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90年ぶりにレース復帰へ、ベントレー『ブロワー』復刻プロジェクトのプロトタイプ
ベントレーは3月21日、『ブロワー・コンティニュエーション・シリーズ』の12台の復刻生産に先駆けて製作された『ブロワー』のプロトタイプ「カーゼロ」が、2023年に欧州で3つのレースに参戦すると発表した。
◆エンジニアリングの検証目的で性能と耐久性を試すのが狙い
ブロワーのプロトタイプは、販売されない車両であることから、カーゼロと名付けられた。カーゼロに続いて製作される12台の復刻モデルは、すでに完売。すでに8台が納車され、4台が現在も製作中だ。
ブロワーのカーゼロは、その系譜を汲みエンジニアリングの検証を行うことを目的として、その性能と耐久性を試すため、レースに参戦する。レース参加にあたって、レインライト、ウイングミラー、牽引フック、消火器、バッテリーカットオフスイッチの取り付けなど、安全性に関わる部分について、変更を行った。また、FIA(国際自動車連盟)公認のヒストリックカーイベントに出場できることを証明する「HTP(ヒストリック・テクニカル・パスポート)」を取得している。
ブロワーのカーゼロは、2023年に3つのサーキットで競技を行う予定だ。4月29~30日に英国のドニントンパーク、6月29日~7月3日にフランスのル・マン、9月28~30日にベルギーのスパを走行する。ヘンリー・ティム・バーキン卿のチームカー#2がル・マンに出場してから、93年ぶりのレース復帰になる。
◆収集したデータをもとに新たなパーツ1846個を設計
オリジナルのブロワーは、ヘンリー・ティム・バーキン卿のレースチームのために、4台が製造された。4台のチームカーの中で、ベントレーが所有する2号車(シャシー番号「HB3403」、エンジン番号「SM3902」、ナンバー「UU5872」)を、コンティニュエーション・シリーズのために分解。一つ一つの部品を残らずレーザースキャンするところから、プロトタイプの製作は始まった。
収集したデータをもとに、新たなブロワー用のパーツ1846個が設計され、手作業で製作された。ただし、そのうち230個はアッセンブリーであり、その中にはエンジンも含まれるため、ねじやインテリアトリムなどの個々のパーツを含めると、実際には数千のパーツが製作された。
こうしたパーツやアッセンブリーは、ベントレーマリナープロジェクトチームのエンジニア、職人が、英国内のスペシャリストやサプライヤーらと協力して作り上げた。カーゼロのエクステリアはグロスブラック仕上げとした。
◆ベントレーが所有する車両を分解してCADでデジタルモデル化
カーゼロの製作は、オリジナルブロワー4台の製造時に使用された設計図や下書き、当時撮影された写真を徹底的に分析することから始まった。次に取りかかったのは、ベントレーが所有するブロワーの2号車の分解。フレームとパーツをレーザースキャンし、その精密なデータを基に、CADによるデジタルモデルが完成した。続いて、各パーツを製作する職人たちが集められた。そうして製作されたパーツを使い、ベントレーマリナーが形にしたのがカーゼロになる。
カーゼロのエンジンは、W.O.ベントレーが設計した4「2分の1」リッター。ワトフォードにあるNDR社などの協力を得て、新たに製作された。このエンジンにはアルミ製ピストン、オーバーヘッドカムシャフト、4バルブ、ツインスパークイグニッションなど、最新技術が数多く採用されている。
ルーツ式スーパーチャージャーも新たに機械加工され、このエンジンに搭載された。今回製作されたエンジンは、1920年代後半にバーキン卿のレースチームのために製作された4台のブロワーのエンジンを忠実に再現しており、クランクケースにマグネシウムが使用されている。