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自動運転実証に挑んだ自治体、本音と展望を語った…SIP地域サミット
いま国内各地の自動運転分野は、どんな課題を抱え、どこをめざしているか。国家プロジェクトである戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期自動運転(システムとサービスの拡張)は3月25日、「未来を変える自動運転ショーケース」地域自動運転サミットを開催。
「地域の問題解決」と題したパネルディスカッションでは、島根県飯南町地域振興課の長島淳二課長、同町道の駅「赤来高原」の木村和子駅長、福井県永平寺町総合政策課の山村徹課員、秋田県上小阿仁村移送サービス協会の荻野芳紀代表、同村石上久美子自動運転運転手、沖縄県北谷町企画財政課の仲松明課長、滋賀県東近江市道の駅「奥永源寺渓流の里」の小門信也駅長、SIP自動運転推進委員会の岩貞るみこ構成員が登壇した。
これまで島根県飯南町、秋田県上小阿仁村、滋賀県東近江市は、道の駅を中心とした国土交通省リードによる自動運転実証事業で、福井県永平寺町と沖縄県北谷町は経産省リードの自動運転実証事業を重ねてきた。
◆アトラクションや放課後の教室のような使い方も
共通するのは、自動運転実証用車両がヤマハ製カートを使用している点。また共通の課題は「いかにサスティナブルに自動運転モビリティを継続できるか」「採算性、収益性をどう組み立てるか」さらには、「人の移動だけではなく、ほかの活用ができないか」などが出た。
島根県飯南町は、“最新技術を体験するアトラクション”として、子どもたちに自動運転カーに乗ってもらうという機会を創出した。「大都会で動いている自動運転を、田舎の子どもたちに体験させて、将来エンジニアをめざすようなきっかけにもなれれば」と飯南町の木村駅長はいう。
福井県永平寺町は、飯南町とは違う狙いがある。自動運転コースの途中にある小学校は、少子高齢化で子どもの数も少なく、集団登下校のときも数が少なく、不安を感じていた。そこでこの自動運転カーに乗って、安全性や防犯性などを確かめた。
「路線バスよりも所要時間がかかるので、自宅に帰ってから遊ぶ時間が短くなるという子どもがいれば、路線バスと違い、自動運転カートの中だから遠慮せずいろいろ会話しながら友だちと帰れたという子どももいた」(山村課員)
◆地域にあったルールづくり、遠隔通信のシステム化も要る
また聴講者からは「行政と運行事業者との関係性構築はどうしているか」「どこが主体となって動かすか」といった質問に東近江市小門駅長は「もともとは国交省や東近江市、住民のみんなが『こんなのできるかな』という思いで取り組みはじめたが、経験を重ねていくうちに『われわれにもできるんだな』という姿勢に変わった。一体感が生まれたことを実感している」と話していた。
「子どもたちに、自動運転の将来をディスカッションしてもらい、自分ごととして考えるきっかけをつくった。子どもたちのリアルな意見、たとえば『スピードが遅い』『公道を走る車両とのバランスなどをみんなで共有できればいい』といった子どもたちの感想を受けて、技術の高度化のほかに、地域にあったルールをつくることも大事だと感じた」(北谷町仲課長)
また車両の無人・有人について福井県永平寺町は「ドライバーもいないうえに、停留所にも人がいない。走路にも人がいない。乗りたいという人がちゃんと車両に乗れるまでの案内がまだ足りない。どこでクルマを待てばいいか、どうやって乗るかなどを伝える仕組みを今後つくっていきたい。遠隔カメラや通信マイクを組み合わせてシステム化して解決していきたい」とも話していた。
◆これから自動運転実証実験に挑みたい市町村へ
さらに、自動運転カートなどが普及した場合、ルートを引くさいにさまざまな要望も出てくると見込み、そうしたニーズにどう対応するかについても議論した。
「診療所を経由するルートを引いたのに、実証実験中にその診療所が消滅してしまった。事前にそうした病院や公的機関といったスポットの継続性も確認すべき」(島根県飯南町)
「民間事業者といっしょに公共空間を活用するというルールでルートを引いてきたなか、今後はさらに交通弱者にむけて、公共交通空白地に走るコミュニティバスと自動運転カートが連携したルート取りも考えていきたい」(沖縄県北谷町)
最後に聴講者から「うちの自治体でも自動運転実証実験をやりたいがどこに連絡すればいい?」という質問には、SIP 岩貞るみこ構成員が「各地に国土交通省の地方整備局がある。北海道は開発局、沖縄は総合事務局がある。出先の国道事務所がある。道を使う場合は警察の道路使用許可が要る。都道府県などの自治体によってはワンストップサービスもある。そうした窓口を活用してほしい」と伝えていた。