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市場の声を重要視し商品改良、アイオニック6も導入検討へ…プロダクト担当インタビュー
ヒョンデモビリティジャパンは日本再参入1年を振り返るとともに、『アイオニック5』のアップデートなどを発表するヒョンデブランドデイを開催。そこでアイオニック5のアップデート内容や、展示されていた『アイオニック6』についても話を聞いた。
◆要望を確実に具現化
—:この1年間を振り返ってアイオニック5のお客様の評価はいかがでしたか。
ヒョンデモビリティジャパンシニアプロダクトスペシャリストの佐藤健さん(以下敬称略):今回のアップデートでヴォヤージュという中間グレードにAWDを追加しました。これは北国からの声が多かっことから設定したのです。いままでAWDは一番上のグレードにしか設定はなくて、それは20インチのタイヤを履いていますのでスタッドレスだと価格が高い。そこでもうちょっと手頃なAWDが欲しいというご要望にお応えるものです。
また、アイオニック5はアーリーアダプターのお客様が多いのですが、アーリーアダプターで電気自動車を買われる方の傾向として、例えばスポーツカーを買われる方が280km/hを求めるのと同じような価値観で、100kWh以上の充電をしたいということもわかりました。そこにも応えるべく、今回ブーストチャージというプログラムを搭載し、8分間だけですが、100kWhを超える充電ができるようにしています。
さらに今回発表したアシュアランスプログラムでは定期点検や車検までヒョンデが費用を持つという仕組みを作っています。これはアフターサービスが不安だという声が多かったからなのです。特に、ディーラーがないから不安だという声がすごく多かった。実際の整備拠点は44拠点ありますし、もしも動かなくなった時は24時間ロードサービスが対応していますので、それほどご不便をかけることはないのですが、それでもやはり不安だとおっしゃるのです。そこを何とかしたいということで今回、点検と車検までヒョンデとしてきちんとケアするようにしました。
そこですごく議論なったのは既にご納車したお客様たちをどうするかです。最初はそもそもそこまではやらない方向で話が進みそうになりました。しかし、最初に買っていただいたお客様は本当に大切な方々ですので、きちんと満足していただかなければいけません。そこで、すでにご購入いただいた方も車検まできちんと面倒を見られるように、英断を下したのです。
◆もっと早く充電したい
—:今回のアップデートでプリコンディショニング機能と、ブーストチャージングの機能が追加されました。これらはハードウェアの変更はなしで、ソフトウェアだけで対応できているものなのでしょうか。またその内容をもう少し詳しく教えてください。
佐藤:ブーストチャージングモードとバッテリープリコンディショニングシステムは2つともプログラムの変更で、ハードウェアの変更はしていません。これは新しいモデルに対しては検証済みですが、既に販売したクルマに対して適応できるかどうかは検証中ですので、その点に関しては今後の課題です。
アイオニック5は200Aを充電器側に要求をしており、電圧はCHAdeMOでは450Vまで大丈夫です。しかし市中にある充電器を検証すると、電圧も結構ばらつきがありました。そこで405Vあればほぼどのような充電器でも安定して供給できることが分かりましたので、405Vで200Aを充電器側に要求するようなプログラムになっています。即ち81kwhです。これで比較的安定して30分間81kwhで充電できるようなプログラムになっています。
そして、今回のブーストチャージングモードですけれども、特にハードウェアの変更なしに、250Aまでを8分間要求するプログラムにしています。従いまして、8分間は405Vの250A、即ち101,25kwhでの充電ができるシステムになっています。ただし、101kwhの電気が出る充電器がまだまだ日本では多くないので、多くのお客様にそのメリットが享受できるかはわかりません。ただし、いまお乗りのお客様に聞きますと、せっかく800Vの電源システムを持っているのだから、もっと早く充電できないのかという声をたくさんいただいていますので、その声に応えるべく、今回ブーストチャージングモードで8分間250Aで充電できるモードを採用しました。
バッテリープリコンディショニングシステムは、ナビで急速充電施設を目的地に設定すると、あらかじめバッテリー温度を高め、より効率的に充電しやすくするものです。
◆静かさと室内の広さが高評価
—:では、ユーザーからアイオニック5のここが良いという評価はどういったところが挙がりましたか。
