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ポルシェ 911GT3 新型、300km/hで5000kmを連続走行…開発テスト 納車は欧州で5月から
ポルシェは4月7日、新型『911 GT3』(Porsche 911 GT3)の欧州での納車を5月に開始すると発表した。同時に、新型の開発の舞台裏も明らかにしている。
新型911 GT3は、ポルシェのモータースポーツ部門と緊密に協力して開発された第7世代の高性能スポーツカーだ。フロントアクスルのダブルウィッシュボーンレイアウトや、GTレーシングカーの「911 RSR」由来のスワンネック型リアウイングやディフューザーを備えたエアロダイナミクスなど、従来型以上にレーステクノロジーを市販モデルに投入している。
◆4.0リットルに排気量を拡大したフラット6は最大出力510ps
従来型の911 GT3には、自然吸気の3.8リットル水平対向6気筒ガソリンエンジンを搭載しており、最大出力は475ps/8250rpmを発生していた。動力性能は7速PDKの場合、0~100km/h加速が3.4秒、最高速が318km/h。6速MTの場合、0~100km/h加速が3.9秒、最高速が320km/h。0~100km/h加速は7速PDKが速く、最高速は6速MTが上回っていた。
これに対して、新型911 GT3では、レーシングカーの「911 GT3 R」のパワートレインをベースにする4.0リットル水平対向6気筒ガソリンエンジンを搭載する。最大出力は510ps/8400rpmと、従来型に対して35ps引き上げられた。このエンジンは、耐久レースでその実力が証明されている高回転エンジンで、新型「911 GT3カップ」にも、ほぼ変更を加えずに使用されている。
トランスミッションは、6速MTと7速PDK。新型911 GT3の動力性能は、0~100km/h加速が3.4秒、最高速は320km/h(PDKは318km/h)に到達する。
◆モータースポーツのノウハウをエアロダイナミクスに導入
モータースポーツから得られた経験に基づくエアロダイナミクスは、空気抵抗係数に影響を与えることなく、大きなダウンフォースを生み出す、と自負する。パフォーマンスポジションでは、手動で設定されるウイングとディフューザーエレメントが、高速コーナリングに有効な空力を大幅に高めるという。
ワイド化されたボディ、大径ホイール、新たに採用されたテクノロジーにもかかわらず、新型911 GT3の重量は従来型と同じで、6速MTは1418kg、PDKは1435kgとした。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のフロントリッド、軽量ガラスウインドウ、最適化されたブレーキディスク、軽合金製鍛造ホイール、後席コンパートメントカバーなどにより、軽量化を追求した。スポーツエグゾーストシステムも、従来型よりも10kg軽く、無段階電動調節式エグゾーストフラップを備えている。
コックピットでは、新機能のトラックスクリーンを採用した。スイッチを押すだけで、中央のレブカウンターの左右にあるデジタル表示を、タイヤ空気圧インジケーター、油圧、油温、燃料残量、水温などのサーキット走行に必要な情報表示に変えることができる。レブカウンター左右のカラーバーによるビジュアルシフトアシストと、モータースポーツ由来のシフトライトも含まれている。
◆イタリア・ナルドでの高速テストで耐久性を確認
ポルシェは、この新型911 GT3の欧州での納車を、5月に開始する予定だ。同時に、新型の開発の舞台裏も明らかにした。エアロダイナミクスに関しては、約700回のシミュレーションを行い、風洞施設での微調整に160時間以上を費やしたという。新型の空力コンポーネントはレーシングカーで使用されているものと似ているため、開発手法も同様とした。
また、エンジンの開発テストには、2万2000時間以上を費やした。開発テストでは、繰り返しシミュレーションを行い、多くの時間、エンジンをフルスロットルにして走行テストに取り組んだ。レーシングカーの911GT3カップのエンジンとは、排気システムとエンジン制御ユニットの2つのコンポーネントだけが異なり、他は同じという。
また、排出ガスに関する厳格な基準を満たすために、開発中に600回の排出ガス試験を実施した。エンジンの耐久性に関しても、厳しい基準を適用した。イタリア・ナルドのテストコースでは、給油のための停止を除いて、5000km以上に及ぶ連続走行を実施。300km/hの一定速度で走行し、動作を確認した、としている。