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間もなく日本導入のBMW 3シリーズ 新型、開発には日本の意見も重視された
BMWジャパンは、本国BMW A.G.のブランチオフィスとして新型『3シリーズ』の開発に重要な役割を担っているという。新型車の内容について説明が行われたのでレポートする。
◆企画段階から日本も加わる
BMWの主要車種のひとつである新型3シリーズが間もなく日本に導入される。3シリーズは世界のスポーツセダンのベンチマークとして、1975年の発売以降全世界で1500万台以上を販売。そのおよそ3%、5万台弱が日本市場で販売されている。
もちろん3%よりも多く販売をする国もあるが、「日本は国内に多くのメーカーを抱え、ハイブリッドを含めて技術的なトレンドに対して非常に大きな影響力がある。そして何より日本のお客様はBMWを強く愛していることから商品開発に対して一定の重きが置かれた」と説明するのはBMWブランド・マネジメント・ディビジョンプロダクト・マーケティングプロダクト・マネジャーの御舘康成氏だ。そして、その商品開発に関して、「どのようなコンセプトや仕様、顧客価値を作っていくかについて、開発の初期から携わっている」と述べた。
◆高品質感、プレミアム性を要望
新型3シリーズの大きな特徴は3つ。ひとつは先進的なデザイン、そしてスポーツセダンとしての比類なき運動性能、最後は革新技術だ。「このそれぞれに日本市場のお客様の声が反映されている」と御舘氏はいう。
デザイン開発は2014年ごろにスタートした。日本からは、「スポーティなことはもちろんだが、より高品質感、プレミアム性が欲しい」と提案。その理由は、「日本のお客様は伝統的な、いわゆる“ジャーマン3”を比較して購入する輸入車のお客様だけではなく、日本車のセダンからよりプレミアムなセダンに憧れて購入されるお客様の方が多くなろうとしている」。そして、「そのお客様が日本車から乗り換えた時に、走りだけではなく品質や安全性などの全てにおいて、満足を提供したいと強く提言。特にデザイン開発や内装品質などを強く要望した」と述べた。
その結果、具体的にはボンネットの先端にあった開口部の切り欠き線がなくなったことが挙げられる。これまではボンネット開口部とフロントの先端は別となっており、開口した時も先端部分は残っていたが、今回はグリルまでその開口部が延ばされたことにより、その切り欠き線がなくなったのだ。これにより品質感が高まった。
そのほかにも、ドアハンドルを貫いていた“ジッケライン”がなくなった代わりに、大きな面による抑揚が強調されるようになり、「しっかりと光のコントラストが入ることで、単にスポーティなだけではなく、走り去る流れの中で風景を映し出して美しく見せている」と語った。
◆インテリアは新しいBMWのデザインランゲージを採用
一方御舘氏は、「インテリアは3シリーズの弱点だった」と明かし、「パーキングブレーキが手引き方式であるなど、古い印象もあった」という。そこで新型では、「新しいBMWのデザインランゲージをこの3シリーズから取り入れた」。
一番のハイライトは、メーターとディスプレイが一体になったライブコクピットだ。御舘氏によると、メーターのバリエーションは、「通常のアナログ、マルチディスプレイ、そして最上級のライブコクピットと3つのバリエーションが世界市場ではある」という。
そして日本市場ではこのライブコクピットが標準装備となる。その理由について御舘氏は、「単に質感が高いというだけでなく、タコメーターが反時計回りとなることから、中央に大きなスペースが空き、そこにナビの地図を出すことができる」と話す。このことによって、「違和感の指摘もあるが、BMWが本来追求しているように、お客様の視線や姿勢を常に真っ直ぐに保って、BMWの駆け抜ける喜びを堪能してもらうことを実現した」と述べる。
BMWは現行3シリーズでも、センターディスプレイを運転席側にスラントさせることで、ドライバーオリエンテッド空間を実現。「今流行りの、コンソールの真ん中にどっしりとiPadのようなものをポンと置いて、『未来的だ』というのとは全く違うコンセプトだ」と御舘氏。
もうひとつ、新型のセンターディスプレイは従来型と比べると低い位置にある。「これはレイアウト上仕方がないのだが、それであるならば運転中にナビを横目で見るのではなく、メーターディスプレイ内で確認しながら、必ず真っ正面を向いて運転してほしい、それこそがBMWが今まで訴求してきた哲学であり、BMWの考える今の“駆け抜ける喜び”なので標準装備するに至った」とコメントした。
◆日本にしかない320i
さて走りに関して注目すべきは、日本に導入される「320i」は、日本にしかない仕様であることだ。グローバルでは「330i」が基準車となり、320iは本国ではかなり遅れての導入となる予定だ。
御舘氏によると、「開発初期段階に、330iの出力を調整する形で専用に開発したクルマ。3シリーズの導入を成功させるには、プレミアムセダンに対して要求の厳しい日本のマーケットで成功が絶対に必要だと本国を含めて理解している。だからこそ特別な開発が許された」という。
そして、革新的な先進技術について御舘氏は運転支援技術を挙げる。BMWの中では3シリーズと、『5シリーズ』、『7シリーズ』とでは明確な装備差がつけられていた。例えば運転支援技術では現行3シリーズでは単眼カメラを使用しているのに対し、5、7シリーズは二眼カメラを使うことでやや性能が高くなっているという。
新型3シリーズの開発が始まった時に、日本として、「このセグメントで初めてACC(アダプティブクルーズコントロール)を日本では標準装備化する」と決定。「まだ世界では5%しかACCが装備されていない時期だったが、日本のお客様はプレミアムメイクを買う時に自分の生命や財産を守ることも含めて、安全に非常に関心が高いからだ」。
これは、「開発当初から、三眼カメラを使った、より高性能な、本来であればより上のセグメントで使う仕様の開発が進んでいたから設定できた。現時点ではおそらく最も性能が高く、かつ、全車に標準装備することである程度価格を抑えることも可能だ」と説明し、日本市場の状況を踏まえながら開発と企画が進められていたことを明らかにした。