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【BMW X1 新型】EVも激戦区になるコンパクトSUV市場に「iX1」
17日からの販売開始が発表された新型BMW『iX1』は、「EVはビッグサイズ・プレミアムモデル市場向けの商品」というこれまでの常識が通用しなくなる時代を予感させるものだった。
■2モデル2プライスのわかりやすさ
新型は内燃機関モデルの「X1」も発表されたが、記者発表の会場に持ち込まれた2台はどちらもBEVのiX1だった。プレゼンを行った遠藤克之輔氏(BMWブランドマネジメント本部長)は、ターゲットは「若い世代」「女性」「ヤングファミリー」だという。新型X1、iX1のコンセプトは「スモールプレミアムコンパクト」とし、とくにエントリーユーザー向けのSUVを意識した。先代X1のラグジュアリーな特徴を受け継ぎながら、同じクオリティをより広いユーザーに訴求する(遠藤氏)狙いがある。
ライバルは特定の車種というより「コンパクトSUVセグメント」全体だ(プロダクトマネージャ ケビン・プリュボ氏)そうで、特定ブランドやメーカーの名指しこそしなかったものの、狙う市場としては日産『アリア』、テスラ『モデルY』、ヒョンデ『アイオニック5』が含まれていることは自明だ。グレード設定はX1、iX1ともに「xLine」「M Sport」の2仕様のみ。
価格はxLineとM Sportのグレードを問わず、ガソリンエンジン搭載車が556万0000円(希望小売価格:消費税込み・諸費用別)と、BEVが668万円の2プライスのみとなっている。価格帯ではボルボやアウディのEVとも同じ土俵で勝負することになる。複雑なモデルバリエーションや価格設定より、シンプルな商品企画を強調するのは今風の売り方だ。
■充実のテレマティクス・インフォテインメント機能
追従型クルーズコントロールやレーンキープアシストといったドライビングアシスト機能は当然として、オートパーキングアシストやBMWデジタルキープラスなども標準装備される。デジタルキープラスは、物理キー2個のほかに5台までのデバイス(スマートフォン)を登録できるスマートキーだ。NFCによるスマホからのロック・アンロックが可能だ。加えてUWB(広域・近距離用無線通信)対応のスマートフォンなら近づくだけでドアロックやイグニッション(システム起動)に特別な操作は必要ない。
なお、スマートフォンにスマートキーをインストールするときに、最大速度を設定するなど機能制限をかけることもできる。免許取りたての子供とシェアする場合にも使えるが、シェアカーとして使う場合にうれしい機能だ。
オプションだが、ハンズフリーアシスト機能も設定される。これはドライバーモニタリング機能を搭載しており、登録された高速道路上でかつ60km/h以下(渋滞を想定)ならドライバーはハンズフリーで運転することができる。スペックだけなら高速道路上のレベル3自動運転と大きく違いはないが、レベル2としてのアシスト機能として実装される。ハンズフリーアシストは標準装備される可能性があるそうだが、その場合、車両価格は上乗せされるという。
インパネまわりはBMWのカーブドディスプレイが採用される。ヘッドアップディスプレイもフロントシールド投影型(アクリルパネルではない)が標準装備される。BMWコネクテッド・ドライブ(テレマティクス、インフォテインメント機能)、BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタント(音声認識や機能のパーソナライズ)といったコネクテッド機能も標準装備だ。
ユーティリティでは、後席のロングスライドと40:20:40のシートアレンジが可能。ラゲッジスペースは540L、後席をすべて倒せば最大1660Lまで確保できる。足をかざすだけのオートテールゲート機能も搭載する。
■EVおよび自動車としての基本性能
iX1に搭載されるバッテリーはグロス容量で116Ah/66.5kWh。航続はWLTCモードで465km。EPAや欧州基準ならば350km以上といったところだろう。車載充電器は130kW出力にも対応しているといい、今後輸入車ディーラーを中心に設置される高出力機にも対応するだろう。
モーター出力は200kW。最大トルクは494Nm。欧州仕様車のBMW自社計測では0-100km/h加速は5.6秒となっている。全長4500mm、全幅1835mm、全高1620mm。古いタイプのゴンドラ立体駐車場や多段式の立体駐車場で入らない場合もあるが、近年の国内の立体駐車場にも対応可能なサイズだ。
充電時間は、8kWのBMWウォールボックス(AC200V)で10%から80%までが6.5時間。90kWのDC急速充電器で47分(10から80%)。30分なら10から55%前後までの充電能力があるという。チャデモで一般的な50kW出力で30分充電するとどれくらい入るのかを確認したが、データを持っていないとのことだ。フィールドでの性能テストをしてみたいところだ。
■急速無制限プランに期待か?
充電プランにも特徴がある。iX1発売開始と同時に発表されたリースプラン「BMW iライフ・パッケージ」は、月額57,700円(消費税込み:4年間・6000km/年)でメンテナンスや車検サポートのほか、充電費用も含まれるという。対象となる充電は、「BMWチャージングネットワーク」の急速充電器だ。eMPネットワークの充電器ならほぼ対象になると思ってよいだろう。
月額固定で急速充電無制限というプランは、既存の「BMWチャージング」にも追加される予定があるという。現状、5500円のプランでは無制限は普通充電のみで急速充電は1分あたり16.5円ほど課金される(2月17日現在のホームページの記載)。月額料金は不明だが急速充電も無制限とするプランが導入されるという。かつてのZESP2のようなプランだとすると、これはBMWオーナーにとって朗報だ。
■全部入りハードでどんな体験を提供してくれるのか
iX1の特徴をまとめると、「ラグジュアリーなコンパクトSUV(EV)」となるだろう。パワートレインの機能や豪華装備・オプションでの付加価値よりもシンプルなモデル設定でわかりやすい価格設定も、従来の車両販売戦略との違いも感じる。ソフトウェアに付加価値が移りつつある自動車において、ハードウェアの構成や値段はシンプルなほうがよい。
価格は600万円を超えるが、デュアルモーター4WD、プレミアムな内外装、モダンなコックピットUI、コネクテッド機能や安全装備がすべて備わっていると思えば妥当ともいえる。
先進機能と運動性能や機能性が高いレベルでバランスさせることができるEVでは、スマートキーやアプリ連携、ボイスコントロール、AIエージェントによるUI/UXなど、ソフトウェアの機能や利用体験の価値が評価される。全部入りハードで、どんな体験を提供してくれるのか。新型BMW iX1はそんな期待に応えるべく作られた。