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三菱「らしさ」を訴求するヴィジョン・ラリーアート…東京オートサロン2022[インタビュー]
三菱自動車は「ラリーアート」ブランドの方向性を探る目的もあり、『Vision Ralliart Concept(ヴィジョン・ラリーアート・コンセプト)』を東京オートサロン2022に出展している。そこで、ラリーアートの方向性や三菱の中でどのようなポジショニングを持たせたいのか、マーケティング担当者に話を聞いた。
◆ラリーアート復活に向けてのリサーチ
—-:まず初めにお伺いしたいのは、なぜヴィジョン・ラリーアート・コンセプトを出展したのか、その目的です。
三菱グローバルセールスデベロップメント本部グローバルマーケティング企画部担当部長の大谷洋二さん(以下敬称略):そもそもラリーアートブランドを復活させ、これで三菱自動車らしさを改めてお客様にお伝えしていきたいということからスタートしました。その方向性の1つの可能性として今回このコンセプトモデルをお客様に見ていただこうということです。
—-:いま仰った三菱らしさとはなんでしょう。
大谷:環境を軸とした、安全・安心・快適にプラスして、お客様が運転して楽しいとかワクワクするとか、もしくは快適に皆さんが移動出来る。こういったものを融合した形がこれからの三菱らしさとしてアピールしていきたいと考えています。
—-:それは三菱のクルマたちすべてに当てはまるものです。そこをあえてラリーアートブランドにするというのはどういうことですか。
大谷:三菱全体で「らしさ」を追求していきたいというのが土台であるわけです。それをトップレベルで実現したい。それは技術レベルであったりデザインであったり性能であったり。そういったものを三菱が持っている様々なエンジニアリングの気持ち、スピリッツを最大限凝縮した形としたラリーアートを設定して、それで三菱全体を牽引していきたいという位置づけなのです。
そして将来的には車種ごとに、ひとつのバリエーションでというのはあると思います。ただし、まず第一義的な定義としてはブランドです。昔ながらのモータースポーツをコアにしたものプラス、お客様とのファンイベントやサポート、コミュニケーションなど全体を通してのブランドがベースです。その具体的なもののひとつとしてはやはりラインナップ、商品というものも考えています。
—-:将来的なお話ですが、ラリーアートオンリーのクルマというのは考えられますか。
大谷:ラリーアートバージョンしか存在しないモデルという意味では想定しにくいですね。三菱のラインナップとして、三菱らしさを表現していこう。その上位にラリーアートがあるという考え方ですのでで、ベースがなくてラリーアートだけというのはちょっと想定しづらいですね。
—-:そうすると専用車種というよりは、これまでの例えば『ギャランVR4ラリーアート』とか、『ミラージュラリーアート』など、そういうニュアンスのものが復活するということですか。
大谷:復活するとまではいえませんが、将来的な商品展開の方向性としてはラインナップのより上位に位置する形でラリーアートというラインナップを検討出来ればと考えています。
◆幅広く認知度を上げて
—-:1980年代から2000年代初期にクルマに興味のあった世代はラリーアートというブランドの認知度は高いでしょうし、そのイメージも持っているでしょう。その後、ブランドが消えてから10年くらいは経ってしまいました。そうすると今後訴求する上で認知度が低い人たちもターゲットにしていかなければいけないと思います。そのあたりはどう考えていますか。
大谷:おっしゃる通り一定の年代から上の方はラリーアートはどちらかというと懐かしいとか、そういったイメージがあります。一方若い方にしてみるとあまり馴染みがないブランドともいえます。ラリーアートを通じてお伝えしたいのは、クルマを運転するワクワクとか楽しさですので、これはラリーアートをご存じのない若い方中心に、クルマをドレスアップする楽しさ、運転する楽しさ、エモーショナルな気持ちをぜひお伝えしていきたいと思います。
—-:ちなみにいつ頃復活しますか。
大谷:スモールステップでスタートと考えています。すでにタイでは日本では発売していない、『トライトン』や『パジャロスポーツ』にはラリーアートの用品を装着したものを既に投入しています。今回国内でも、『アウトランダー』、『エクリプスクロス』、『デリカD-5』、『RVR』にもラリーアートの商品を装着してステップアップしていきます。
—-:まずは用品からということですね。
大谷:はい。
—-:そこから少しずつ足回りやエンジン系とかに手を入れて行ければ、というイメージですか。
大谷:現在のモデルラインナップは基本性能がそれなり高くなっていますので、お客様ご自身が手を加える、もしくは我々がどう用意するかというのはこれから検討だと思っています。タイのトライトンラリーアート、パジェロスポーツラリーアートは、ラリーアートの特別仕様車という位置付けで、車両に用品を全部装着した形でお客様にお届けするという形になっています。
—-:それらのクルマには内外装パーツ以外で組み込んでいるものはありますか。
大谷:現時点ではまだエクステリアとインテリアパーツのみです。
—-:つまり見た目の印象で三菱らしさをより訴求出来るデザインにしたということですね。
大谷:そうですね、スタイリングですね。これまでのラリーアートをよく知っている人であればある程、スタイリングプラス性能へのご期待は高いというのはひしひしと実感していますが、いまの時点ではまずノーマルとは違う、ラリーアートらしいスタイリングを提案するところからスタートしています。
◆1段高いレベルを目指して
—-:さて、ベースモデルの『アウトランダーPHEV』と比較して三菱らしさで強調したところはどういうところでしょう。
大谷:ベースモデルからしてモーター、電池、それとS-AWCなどを含めて動力性能は非常に高いんですね。このレベルが当社のいまのフラッグシップ商品そのものです。このヴィジョン・ラリーアート・コンセプトはそこからさらに1段高めたレベルを想定しています。ですので、走る、曲がる、そして大径ブレーキも採用していますので、止まるというクルマの基本性能も将来的には高めていくことを想定していきたいのです。
—-:最後にラリーアートらしさとは何でしょう。
大谷:やはりクルマを持つ、運転するということに対するワクワク感をお届けするというのがラリーアートらしさです。クルマへの関与の高い人であればあるほどそうだと思うのですけど、そうじゃない人もこれからクルマに関わるワクワク感を感じていただければなと思っています。
これまでのラリーアートは”好きな人は好き”でした。しかし今後はもっと幅広い方に好きになってもらいたい。その好きになっていただく理由は、やはりクルマの楽しさを通じて好きになってもらいたいというところです。それを三菱自動車とそれをけん引するラリーアートを通じてお届けしたいと思います。