力585hp、最大トルク91.8kgmを引き出す。パワフルなモーターは、0~100km/h加速4.5秒の性能を可能にする。また、1回の充電での航続は、最大で520kmに到達する見通しだ。納車開始は、2023年第4四半期(10~12月)を予定している。