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【日産 ノートオーラ NISMO】モナコの壁をミリで攻める感じ…松田選手がハンドリングを語る

  • 《写真提供 日産自動車》
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日産ノートの上級モデルとして発売が開始された『ノートオーラ』に、さっそくNISMOバージョンが発表された。17日にオンラインで行われた発表会では、製品コンセプトやイメージビデオの他、レーシングドライバー松田次生氏によるテストドライブのインプレッションが語られた。

ノートオーラNISMOは、ノートオーラというプレミアムコンパクトに「NISMO」というモータースポーツの精神が注入されている。具体的には、空力デザイン、ハンドリング、加速感の3つだと片桐隆夫氏(NISMO 代表取締役社長)は言う。

デザインでは、Cd値とダウンフォースを両立させるフロントおよびリアのスポイラー、前後ホイールアーチのサイドスプリッターがオーラNISMOを特徴づけるパーツだ。リアウィングは2層構造でダウンフォースをかせぐ。リアクォーター後ろからバンパーにかけてのデザインはサイドからの気流の巻き込みを外に逃がす形になっている。また、リアセンターに配置された7灯LEDのリアランプはフォーミュラE車両を彷彿とさせる。

加速感については、「飛行機のような加速(感)」を再現するため、e-POWERのエンジン、インバーターの制御をチューニングしている。「飛行機のような」というのは、もちろん離陸速度までの加速Gを発生させるほどではないが、スタートダッシュだけの加速ではなくその後も加速Gが連続して感じられるという意味だ。

この制御は6軸のドライブシミュレーターを活用して1000パターンもの制御を試したという。ただ、シミュレータの設定は数秒で終わるので、1000パターンの実験はわずか3日間で終わったそうだ。

最後にハンドリングだが、これはテストコースをドライブしたプロのレーシングドライバーである松田選手のテストドライブ動画とコメントをもとにまとめてみたい。

試乗終了後、松田選手の第一声は「速ぇーなあ。スラロームがとにかく楽しい」だった。

この一言ですべてを語っているといってもいい。「速い」は、おそらくゼロ発進からの加速についての発言だろう。動画でもテストコースの最長ストレートを発進からバンクコーナー手前まで加速がつ続いていることが確認できる。モーターはノートオーラと同じ100kWだが、EVやシリーズハイブリッドの出力特性を決めるのはバッテリーとインバーター制御だ。モーターにとって自動車の動力とするくらいは問題ないので、加速の制御はもっぱらバッテリーの制御によるものだ。ゼロ発進の動画では、アクセル操作に応じてエンジン音が聞こえた。発進時から積極的に発電(始動)させる制御だ。

スラロームテストでは、設定速度では松田選手も非常にゆったりした操作で切り抜けている。画面ではロールもほとんど発生していないようだ。設定速度以上で攻めた動画でもラインが乱れることはない。驚かされるのは、スラロームの奥にいっても挙動が乱れたりアンダーステアがでたりしない、一定の軌跡を描いていることだ。

通常、パイロンスラロームで設定速度以上でつっこむと3つ目4つ目とだんだんと挙動が乱れてくる。転舵による揺り返しによるヨーが蓄積されアンダーステアになり、次のパイロンがどんどん厳しくなる。レーシングドライバーだからというのもあるが、パイロンの最後まで同じラインで抜けている。

だが、松田選手はパイロンコースを攻めているとき、1回、リアでパイロンをひとつ蹴とばしてしまっている。「ハンドリングがよく、高いスピードでもミリ単位でラインが狙えたので、ついギリギリを攻めてしまった。モナコで壁を攻める感じ?(笑)」とコメントしていた。100%ではないとしても、プロのレーサーにそんな攻め方をさせるほどの車ということだろう。

回生ブレーキの制御もNISMOチューンが施されている。松田選手いわく「利かせすぎていないのでサーキットのコーナー前の減速でも違和感がない」とのことだ。なお、オプションでレカロ製のセミバケットタイプのスポーツシートの設定がある。4点シートベルト用の穴も空いており本格的だ。

e-POWERは、床下バッテリーで低重心とはいえフロントにエンジンを搭載しているのでEVほどバランスがよいわけではない。それでもこれだけのハンドリングを実現しているのは、モータートルクの細かい制御に加えサスペンションの働きも大きいはずだ。

ノートオーラNISMOでは、リアダンパーにモノチューブ(単筒式)方式を採用している。モノチューブは競技車両用のダンパーに良く採用される。通常のツインチューブ(復筒式)にくらべ、ピストンの面積が多きくとれ減衰圧調整もしやすい。機構も単純で応答性能がよい。放熱性もよく、取り付け自由度が高い。シリンダー内に注入されるガスは隔壁で分離されているので、オイルとガスが混ざるエアレーションも発生しない。走行性能は高まる半面、乗り心地が悪くなるという欠点がある。

NISMOバージョンながらノートの上級モデルであるノートオーラにモノチューブを採用した理由は、NISMOが求めるダンパーの応答性能、リアの接地性を実現させるためだ。乗り味は若干固めになるが、容量が大きくとれ、減衰力調整の幅の広いモノチューブなら走行性能と乗り心地の両立が可能という。

実際、松田選手の攻めたスラロームでも操作そのものは非常になめらかで、ゴツゴツした挙動も見られない。JEVRA主催のEVレースでは、リーフとともにe-POWERノートも参戦している。ノートオーラNISMOをこれに持ち込むのも悪くなさそうだ。