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ディーゼルは日本、PHEVは欧州…マツダ最上級のSUV『CX-60』、日欧フラッグシップ戦略の違いとは
22日、『CX-60』の国内正式予約受注が6月24日から始まることがマツダによって発表された。CX-60の予約受注はEUですでに始まっており、その動向も気になるところだ。開発に関わった関係者のヒアリングをベースにCX-60の日欧での仕様や戦略の違いをまとめる。
CX-60は、『CX-5』の上級モデルとして日本に投入される。日本以外では欧州、そしてアジア・オセアニアなどアジアパシフィックエリアに展開される。「CX-60はグローバルモデルなので、展開地域での仕様や戦略に大きな違いはない(マツダ 国内営業本部 国内商品マーケティング部 主幹 二宮氏)」という。違いがあるとすれば、各国の法律や規制、インフラ事情に泡えたものになるだろう。
たとえば、今回新開発で追加されるPHEVは、欧州仕様は普通充電のみに対応するが、日本向けは普通充電とCHAdeMOによる急速充電に対応する。欧州(中国もだが)は、住宅や公共施設、企業などに普通充電器の普及が進んでいる。ドイツやフランスなどはすでに日本の充電スタンド数(3万基弱)に迫る2万基台の後半まで増えている。このうち3分の2くらいが自宅充電を含む普通充電スタンド(AC200~250V)となっている。PHEVのように大容量のバッテリーを搭載しない場合、経路上でも急速充電はほとんど必要ない。
日本は普通充電より公共の急速充電への投資が先行したため、欧州に比較すると自宅や駐車場への普通充電環境の整備が遅れている。そのため、PHEVでも日本は急速充電への対応が必要と判断した。
パワートレインのラインアップにも違いがある。欧州モデルはSKYACTIV-D(3.3L直列6b気筒)と48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載したMHEVと、モーター駆動可能なシリーズハイブリッド(e-SKYACTIV 2.5リットル 直列4気筒)がフラッグシップとなる。欧州モデルにもディーゼルエンジンモデルが用意されているが、CAFE規制および今後の環境規制のため欧州では主力たりえない。
欧州では、ディーゼルゲートを引き金としてディーゼル離れが進んでいる。ピークでは欧州新車市場の半分を占めていたディーゼルは現在20%前後と言われている。私見を含むが、欧州市場では、環境性能と経済性でメジャーになったディーゼルエンジンは、現在HVやEVなど電動車にとって代られようとしている。特殊用途など根強い人気はありながら、各社の主力は電動車だ。
CX-60の欧州でのミッションは、2025年以降のマツダEVプラットフォーム投入までの間、CAFE規制と市場ニーズを埋め合わせることだ。
だが、当然ながら市場が異なる日本では戦略も異なる。CX-60の国内モデルは、最廉価盤は300万円を切る299万円という設定から620万円ほどの「プレミアム モダン・スポーツ」まで幅広いグレードが設定される。パワートレインも4気筒ガソリン(SKYACTIV-G 2.5)、6気筒ディーゼル(SKYACTIV-D 3.3)、e-SKYACTIV D(6気筒ディーゼル+M Hybrid Boost:48Vマイルドハイブリッド)、e-SKYACTIV PHEV(4気筒ガソリン+モーター)の4種類が選べる。
国内市場では、電動車の走行性能が欲しい人、6気筒ディーゼルの安心感にこだわる人、経済性を重視する人、ガソリンエンジンにこだわる人など、さまざまなニーズに対応する。国内受注が始まれば、マツダから正式な予約状況が発表されると思うが、「CX-5などの動きから予想すると、初動は上級モデルのPHEV・MHEVの受注が先行するのではないか(同前)」とのことだ。