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【ホンダ ヴェゼル 新型】時代の少し先を行く人たちをターゲットに…開発責任者[インタビュー]

  • 《写真撮影 内田俊一》
  • 《写真撮影 内田俊一》
  • 《写真撮影 内田俊一》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 内田俊一》
  • 《写真提供 ホンダ》
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  • 《写真撮影 内田俊一》
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ホンダはコンパクトSUVの『ヴェゼル』をフルモデルチェンジし2代目に進化させた。そこで開発責任者にどういう思いで2代目を作り上げたのかについて話を聞いた。

◆ヴェゼルとともに歩んできた

—-:岡部さんは、これまでどのようなクルマに携わってきたのですか。

本田技研工業四輪事業本部事業統括部ビジネスユニットオフィサーシニアチーフエンジニアの岡部宏二郎さん(以下敬称略):まさにヴェゼルばかりです(笑)。

会社に入ってからだいたい20年ぐらい経つのですが、最初の10年間は衝突安全機能をずっとやっていました。どちらかというと骨格の構造研究などで、その後の10年が商品開発です。初代ヴェゼルの前に先行開発を2機種ほどやりまして、3機種目で初代ヴェゼルを担当したのです。グローバルモデルでしたから、途中から完成車性能のアジア地域の責任者をやったあと、RSを出し、ホンダセンシングを追加したタイミングぐらいでグローバルでの性能の責任者をやり、フェイスリフトをしたタイミングでは開発責任者もやりました。1台で現場から叩き上げてきたようなものですね。

その後この話(新型ヴェゼル)が出て、ツーリングの仕込みやターボまで行い、その立ち上げは後任に任せて、この企画は2017年からスタートしました。つまりホンダ人生の中の後半10年はずっとヴェゼルと共に歩んで来たわけです。

—-:先代ヴェゼルはまさに新規投入車種でしたが、どのようなクルマにしたいと思っていたのでしょうか。

岡部:まさに新ジャンルのクルマを作ろうとしていました。SUVブームの兆しみたいなものはありましたが、クロスオーバー的なクルマ作りとして、この時はかなり欲張りに、SUVらしさは必ず出し、でもパーソナルなクーペライクなクルマにし、ユーティリティはミニバンのようにということを全部やろうとしたのです。それぞれに大きくこだわり、(荷室容量などの)数字にもすごくこだわりました。これはこれでやりきった感じです。

ヴェゼルをずっとやって来て思っていることは、クロスオーバーはバランスだということです。新型ではSUVの信頼感はもう少し進化させたいし、もう少しパーソナルな形にもしたほうがいいかなと自分でも思っていました。ミニバンのようなユーティリティでは、バランスを少し直したいなというところがありました。

それは荷室の容量など、当時はすごくこだわっていました。その結果、リアシートのリクライニングに関しては、どちらかというとリア席の快適な方向というよりは、荷物をすごく乗せるとき用の立てる方のリクライニングに作っていました。足元はすごく広いのですが、低いバックレストや、シートも薄く、角度も立ち気味でしたので、荷室は広いけれども大人が長時間4人乗れる快適性があるかというところは疑問もありました。

自分の家族にも乗ってもらい意見を聞いたり、グローバルで色々意見を集めていったりしたところ、せっかくの強みのリアの居住性が、お客様目線でいうと足りないところがあったのです。

この強みをもっと伸ばしたい。お客様はVDAの容量でクルマを買うかというと、訴求の時はいいやすいですが、それほど数字自体にはこだわっておらず、それよりも何を乗せられるかということですから、(数字に)こだわって変な段差を作るよりは、完全にフラットにして段差を少なくするようにし、変なギミックもいらないようにしようと考えていきました。先代ヴェゼルを元に10年間いろいろ考えた上での進化を今回入れようかなと思ったわけです。

◆全体が一体に見えるデザインに

—-:先代ヴェゼルと比べると、新型ではデザインを含めて方向性が大きく変わったように感じるのですが、そのあたりはいかがですか。

岡部:お客様に提供したい手法は変わっていると思いますが、根底にあるコンセプトは大きくは変えているつもりはありません。

その手法とは、例えばデザインの見せ方では、先代ヴェゼルのクーペとSUVとミニバンというのが、完全にひとつに出来ていない……。極端にいうとキャラクターラインで切って、ここから上がクーペ、この下がSUVで、お尻周りがミニバンというものを“ガッチャンコ”している感じでした。そういうところの処理を苦しんだデザインではあったかなと感じています。

今回、デザイナーともよく話をしましたし、ハードポイントは全部認識もしていましたので、まず前後を一体にしたかった。大体のクルマはキャラクターで逃げていますが、今回はなるべくそういうことをしないようにしながら、(クーペとSUVとミニバンを)全部入れようとしましたので、元々先代にも入っていた要素は今回も全部入っています。

