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日産『キックス』に待望の「e-POWER 4WD」登場!進化した走りと内装で、捲土重来なるか
2022年7月19日、日産はコンパクトSUV『キックス』のマイナーチェンジを発表、待望の4WDモデルを追加し、同日より発売することを発表した。
約2年前に登場したキックスは、SUVでありながらも、全車FFのみのラインアップ。南米向けに2016年から製造されていたキックスであったので、日本ほど4WDを必要とされていなかったのだが、日本導入の際にも4WDが設定されなかったのは、「e-POWER」と組み合わせることができる適切な4WDシステムがなかった(コンパクトカー用のe-4WDでは不十分)、というのが事情だろう。
前後に2基モーターを搭載した「e-POWER 4WD」
今回のマイチェンで、キックスのe-POWERシステムは、『ノート』シリーズと同じ、第2世代e-POWERとなった。もちろん、追加となった4WDモデルも同様で、1.2リットル3気筒ガソリンエンジン(最高出力60kW、最大トルク103Nm)を発電用として利用し、フロントモーター(100kW、280Nm)と、リアモーター(50kW、100Nm)の2基を積んだ「e-POWER 4WD」だ。前後モーターのシステム出力は、150kW、380Nm。これだけ大きなトルクがあると、1480kgの車重(FFは1360kg)をものともせずに、強力な加速を実現する。
通常走行時の車内は静粛性が高く、前方から「ヒーン」といった電子音が少し聞こえる程度。アクセルペダルを踏み増して加速するとエンジンがようやく始動し、一気に加速をする。踏み増し加減に応じて加速をするレスポンスは格別に良い。また、減速時には前後輪で回生ブレーキをかけるので、前下がりピッチングが抑制されているのもよくわかる。
緩めのコーナーを旋回中の緩加速では、コーナーにそってグイグイと旋回をしていく。パワートレインEV技術開発本部エキスパートリーダー(兼)企画・先行技術開発本部 技術企画部 担当部長の平工良三氏に聞くと「e-POWER 4WDが得意とするシーンのひとつ」だという。下り坂を旋回するシーンでも、修正操舵が少なくコーナーをトレースするので、恐怖感がない。実に安心感の高い走りだ。
車両計画・車両要素技術開発本部 車両計画・性能計画部 操安乗心地性能計画グループ主管の富樫寛之氏によると、日産は動性能において「コンフィデンス・ドライブ(信頼のある運転)」を目指しており、このキックスにおいても、どんなシーンでも加速しながら曲がっていける、スノーでもウェットでも信頼できるクルマを目指したそうだ。限界性能は横滑り防止装置が介入するので、どんなクルマでも挙動は一緒となる。味を持たせるのはもっと下の常用速度であり、街中を走っていてわかってもらえるような、心地よさ、運転のしやすさをお客様へ届けたい、とのことだった。
ノート風の電制シフトとセンターコンソールを採用
今回のマイナーチェンジで、キックスはノートシリーズと同じく、フローティングタイプのセンターコンソールとなり、電制シフトのタイプへと変更された。フローティングされたセンターコンソールの下側にはポケットも用意されている。
ただし、それ以外の内装デザインは従来型キックスのままであり、新世代のノート、『ノートオーラ』、『アリア』風の12.3インチのデジタルメーターやインフォモニターといったキーアイテムの採用はなかった。せっかくの商品改良のタイミングであったので、キックスへも是非とも織り込んでいただきたかったが、残念ながら、実現は難しかったようだ。
また、ブラウンの内装と主要メーカーオプションが標準装備された「スタイルエディション」という最上位グレードを2WDと4WD、どちらにも追加している。シックなブラウンカラーは、引き締まった大人のインテリアといった印象だ。
4WDモデルは306万円から
車両本体価格(税込)は、2WDが279万円~301万円、4WDは306万円~328万円。2WDと4WDの差は約25万円。WLTCモード燃費は、FFが23.0km/リットル、4WDが19.2km/リットルとなる。
日産の国内ラインアップにおいて、もっとも小さなコンパクトSUVであり、売れ筋になって欲しいモデルだけに、このエントリー価格の高さはネックとなるかもしれない。だが、全グレードで「プロパイロット」が標準搭載、17インチタイヤホイール、6スピーカー、本革巻きステアリングホイールも標準装備を加味すれば、決して高すぎる、といったことはない。「ハイブリッドでコンパクトSUVが欲しい」という方におすすめできるSUVといえるだろう。