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フェラーリのSUV『プロサングエ』、軽量シャシーに最新のアクティブサス採用
フェラーリは9月13日、新型車『プロサングエ』(Ferrari Purosangue)を欧州で発表した。プロサングエは、フェラーリ史上初の4ドア4シーター車であり、フェラーリ初のSUV。そのハイライトの一例が、軽量シャシーと最新のアクティブ・サスペンションだ。
◆ねじり剛性は30%向上しビーム剛性は25%アップ
シャシーは完全に新設計された。妥協のない剛性を実現する構造を目指し、ゼロから設計された。下部シャシー構造は、すべて高強度のアルミ合金製だ。下部シャシー構造は、アッパーボディの構造エレメントとともに、閉断面の押し出し材を鋳造材で接合したスペースフレームシャシーを形成し、そこに、荷重を受けるアルミ製シートメタルが接合されている。
フェラーリの従来の4シーター車よりも車体が大きいにもかかわらず、シャシーは軽くなった。ねじり剛性は30%、ビーム剛性は25%アップし、これが基盤となって、NVH特性が向上し、快適性も高まっているという。
ボディシェルの素材は、アルミからカーボンまで幅広く、高強度スチールを重要な部分に導入し、構造用接着剤を使う機械的接合も採用している。このように異なる素材を組み合わせることで、必要な部分に最大の強度を確保するとともに、負荷のかからない部分は軽量化できたという。
◆カーボン製ルーフはアルミ製よりも20%軽量
高強度スチールは、サイドインパクトバー、主な接合点の補強材、Bピラーに使われている。設計段階で細部まで注意を払った結果、個々のコンポーネントも異なる素材で構成された。その一例が、後部ドアのシングルヒンジだ。固定部分は鋳造アルミ製、可動部分はホットスタンピング成形のスチール製とした。
防音材を内蔵するシングルシェルのカーボンファイバー製ルーフは、完全新設計だ。剛性はガラス製ルーフと同レベルでありながら、防音材入りのアルミ製ルーフより20%軽くなった。人間工学の観点から、ホイールベースをコンパクトに押さえつつ、乗り降りのスペースをできる限り確保することに力を注いだという。
このため、フロントドアは開放角度が63度で、他のフェラーリモデルより5度広くなった。後部ドアは電動のリアヒンジ式で、79度の角度まで開く。ボンネットはフロントヒンジで、これによりAピラー周辺に特殊なフォルムを作り出すことが可能に。ボンネットのグースネック型ヒンジアッセンブリーは、開けた際の確実さと安定性から、アルミ製としている。
◆48Vモーター付きのアクティブ・サスペンション
フェラーリの最新アクティブ・サスペンション・テクノロジーを導入した。この新サスペンションには、電気モーター駆動と高精度のスプールバルブ油圧式ダンパーを、ひとつのシステムとして組み合わせている。電気モーターは、アダプティブ・アクティブ・システムやセミ・アクティブ・システムよりも減衰力調整が自在に行え、高い周波数でボディとタイヤをアクティブに制御できるという。
フェラーリのアクティブ・サスペンション・システムの特長は、「TASV 」48Vモーター・アクチュエーターがダンパーのストローク方向に力を加えるスピードにある。このために、高出力密度の3相ブラシレスモーターを、フェラーリが共同で開発した。このモーターは、スロットレス型ステーターコイル技術の採用で、径を最小化し、出力密度を最大化している。
機械的には、モーターからの力の伝達方法が新しい。油圧式ダンパーのピストンロッドに直接接合したツインリード型ボールねじで伝達するため、高周波数での反応が可能となり、摩擦、慣性、パッケージスペースを低減できた、と自負する。
アクティブ・サスペンション・システムは、前後左右の各サスペンションに取り付けられた加速度計や位置センサーを活用し、「サイド・スリップ・コントロール(SSC)8.0」や「6w-CDSセンサー」と連動して働く。フェラーリ独自の制御ロジックが、マルチマティック社の供給する「TASVダンパー」と連携して、アクティブ・サスペンション・システムのパフォーマンス要素を電子的に制御する。
この技術は、コーナリング性能を最大化できるという。ロール剛性を継続的に変えながら配分し、ロールセンターをアクティブに下げ(最大10 mm)、タイヤに作用する横力やオーバーステア、アンダーステアのバランスにメリットをもたらすためだ。また、ボディの動きとタイヤの動きの両方を高周波で制御するので、ロールとピッチを抑えるとともに、路面の凹凸も吸収する、としている。