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埼玉県初、渋沢栄一の深谷市に自動運転路線バス…埼玉工業大学教材が21条認可を受け実現
渋沢栄一が生まれ育った深谷市に、埼玉県初の自動運転路線バスが走りはじめた。その名も「渋沢栄一 論語の里 循環バス」。車体は埼玉工業大学の後付け自動運転システムを搭載した日野『リエッセ』ベースの研究開発・教材を1年間の期限付きで採用、路線バスむけに更新した。
運行初日の2月16日には「渋沢栄一 青天を衝け 深谷大河ドラマ館」(深谷市)で出発式が行われ、埼玉工業大学 内山俊一 学長、大河ドラマ『晴天を衝け』深谷市推進協議会の村岡正巳会長、深谷市の小島進市長、深谷観光バスの高田勇三社長、埼玉工業大学の渡部大志教授、そして路線バスを認可した国土交通省埼玉運輸支局の担当者らがが駆けつけ、その走りを見届けた。
◆21条認可、11バス停26kmを自動運転レベル2で走る
埼玉工業大学 自動運転AIバスを路線バス仕様に仕立てた「渋沢栄一 論語の里 循環バス」は、営業用車として緑ナンバー(一般貨物自動車運送事業許可)を取得。道路運送法「21条許可」の認可を受け、深谷駅北口や岡部公会堂、道の駅おかべ、渋沢栄一記念館、大河ドラマ館など、合計11か所の停留所を結ぶ循環ルート26kmを、自動運転レベル2で走る。
21条認可とは、「運行する期間が1年以下で、イベント客の輸送、スキーバス、帰省バス、鉄道の工事運休にともなう代替バスなどがこの認可に該当する」(国交省 担当者)という。今回の「渋沢栄一 論語の里 循環バス」も1年間の期限つき運行で、2022年1月10日まで走る予定。
今回の路線バス化にむけ、埼玉工業大学 自動運転AIバスに前面行き先表示や後部乗降中表示、車内アナウンス機能などを追加。自動運転システム開発のリーダーを務める埼玉工業大学 情報システム学科 生体認証研究室 渡部大志 教授は、こう話す。
「自動運転システムの中身は変えていない。停留所へ自動で発着させるアルゴリズムなどは、内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期の羽田空港実証実験からさらに更新し、精度をアップさせている」
◆特別な操作や技術が要らず、誰でもすぐに乗務できる
運行は、地元・深谷市の深谷観光バスが受託。同社に所属する乗務員19人(うち女性1人)のすべてがこの自動運転路線バスを運転する。
渡部教授は「運転手へのトレーニングは、マッピングや適合走行時にいっしょにトレーニング。半日で操作方法を覚えられる。特別な操作や技術が要らず、誰でもすぐに乗務できるところが、この埼玉工業大学の後付け自動運転システムの優位性」とも伝えていた。
「一般の路線バスは、運転席の右につくボタンを押すと、次の停留所の案内が流れる。それと同じ仕組みで、ボタンを押すと案内のほかに次の停留所までの自動運転ルートがセット・更新されて自動で走るというシステムも開発していきたい」(渡部教授)
◆八ッ場ダム水陸両用バスの自動運転にも技術移植、課外授業も
また、八ッ場ダムで運行が始まった水陸両用バスに、遠隔操作・自動運転システムを載せる開発も、埼玉工業大学が担う。「この自動運転AIバスでいろいろテストして、八ッ場ダム水陸両用バスに移植する」(渡部教授)。
深谷市にある埼玉工業大学と深谷観光バス、そしてNHK大河ドラマ「青天を衝け」の舞台で渋沢栄一のふるさと深谷市の、3者が組んで走らせる自動運転路線バス。1日乗車券は大人500円・子ども250円。「この路線バスに埼工大の学生を乗せて、大学の課外授業も計画している」という。
埼工大 内山学長は出発式で、「深谷の大学・企業・自治体がいっしょになって、深谷で埼玉県初の自動運転路線バスが走りはじめたことは、たいへん意義深い」と伝え、その走りを見守っていた。