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埼玉工業大学の自動運転バスがまた進化、千葉市長や京成バス運転手も実感
「まず1年前と違って自動運転の精度が格段にアップしているし、自動化率も上がっている。ことし3月に開業する幕張豊砂駅と組み合わせ、幕張新都心エリアの回遊性を高める取り組みが、また一歩前進した」
そう語るのは、千葉市神谷俊一市長。「精度がアップした」というのは、埼玉工業大学が“生きた教材”として開発をすすめる日野『レインボーII』ベース中型自動運転バス。普段、この埼工大の研究開発教材車両は、大学と最寄り駅を自動運転レベル2で結ぶ自動運転バスとして活躍中。今回は、京葉線 海浜幕張駅のまわりを自動運転レベル2で走るテストランに駆り出され、千葉市 神谷市長は1月21日に乗車し、こう感想を語っていた。
◆加速のもたつきやぎこちないブレーキもなし、さらに自然な走りへ
実際に乗ってみて、京成バス運転手の両足はペダルに触れることなくほぼ床にベタ付け、両手はほぼハンドルをにぎらない。千葉市長がいうように、ドライバーの運転作業がほぼ未介入で走ってることが、乗客にはわからないほど。もたつきある加速やぎこちないブレーキもなく、「いつもどおり運転手が操るただの路線バス」という感じ。それぐらい、自然だったのが印象的だ。
1月21・22日の2日間、千葉・幕張新都心地域で行われたこの自動運転バスの実証実験は、千葉市が公募した「千葉市未来技術等社会実装促進事業の自動運転車社会実装サポート事業」で、次のような構成メンバー6者でテスト走行を行った。
●京成バス:自動運転ドライバー手配、実証全体総括
●損保ジャパン:自動運転リスクアセスメント、実証全体統括補佐
●アイサンテクノロジー:自動運転車両手配、自動運転用3次元地図作成、自動運転走行の遂行、技術評価結果まとめ
●建設技術研究所:アンケート調査計画・調査の実施、調査結果の集計・ニーズや社会的受容性の分析、報告書全体まとめ
●埼玉工業大学:自動運転車両提供、チューニング支援、ドライバートレーニング対応
●東海理化:車体周辺の遠隔カメラ映像伝送機能の提供・評価
◆東海理化 監視カメラ10台、アラウンドビューでデータ量1/10に
まず昨年同月の同じ幕張新都心地域でのテスト走行や、中部国際空港エリアで乗客を乗せて路線バスとして走っていたから大幅に進化した点は、東海理化(愛知県丹羽郡大口町)の状況監視カメラが左右前後に増え、合計10台が搭載されている点。これで車両の360度を直感的にビューできるほか、監視側のPCで任意方向の視界もチェックできる。
また、こうしたアラウンドビューで、複数台カメラがとらえた映像の重複部分がキャンセルでき、従来の10分の1のデータ量を実現。5G・LTE通信などで遅延なく高画質な映像がリアルタイムで送受できる。こうした東海理化のアラウンドビューで今回は、中部国際空港エリア自動運転テスト時の監視と制御をチェックしたのに対し、監視・記録に重点をおいて実験した。
◆前方視界も向上、埼玉工業大学 学生がチューニング
この自動運転バスを保有する埼玉工業大学の後付け自動運転システムも、埼工大 自動運転技術開発センター 渡部大志センター長を中心とする学生メンバーが、機材も自動運転プログラム・アルゴリズムを大幅更新。6台以上ある自動運転用制御PCもロングシート床下などに収めて路線バス定員を確保。前方にはさらに2台のカメラを増設し、道路信号認識のさいは信号をズームインし、信号に近づくと交差点全体を見渡せるようズームアウトするなどの細やかな動きも学生たちがアップデートさせた。
◆既存の路線バス車両に自動運転システムを後付け
今回の幕張新都心エリアでの自動運転車社会実装サポート事業は、京葉線の海浜幕張駅をはじめ、ことし3月に開業する幕張豊砂駅、幕張新都心オフィスエリア、イオンモール幕張新都心、幕張海浜公園などをつなぐ自動運転バスを社会実装すべく各実験を展開。15か所以上ある交差点と、4つのバス停車場(乗客乗降あり)を自動で走る実験を重ね、各種データを収集した。
埼玉工業大学の自動運転バスは、路線バス事業者などが保有する既存の日野レインボーIIなど一般路線バス車両に自動運転システムを後付けして自動運転レベル2を実現させるソリューションとして、各地自治体や事業者が注目している実験車両。大学の研究開発をはじめ、スクールバス、実証実験といろいろ出番が多いクルマで、ことしも各地のテストランに参加する予定という。