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【トヨタ クラウン 新型】最初のスケッチから実現した色とバイトーン…カラーデザイナー[インタビュー]

  • 《写真提供 トヨタ自動車》
  • 《写真撮影 高木啓》
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トヨタ『クラウン』新型は、バイトーンという、ボンネットからトランクにかけてボディ色とは違う塗分けをした新しいカラーコーディネートを提案するとともに、積極的なカラー展開をしている。そこで、カラーデザイナーにその思いなどについて話を聞いた。

◆これまでだと決して採用しないカラー
—-:新型クラウンのボディカラーはかなり大胆なバリエーションですが、カラーのデザインコンセプトはどういうものだったのでしょう。

トヨタクルマ開発センターカラーマネジメント室主幹の穴戸恵子さん(以下敬称略):とにかく常識にとらわれない、ネオタイプにはしない新種のクラウンを生み出すイメージです。いままでですとやはり売れ筋も含めて、白黒シルバーのようなモノトーン系の色を開発していた経緯がありました。そこをあえて有彩色、今回新規開発としてプレシャスブロンズとプレシャスレイというイエロー系の2色を新規開発したのですが、両方とも有彩色でチャレンジしていて、これまでのクラウンだと決して採用しないカラーです。

このカラーたちは有彩色ですが、ぺたっと子供っぽくなりすぎないように、金属質感と高彩度を両立させなています。特にプレシャスブロンズは、金属感もありながら、ちょっと温かみとか、夕焼けや朝焼けなど情感をくすぐるような色を意識しています。そして、プレシャスレイに関しては、走り去った時に残像が残るような走りのイメージも合わせもっており、レイというのは光線という意味なので、その光の残像みたいなところをイメージして開発しました。

—-:特にプレシャスレイというイエローはものすごいチャレンジだったと思いますが、そのアイデアはどこから出たんですか。

穴戸:実は外形デザイナーが描いた、キースケッチの中にすごく魅力的な1枚があって、その色がまさにこの色だったんです。そこでこれはぜひ実現したいと思いました。このクルマの形状にまさにピッタリな色だったので開発をスタートしたのです。

—-:チャレンジといえばバイトーンもそうですね。

穴戸:はい。最初からこのバイトーンの塗分けありきでスケッチがなされていました。通常オプションのツートーンの設定はあとから考えたりするものですが、今回は形状とセットで最初からバイトーンが存在していたものですから、どちらかというとモノトーンが後で作られたという経緯です。ですのでこのバイトーンは造形と一体化しているような、後付け感のないものに仕上がっています。

確かにすごく斬新で、現在街中ではあまり走っていない思いますが、意外とすっと見慣れるというか、受け入れられるのではないかと思っています。これが新しいスタンダードにつながっていくと考えていますので、これも革新と挑戦のひとつだと思っています。

◆様々なシーンを想定しながら
—-:スケッチなどでバイトーンやプレシャスレイが描かれていたとしても、実車にするには、どこをどう塗り分けるのか、プレシャスレイでも明度、彩度もかなり細かく調合しなければなりません。そこでプレシャスブロンズも含めてこのボディ形状に落とし込んでいくにあたってのこだわりとなどを教えてください。

穴戸:スタートしてから発表まで2年というものすごく短い期間だったこともあって、試行錯誤を沢山している時間はありませんでした。とにかく理想を掲げてその理想にどこまで近づけるかということを、3DやCGも使いながらシミュレーションしていったのです。それが、期間の圧縮にもつながりながら目標に近づけた唯一の方法だったのかなと思っています。

—-:その理想に近づけた最大の要因は何だったのでしょう。

穴戸:ボディカラーは、耐候性を含めて要件がすごくたくさんあるんですよね。そういうものをクリアしていくために、最初に目標設定しても、少しずつ意匠が落ちてしまったり、妥協してしまったりというのが通常なんです。ただ今回は一枚岩というか、デザインだけじゃなくて設計も含めてみんな一緒に関わって、同じ目標を持って一丸となったことが大きかったと思います。いままではどうしても対立関係のような様相になることもあったのですが、今回はそういうことが全くなく、同じ方向に向かえたというのが大きかったですね。

—-:クラウンクロスオーバーで宍戸さんのお勧めカラーはどれですか。

宍戸:プレシャスブロンズのバイトーンです。まるでショーカーが街に走り出したようなインパクトがありつつも、どこの風景にも馴染む、そういうバランス感覚を実現しています。社長の豊田がコメントしていた、「お客様の期待の先を行き過ぎない。だけど、ちょっと期待値を超えていく」というところに、ちょうど良い配色かなと思います。

—-:もうひとつのプレシャスレイのクルマが映えるところはどういうところだと思いますか。

宍戸:まだ私もサーキットを走ってるところしかまだ見ていないのですが、背景のシミュレーションとかをCGで合成しながら開発していったのですが、夕焼けの1本道みたいなところとか、逆に街中のちょっとネオンのあるバーみたいなとこの外に止めてあるようなイメージなど、街でも郊外でも合うようなシーンを常に作りながら想定していきました。

個人的にはやはり東京がすごく似合うんじゃないかなと思っています。もちろん東京以外の方にも乗っていただきたいんですけど、東京の街の景色を変えるというか、少しモノトーンで元気のない感じや、コンクリートのくすんだ感じのところを走り抜けて行くと、すごく華やかな感じで似合うんじゃないかなと思います。塗装の工程でプレシャス工程という幕圧をぎゅっと縮めて強制的に“白”を並べることをやっているんです。ですので、夜もちょっとした光を拾ってすごく面発光するようにアルミフレークが綺麗に並んでいるので、それがそのシーンですごく似合うんじゃないかなと思います。

—-:他にカラー・マテリアルで語っておきたいところはありますか。

宍戸:内装も結構こだわっています。造形は一緒なんですが、全然違うインパネの景色に見えるパターンを2つ用意しました。今回アイランドアーキテクチャーというコンセプト(居室でいう壁面、クルマではインパネ上面奥やドアトリムなどの背景と、インパネ周りやセンターコンソールなどの機能を集約した機能アイランドを明確にゾーニングしたもの)で、背景と手前にあるものという考え方を持たせています。そこで手前(機能アイランド)にあるものに色を付けて機能を認識しやすい空間(ブラック/イエローブラウン)と、背景を明るくしたフロマージュを設定し、背景と機能アイランドのカラーの明暗をそれぞれ反転させることで広さ感や雰囲気が全然変わるような工夫をしています。