ただし、後でつけたような感じや、ハードポイントを処理出来なかったようなところを、今回は時間をかけて一体に何とかしようよと、デザイナーも設計者も含めて、みんなでこだわってやったポイントです。

—-:先代のエクステリアはSUVでありクーペライクなクルマで、室内に乗るとリア席などはミニバンといいつつもクーペのような雰囲気もありました。今回はエクステリアとインテリアが統一されていますね。外から見た室内が広々としている印象と、実際に中に乗っても同じイメージです。

そこでお尋ねしたいのは、先代ヴェゼルユーザーはエクステリアデザインをどのくらい重視していたのかです。その結果を踏まえ、エクステリアデザインと居住性のバランスはどのように考えていったのでしょう。

岡部:確かにユーザーの購入動機を見るとやはりエクステリアデザインが先代もすごく高かったので、エクステリアデザインは当然、第一印象ですごく良いと思わせなければいけません。そういったところは決して変わってはいないでしょう。

しかし、デザインを重視して購入しているので、使い勝手面などでちょっといいかなという考えは当然ありません。エクステリア、インテリアの関係は、先代でもしっかりと会話をしながらやっていました。ただし、そこでありがちなのが、それぞれのコンセプトがあって、それぞれが進めていく感じになってしまったことです。

そこで今回はあくまでもグランドコンセプトは全部一緒で、幸か不幸か(笑)、今回はパッケージの担当があまり大きく主張することがありませんでしたので、当然前提条件はあったものの、エクステリアデザイナーはインテリアデザインのことを、逆も同じように考えています。当然両デザイナーとも色々やりたいところはあったと思いますが。

また、通常はお互いのチームの場所もバラバラなのですが、ヴェゼルの場合は一緒にやらせてくれといってそのようにしました。そこで、お互いのモックアップモデルを見たり、お互いのデザインを見たりしながら進めた結果、全体として機能面が強く見えているのかもしれません。そして、その機能的なデザインをしつつ、さらにお客様に分かりやすく格好良いとか使いやすいといったところを両立するように心がけてデザインしてくれました。

◆ちょっと先を行く層を狙って

岡部:今回ターゲットユーザーを“ジェネレーションC”に絞りました。いつでも創造し(Create)、情報を集約し他人のためにまとめ、(Curation)、常につながり(Connecting)、コミュニケーションをとっている(Communicating)という特徴を持った人たちの層ですが、そのボリュームは数年後には40%くらいになるという予測を立てています。つまり、先代ヴェゼルユーザーよりもより大きく構えているように感じるのです。

—-:なぜそのようにしたのでしょうか。シビックなどの量販車であれば、台数を追い求めるのはわかります。しかし、あえてまだ2代目のヴェゼルでそこまでターゲットユーザーを広げたのはなぜでしょう。

岡部:どちらかというとマスボリュームを取るために、万人受けするという目的でジェネレーションCを設定したわけではありません。あくまでも現時点ではアーリーアダプター的な存在で先行層です。しかし、極端な先行層ではなく、ちょっと先を行っているくらいの人たちの価値をしっかり掴むことで、フォロワーにも伝わっていく価値観をどう捉えを考えています。

ジェネレーションCは仮説でもありますが、各年代にこういう考えの人たちはいると思うのです。我々もいままでホンダファンでロイヤリティの高いお客様も大事にしていきますが、同時にこれからの世代にも受け入れてもらわなければいけません。つまり、より将来の源泉になるような人たちの価値観を捉えるために、どうすべきかということでこのターゲットを設定したのです。

先代ヴェゼルも出すタイミングでいうと少し先行層を狙っていましたので、今回もいまの時代における、いまの価値観の先行層を狙っているつもりです。

◆ヴェゼルを愛する人たちには受け入れられる

—-:先代ヴェゼルユーザーが新型を見てどう感じるのか興味がありますね。

岡部:はい、実はヴェゼルユーザーは全然(属するセグメントとは)違うところから来ています。変えていると感じられるかもしれませんが、ずっとヴェゼルをやっている者からするとあまり違和感なく捉えてもらえるのではないかと思っています。

確かに様々な意見はありますが、これはヴェゼルを本当に愛してくれている人の意見とはあまり思っておらず、私はずっとヴェゼルを見てきて、ヴェゼルの正常進化は時代を先駆けるべきだと思うし、今回も少し時代を先駆けるようなイメージになっています。

確かに最初は多少違和感があるかもしれません。でも冷静に見てみると合理的な形であり、少し不思議な感覚になると思います。それはすごくオーソドックスで1980年代のホンダにあったような、すごくシンプルに、あまり日本車にはない欧州の感じが表れていると私は思います。