佐藤:今までと違うカーライフが送れるといわれます。それは何かというとのV2Lであったり、室内がすごく広くてくつろいだりできるといったところです。車内でリモートワークをしている方も結構いらっしゃるのです。そのようにいままでのクルマと違う使い方が出てきているようです。アイオニック5はE-GMPというヒョンデのEV専用プラットフォームを用いたクルマですので、室内空間を広くできました。そこにアイオニックシリーズに共通したリビングルーム的なデザインを取り入れていることもあって、車内で映画を見たり仕事をしたりできる室内空間が実現できているのです。
この話を聞いたときに思ったことがひとつあります。最初にiPhoneが出た時、充電が面倒くさいとか、ワンセグテレビが見られないという話が多くありました。しかし、違う新しいことができるとわかってきたら一気に普及したでしょう。そのように電気自動車もこの後普及していくかなという気がすごくしています。
—:クルマ自体の満足度はいかがですか。
佐藤:これもかなり高いですね。電気自動車ならではの走る楽しさみたいなものをすごく評価してもらえています。あとやはり静かですので、家族を乗せていてもうるさく感じさせない。そういうところもフィードバックとしては良い声としていただいてます。
◆マーケティング結果を踏まえながら
—:今回100台の限定車、アイオニック5ラウンジAWDリミテッドエディションにはデジタルサイドミラーが装備されています。これは他のカタログモデルには装備はされないのでしょうか。
佐藤:はい、デジタルサイドミラーは100台の限定車のみです。ただし、ご好評のようであれば、今後はレギュラーラインナップにもオプションなどで装備することを考えていきます。
—:では今回はマーケティング的にどうなのかという探る意味も含まれているのですね。
佐藤:そうですね。
—:ところでモータースポーツ由来のサブブランド“N”が来年早々にも導入されるとのことですね。
佐藤:現在『アイオニック5N』を開発していまして、高性能モデルとして来年初頭に導入する予定です。
—:Nというのはスポーツモデルという位置付けですか。
佐藤:メルセデスに対するAMGという位置付けと同じで、完全なスポーツモデルです。たぶん500psを超えるようなモデルになるでしょう。
◆技術革新をデザインに
—:では今回展示されている『アイオニック6』は導入されるのですか。
佐藤:まだ決まっていません。まずはきちんとお客様の声を聞こうと思っています。セダンということで本社側もそこは慎重にしようという意見です。ただ、本来は4ドアクーペというスタイルですので、その訴求ができたらいけると思っています。
実際に乗った方の声を聞くと間違いなくアイオニック6はアイオニック5とは違う良さがあるとのことなので、ぜひ日本にも入れたいと思っています。
それ以外にも本社側ではまだ世に出ていないクルマも含めてゼロエミッションビークルが多くありますので、さらにラインナップは増やしていきたいですね。
—:アイオニック6のデザインは特徴的ですね。
ヒョンデモビリティジャパンR&Dセンターデザインチームの占部貴生さん(以下敬称略):インスパイアード・バイ・イノベーションという言葉がありまして、それは技術革新からの発想を指しているのですが、アイオニック5はヒョンデ『ポニークーペ』であるとか、初代の『ポニー』という我々の遺産から発想しています。
アイオニック6は『スタウトスカラブ』から発想を得ています。最初に空力学を自動車に持ち込んだといわれているクルマで、そういった技術革新みたいなところから発想を得てこのデザインになっているのですね。アイオニック6とアイオニック5のデザインは全然違うんですけれども、発想の着目点は技術革新というところから来ているのです。それがヒョンデルックといっているポイントでもあります。
また、パラメトリックピクセルというデザインのワードでは、インテリアは非常にリビングスペースを意識した共通性があるので、これはアイオニックシリーズのインテリアだなとすぐ分かっていただけると思います。
—:日本市場では尻下がりのデザインはあまり評価されない傾向にありますが、そのあたりはどうお考えでしょう。
占部:いまの若い世代には非常に新鮮に映ると思います。正直我々世代にはちょっとクラシックにも見えるのですけれど、若い人が見るとこれは非常に新しい、こんなクルマはなかったというんですよね。いまはウェッジシェイプが全盛で、そこから徐々に水平に変わってはきていますので、こういったデザインはほとんど見れれないからです。
—:因みにリア周りのデザインがもう少し整理されるといいようにも思いますが。
占部:よくいわれているのは300mぐらい離れてみても分かるシルエット。近づいて見れば見るほど凝ったディテールというのがあって、“疎”の部分と“密”の部分の差をつけているのです。それはアイオニック5もそうなのですが、そういったデザインのやり方もしているというところがあります。