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【ダイハツ タント 改良新型】精悍になった顔つきを見て欲しい…商品企画[インタビュー]
ダイハツは軽スーパーハイトワゴンの『タント』を大幅に改良した。その改良ポイントは何か、またそのこだわりについて商品企画担当に話を聞いた。
◆精悍さを求めたカスタム
—:岩舘さんは2019年にフルモデルチェンジしたタントもご担当していたそうですね。その視点を踏まえて今回のマイナーチェンジで一番やりたかったことは何だったのでしょう。
ダイハツ営業CS本部国内商品企画部主任の岩舘朋子さん(以下敬称略):商品企画として1番やりたかったことは、より幅広いお客様に喜んでいただけるタントにするということです。
カスタムでいいますと、2019年にモデルチェンジしたタイミングで、エクステリアデザインはダイハツ工業としてはかなりチャレンジをしました。具体的には、世の中のカスタムといわれる仕様が、ちょっとギラギラしすぎていて、少し怖いようなイメージを抱かれるお客様が、徐々に顕在化してきていたことがあります。そこでもっと洗練されてスマートな大人のカスタムというのにチャレンジしました。それで喜んでいただいて、買っていただいたお客様もいた一方で、やはりちょっと大人しすぎる、求めているものはこれじゃない、というお声もたくさんいただきました。少し優しすぎたり、押し出し感が弱かったりしたんですね。
やりたかったことは、正直、間違っていなかったとは思うんですが、ちょっと表現手法のところでマーケットとの食い違いが出てきてしまった。そこで、ギラギラで威圧的ではないという方向ではあるのですが、もう少し押し出し感、精悍さみたいなところを改めて取り戻したいということで、今回、より幅広い方に受け入れていただける「大人のカスタム」という方向にリフレッシュしたのです。
—:標準車のエクステリアデザインは変えてはいないですよね。これはお客様からこれが良いという評価があったからですか。
岩舘:標準車のデザインについては、既にもう十分お褒めの言葉をいただいてますので、そのまま踏襲しました。
◆もっと伝えていかなければ
—:マイナーチェンジを行うに際し、これまでのユーザーの意見などをまとめたと思います。その中で評価された点と、それからこれは課題だと思われた点はどういったものだったのでしょう。
岩舘:強みはミラクルオープンドアを中心とした使い勝手の良さでした。運転席ロングスライドシートもそうですし、スライドドアをクローズする時に、待たなくてもロックができるという機構です。
あと、実はあまり知られていないんですけれど、助手席ドアにイージークローザー、自動で半ドアから全閉する機構を備えていて、これは軽自動車ではこのクルマが唯一なんです。助手席に力の弱いお子さんや、お年寄りの方が座るシーンが非常に多いクルマですので、半ドア防止など安全のために装備しました。力の弱い方が自分で閉めるときだけでなく、小さい子供が中に乗っていたりすると、強くバンって閉めるのが怖いんです。指を挟んじゃうんじゃないかとかぶつかるんじゃないかとか。そういう時にそっと閉められる機構は結構安心感があるんですよね。
こういった知られていなことがたくさんあって、それが反省点にも繋がっています。2019年のフルモデルチェンジでは、DNGA、新しいアーキテクチャー第1弾ということで、かなり気合いを入れていろんなことに初めてチャレンジをしました。ただいろんなことをやりすぎて、発散してしまったんです。それでお客様にもお伝えしきれない部分があったりとか、仕様を複雑にしすぎてしまったりとか、そういった部分がありました。販売店からも、どの機能をお勧めしたらいいのかわからないという声もありまして、少しお客様を迷わせてしまった部分もあったかなという反省があります。
◆思いとは違った反応
—:もう一方でここはこうだったら良かったのにいうのはありましたか。
岩舘:1番お声が多かったのが、収納がもっと欲しかったというものです。先代のタントに比べて収納容量の総量は確保しているんですが、例えば先代にあったステアリング周りにあったこまごまとした収納、スマホとかガムとかを置けるような場所を取り払って1つの大きな収納にしました。ボンボン置いてばっと仕舞えるのが1番いいよね、と我々は考えていたんです。ところが、前は置けていたものが置けなくなっちゃったというような声がありました。
また、助手席のフックを今回設置したのですが、元々後部座席のシートバックテーブルのところにフックを付けていました。これは助手席の方の足元の広々感を優先して前のフックはやめたのです。しかし、ゴミ袋をかけたいというニーズが想定以上に多くありましたので今回は改めて追加しました。
—:今回はそういうところを中心に使い勝手中心の商品改良と考えたのですか。
岩舘:いえ、商品改良の中心は冒頭にもお伝えしたデザインです。今回はかなり気合いを入れています。通常のマイナーチェンジですと、グリルとかバンパーだけなんですが、今回はヘッドランプからフード、フェンダーまでとかなり大がかりな変更です。
◆ロングスライドシートがオプションになったわけ
—:今回、標準車、カスタム、そしてファンクロスと3種類のバリエーションが設定されました。タント全体としてそれぞれ何割くらいの比率になると見込んでいますか。
岩舘:商品企画としては、標準車35%、カスタム45%で、ファンクロスが20%と見ています。足元の受注の割合では、ファンクロスが25%と若干上ぶれしています。いまはまだ販売店さんに実車が届いていない状況にも関わらずです。
カスタムの方は割とクルマを見なくても、お客様がカタログレベルでこれだったら買うといって決めていただいているようなのですが、ファンクロスの方は、良いのだけど、実車を見てから考えたいという方が結構多いようです。今後、店頭にクルマが並び始めるともっと伸びてくる可能性もあるかもしれません。因みに私たちが想定しているのは、この代のタントの生涯を通しての割合です。
—:さて今回、ロングスライドシートがオプション設定になりました。これはなぜですか。
岩舘:これもかなり社内で議論になりました。今回、リアシートの機構の進化や、EPB(電動パーキングブレーキ)も廉価版以外、全て標準装備しています。そういう進化を織り込む一方、軽自動車ですから、価格は抑えなければいけない。そこですでに搭載されている機能で、本当に全てのお客様が喜んでいるものは標準装備しよう、そうでないものはオプションでお選びいただけるようにしよう、という考え方をとりました。
運転席のロングスライドシートも調査をして、タントをお使いのお客様で、実際にロングスライドシートを使ってる方は、半分だったんです。もう半分の方は、お使いになってない。そこでこれはオプションにして、必要な方だけお選びいただけるようにすることで、クルマ全体の価格を抑えてお客様にご提供しようと判断したのです。繰り返しますが、本当にお客様は喜んでるのか、本当に使っているのか、かなり詰めて相当議論した結果なのです。
—:ロングスライドシートはファンクロスではあった方が良いですね。
岩舘:はい、レジャーシーンだと、例えばスキー場で靴の履き替えのときなどもありますから、そういう時に便利に使えるでしょう。
—:今回のタントの改良においてアピールしておきたいことを教えてください。
岩舘:アピールはやはり精悍になった顔付きをぜひ見ていただきたいですね。また、リアシートを変えて、荷室の格納面が高くなってしまったことで、自転車を積んでいた方が積みにくくなっちゃったんじゃないかと結構気にされているんですが、割と大きな27インチのママチャリまでしっかり積めるサイズにこだわって、室内の寸法は設計していますので安心していただきたいですね。もともとの使い方は変えることなく、新しく、より使いやすいに進化したことがポイントです。