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【ホンダ ヴェゼル 新型】進化したパワートレインと足回り、乗り心地や静粛性を向上

  • 《写真撮影 小林岳夫》
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  • 《写真撮影 中尾真二》
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4月23日から販売開始となる新型ホンダ『ヴェゼル』は「AMP UP YOUR LIFE」をグランドコンセプトとし、新しい価値観を持つ世代に生活の質を向上させるクルマとして設計された。そのため、コンパクトカーからプレミアムカーまでで激戦区と言われるSUV市場の中で、馬力や燃費、ラゲッジスペースだけではない機能や細部にこだわっている。

◆見た目の個性より中身で勝負

新型ヴェゼルのパワートレインは、e:HEV(ハイブリッド)とガソリン車から選ぶことができる。e:HEVは装備によって「X」「Z」「PLaY」の3グレードが用意される。Xがベーシックグレードで、Zはリアベンチレーション、ハンズフリーパワーゲート、専用オーディオシステム、ステアリングヒーターなど機能が充実する。

PLaYは、後席にもガラス部分が拡張されるパノラマルーフが装備され、最高価格グレードになるが、それ以外の装備はZとほぼ同じだ。

先行発表では、おもにフロントアイコンがホンダらしくないといった意見もあったが、競合が多いSUV市場で、ともすると見た目のインパクト重視や過剰なポリゴンボディでいかつくなりがちなデザインの逆を行った結果でもある。

ターゲットとする「ジェネレーションC」と呼ばれる層には、パノラマルーフ(e:HEV PLaYモデルのみ)、L字型ベンチレーターによる快適エアコン、開けっ放しでも自動で閉まってくれるパワーゲート、専用開発のプレミアムオーディオといった機能でアプローチする。

◆純正アクセサリーには今風の装備も

ホンダアクセスによる純正アクセサリーもこだわっている。新型ヴェセルには「アーバンスタイル」と「カジュアルスタイル」という2つのコーディネートがディーラーオプションとして設定された。グリルデザインが変わり、テールゲートスポイラーやオリジナルインテリアでアグレッシブな印象となる。

センターコンソールのイルミネーション、フットライト、センタートレーライト、ドアハンドルのイルミネーションなど、内装のライティングアイテムも充実している。ジェネレーションCにとってガジェットの「光り物」は重要だ。他にも9インチ専用ナビにハイグレードスピーカー、フロント+リアカメラキットとドライブレコーダーパッケージも充実する。

さらに今風なのは、エアコンフィルターにかぶせる「くるますく」というオプション。くるますくは、特殊加工された素材により空気中のウイルス飛沫を除去する。内気循環15分でウイルスを99%以上減少させることができるという。今回、新たにLサイズを設定した。ウイルス対策では換気も重要とされるが、内気循環で効果を発揮するくるますくは要チェックだ。

◆パワートレインはフィットと同じだが同性能ではない

一方、走りや運動性能について手を抜いたりおろそかにしているわけではない。パワートレーンや足回りは旧型より各段に進歩しており、乗り心地や静粛性の向上に寄与している。

『フィット』から採用されたe:HEVはホンダ独自のハイブリッド機構で、高速巡航時にエンジン直結による駆動モードを持つ。EV走行をメインとするハイブリッド車の弱点とされる高速走行をエンジンでカバーする。この方式はトヨタのハイブリッド(THS-II)や日産のe-POWERにない特徴だ。

搭載されるエンジンはフィットと同じだが、制御はヴェゼル専用にチューニングされている。ハイブリッド車やEVの動力性能は、ほとんどバッテリーとモーターとインバーターの制御で決まる。コンパクトカーのフィットからSUVのヴェゼルへの流用でも、ソフトウェアで対応可能なのがEV、シリーズハイブリッド(e-POWERやe:HEV)だが、新型ヴェゼルではモーターの最大出力が96kW(フィットは80kW)にアップされている。

◆パワーマネジメント系の強化・改善

バッテリー容量もアップした。フィットでは40個のセルを搭載していたが、新型ヴェゼルでは60個に増量されている。バッテリーの容量アップは、電動制御の領域を広げ、乗り心地や運動性能の向上につながる。

その半面、荷室や乗員空間の圧迫につながる可能性があるが、ヴェゼルでは、バッテリーセルと一体化させていた制御ユニット(PCU)を分離させエンジンルームに移設し、乗員スペースを犠牲にせず荷室のフラット化と、SUV向けの出力アップを実現している。

PCUの移設にあたっては、スイッチングデバイスを刷新し、水冷システムを採用し制御回路基板とハウジングを小型化した。ヴェゼルの4WDモデルはプロペラシャフトでリアアクスルに動力を伝達している。荷室や乗員スペース下を犠牲にせずバッテリーを容量アップできたことは大きい。

◆質感向上への取り組み…静粛性と乗り心地

静粛性と乗り心地向上は、新型ヴェゼル開発でのこだわった点だ。「静粛性は、バッテリー・モーター容量・出力アップによりEV走行領域を広げたことが一つ。走行音はフロアパネルやバルクヘッドの遮音板や防振構造、そしてエンジンの稼働制御、回転の制御を工夫した」(開発責任者で 岡部宏二郎氏)という。e:HEVはEV走行の割合が高くなるため、エンジン音が余計にうるさく感じてしまう。防音・防振は上位クラス並みの措置を施している。

静粛性については、ガソリンエンジンにも工夫がある。エンジンの燃費向上策の一つに直噴エンジンがある。しかし、シリンダー内に直接燃料を噴射するエンジンはインジェクターの音など、エンジンノイズが大きくなる欠点がある。ヴェゼルのガソリン車はポート噴射方式を採用しノイズを抑えている。

乗り心地はボディ剛性アップ、サスペンションの低フリクション化、エンジンマウントの最適化などで向上させた。フレーム各部のハイテン鋼の適用率を先代モデルの9%から15%に上げた。サスペンションはダンパーやスプリングの動きを同一軸に揃えることでフリクションを低減。各部のジョイントやブッシュ類の形状、素材の改善によってもフリクションを下げ、サスペンション全体の動きをしなやかにする。

リアサスペンションのブッシュには、液封式を採用し動きを柔らかくすると同時にブッシュ側面にフランジを立てることで横方向の剛性を損なわないようにした。ブッシュの縦方向の動きをなめらかにしながら、操縦安定性を損なうような横方向の動きを規制する措置だ。

駆動方式は、e:HEV、ガソリンともにFFと4WDが選べる(PLaYはFFのみ)。価格は、ガソリンエンジンのFF(Gタイプ)が227万9200円。パノラマルーフのついたe:HEV PLaYモデルが329万8900円(全て税込み)。