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ブガッティの10台のみのハイパーカー『チェントディエチ』…最高速380km/hを想定した風洞実験が完了
ブガッティは8月31日、世界限定10台を生産する新型ハイパーカー、『チェントディエチ』(Bugatti Centodieci)の風洞実験を完了した、と発表した。10台は完売しており、2022年から納車を開始する予定だ。
◆チェントディエチとはイタリア語で「110」を意味
チェントディエチは、ブガッティの創業110周年記念モデルであり、ブガッティが1990年代に生産した『EB110』へのオマージュとして開発される。車名のチェントディエチとは、イタリア語で110を意味している。
EB110は1991年に発表され、ブガッティブランドの復活を印象づけたスーパーカー。EB110には、パワーアップ版として「SS」が用意されていた。車名のSSとは、「スポーツ・ストラダーレ」の略だ。3.5リットルの排気量を備えたV型12気筒ガソリンエンジンに、4個のターボチャージャーを組み合わせ、最大出力611psを獲得していた。6速MTを介して、0~100km/hを3.2秒で駆け抜けるというスーパーカーだった。
EB110は、イタリアのカンポガリアーノで生産された。ブガッティの元オーナーのロマーノ・アルティオーリは、ブガッティを創業したエトーレ・ブガッティの生誕109年の1990年9月15日、イタリアに工場を開設した。そしてアルティオーリは翌1991年、エトーレ・ブガッティの110歳の誕生日に、スーパースポーツカーのEB110を公開した。
◆チェントディエチのベース車両はシロン
ブガッティによると、チェントディエチの開発と設計に関しては、多くの技術的課題に直面したという。EB110は1980年代後半に開発されており、非常にフラットで、くさび形の古典的デザインが特徴だ。一方、チェントディエチのベース車両の『シロン』は、複雑なエアロダイナミクスフォルムを備えており、シロンベースでEB110のようなデザインを構築することに苦労したという。
チェントディエチのフロントには、馬蹄形のラジエーターグリルを装着した。新開発のフロントスポイラーは、フロントバンパーの3分割エアインテークに似合うようにデザインされた。ノーズは非常に低く、象徴的なブガッティホースシューは、低いノーズに合わせて小型化された。これらのデザイン要素により、EB110のモチーフを再現しているという。LEDデイタイムランニングライトを組み込んだヘッドランプは、スリムなデザインが特長だ。
ボディサイドでは、BピラーのCラインが、シロンよりも大幅にコンパクト化された。5つの丸型エアインサートを、ダイヤモンドの形で配置した。W16気筒エンジンの冷却に、充分なエアインテークを備えている。
◆8.0リットルW16気筒+4ターボは最大出力1600hp
チェントディエチのミッドシップに搭載されるパワートレインは、シロンの8.0リットルW16気筒+4ターボがベースのエンジンだ。オイルクーラーに吸気口を追加することにより、エンジンの冷却性能を引き上げるなどの専用チューンを受けた。最大出力は1500hp/6700rpmから、1600hp/7000rpmに、100hp向上している。
トランスミッションは7速デュアルクラッチ「DSG」で、駆動方式は4WDだ。チェントディエチはシロンに対して20kg軽量化されており、0~100km/h加速2.4秒、0~200km/h加速6.1秒、0~300km/h加速13.1秒の性能を発揮する。最高速は380km/h(リミッター作動)に到達する。
チェントディエチは10台のみを、フランス・モルスハイムで、ハンドメイドで組み立てる計画だ。価格は800万ユーロ(約10億4200万円)だが、10台は完売している。
◆専用ボディのエアロダイナミクスを風洞実験で確認
ブガッティは、このチェントディエチの風洞実験を完了した。チェントディエチは、馬蹄形が小さいフラットなフロント構造のため、車両の周囲の空気の流れが、『シロン』や『ディーボ』とは異なる。最高速350km/h以上の性能を持つハイパーカーでは、とくにエアロダイナミクスが重要。コンピュータによるシミュレーションに続いて、プロトタイプ車両の風洞テストが行われた。
風洞テストでエンジニアは、車両の設定を微調整して、開発の目的値に近づけた。フロントのディフューザーフラップは微妙な角度で調整でき、リアウィングも角度を変更できる。理想的な設定を見出した後でも、車両がどのように反応するかを確認するために、他の設定を試したという。風洞試験では、ブガッティのエンジニアがさまざまな速度で、車両の周囲の空気の流れをチェックした。140km/hから380km/hの最高速度まで、さまざまなテストを実施。停止状態から300km/hを超える速度域まで、バランスの取れたハンドリングを目指した。
最大出力1600psを引き出す8.0リットルW16気筒+4ターボエンジンの冷却性能も、空冷式オイルクーラーを装備しているため、車体側面の空気の流れに大きく左右されるという。エンジニアは、風洞実験でブレーキの冷却性能も確認した。さらなるテストでは、風がさまざまな横方向の角度から車体に当たる場合を想定。荷重が変化した時、コーナーでのハンドリングへの影響をシミュレートした。エンジニアは、今後数週間にわたってテストコースでさらに多く走行を重ね、最終的なセットアップを決定する、としている。