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「マウスみたいでクール」新型プリウスとクラウンは、EV推しのLAショーでどう受け止められたか
ロサンゼルスモーターショー2022(LAオートショー)で「2024 New XXXXXX(車名)」と紹介されている車を目にして、年末とはいえ未だ2022年なので、不思議に思われるかもしれない。欧米では年後半からモデルイヤーを翌年に切り替えることが多く、今、展示されている車両はディーラーの受注から2023年前半に生産が進められ実質的に年央からデリバリー開始となるから、2023年前半に間に合わなければ2024年と記す、そういう見込みなのだ。
◆新型プリウスは「ブルートゥース・マウスのよう」
それらニューモデルの中に、日本でもデビューして間もないトヨタの新型『プリウス』と『クラウン』が、トヨタ・ブースで一段高いステージに載せられた。オンラインでワールドプレミア発表は済んでいるとはいえ、やはりプリウスの低いウェッジシェイプ・プロポーションは注目の的だった。
モーターショー取材には、展示車両の前で解説をしながら動画を撮っているプレスがつきものだが、英語圏のジャーナリストがプリウスを「ブルートゥース・マウスのようです」と形容しているのを耳にして、意外性満点の比喩に思わず吹き出しつつ、感心させられた。テック系のアイテムに喩えられている時点で、「セクシーでクールなもの」と受け止められているのだ。
プリウスはハイブリッドの代名詞とはいえ、省燃費アタッカーだった頃は決してエモーショナルな存在ではなかったのはアメリカも同じ。だからこそ以前はレオナルド・ディカプリオが好んで乗っていることが話題になりもしたのだが、新型の変化は想像以上のインパクトで伝わっているようだ。
クラウンについては、9月のデトロイト・ショーで北米プレミア発表されていたせいもあって、プレスデイの様子を見る限り、プリウスほどの人だかりはなかった。日本で長らくトヨタのトップ・オブ・レンジにあるセダンだったことは知られていても、ラインナップ内で『カムリ』の上位にある以上は、『アヴァロン』を代替する車種なのか? クロスオーバー的なプロポーションゆえに、まだ彼の地では分類のしにくさ、あるいは腑落ちしていないところがあるように見受けられた。
◆EVの注目はレクサスRZよりもトヨタbZ
いずれにせよ、カリフォルニアでは「より環境負荷の低い車ほどセクシー」というロジックや雰囲気が強く、ハイブリッドでは2人乗車以上でないと高速道路の優先レーンは使えないが、ゼロエミッションのEVなら許されるという現実もある。そうした地合いとEVへの注目度の高さゆえ、プレスデイにトヨタ・ブースで明らかに一番人気を集めていたのは、『bZコンパクトSUVコンセプト』だ。
プリウスやクラウン同様のハンマーヘッド形状のライト周りの意匠もあって、限りなく市販モデルに近くて実現性も高いと捉えているのだろう。内装も現場で公開され、ごく小径で四角く操縦桿のようなステアリングも、プジョーが市場展開せずi-コクピットに代表される小径ステアリングが珍しいアメリカでは未来的に捉えられる。リサイクル素材を用いながら適度にツブ感のあるシートも、パタゴニア辺りのリサイクル・フリースを想像させるチャンキーな質感で、動画系プレスたちは高く評価していた。
またレクサスのブースでは、今年の春に発表され、ロングビーチの見本市ですでに北米プレミアを済ませていた『RZ450e』も展示されていた。限りなく市販に近いバージョンのようだが、まだコンセプト段階という注釈付きでの展示だったため、トヨタ・グループのEVにおける戦略モデルとして、相対的にbZコンパクトSUVコンセプトに注目が流れた背景もあるだろう。
反対に、オンラインで発表されたコンセプトや生産前の試作プロトといった、市販モデルとして「ヴァーチャルな段階」ではなく、ディーラーで実際にオーダー&納車できる市販バージョンの新型は、格別に耳目を引く。その好例が今回のLAオートショーでは、レクサスの『RX』だった。RXはアメリカでミッドサイズのSUVとしてベストセラーであるがゆえ、そのフルモデルチェンジ版は大きな注目の的だ。
展示車両はカスタムショーであるSEMAショーと同じく「RX 500h Fスポーツ パフォーマンスAWD」。新型RXの「モア・ハイブリッド、モア・パワー」というコンセプトはプリウスに先んじるところがあるが、別ブランドとはいえトヨタ・グループとして見られている以上、同時期のメッセージとしてPHEVとして、厚みを増したことは確かだ。
◆勢いを増すヒョンデの電動車ラインアップ
逆にEVは高級ラインや基幹モデルだけでなく、ニッチで付加価値的な車型にも展開し、非メインストリームで限られたセグメントへと拡がるフェイズに移りつつある。その点で韓国車はかなり的を絞ったEVを発表してきた。ヒョンデ・グループは『ジェネシスXコンバーチブル』を披露。昨年のLAオートショーで発表した『ジェネシスXクーペ』に続き、極端な水平基調でロー&ワイドのプロポーションで、見た目にまさかと思わせるデザインだが、クーペGTとの併せ技とすることで実現の可能性を強く匂わせてきた。
一方でヒョンデ『アイオニック5』の上位機種で欧州ではDセグ、北米市場ではインターミディエイト相当となる『アイオニック6』市販バージョンも、北米プレミア発表されている。こちらは全体的に水滴型で、極端な尻下がりのシルエットのファストバック・セダンだ。特徴的なデザインや空力のみならず、サスペンションやブレーキ、エアバッグの制御まで含まれるOTAテクノロジー(オーバージエア)を打ち出している。
さらにヒョンデはもう一台、スポーツGTクーペのコンセプトとして『N ヴィジョン74』も北米で初披露している。これは1974年にジョルジェット・ジウジアーロがデザインした「ポニー・クーペ・コンセプト」を下敷きに、62.4kWhのバッテリーと水素ストレージを搭載し、2基のモーターはいずれも後輪を駆動してシステム総計で900Nm・500kw(680ps)、燃料電池パッケージ側では115.6psを発揮するとしている。
同じ頃のジウジアーロの手によるオリジナル・デザインとして、FRのポニー・クーペに対しミドシップのDMC『デロリアン』が異母兄弟で似たデザインランゲージゆえ、カリフォルニアでのアピール力は強そうだ。いわば前輪周りから後輪、車体下を流れる空力を積極的にコントロールするのが当たり前の今や、空気を切り裂くようなウェッジシェイプとは、むしろ「レトロなもの」という感覚のようだ。