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ADAS/自動運転用センサ世界市場、2025年には82.4%増の2兆4808億円に成長 矢野経済調べ
矢野経済研究所は、ADAS/自動運転用キーデバイス・コンポーネントの世界市場の調査を実施、その結果を「<スマートシティ> 2020 ADAS/自動運転用 キーデバイス・コンポーネント」にまとめた。
調査は国内外の自動車メーカ、カーエレクトロニクスメーカ、半導体メーカ、センサメーカ等を対象に、2020年7月~9月の期間、同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリングならびに文献調査を併用して行った。
2019年におけるADAS/自動運転用センサの世界市場規模は、メーカ出荷金額ベースで1兆3602億円に達しており、2017年から拡大基調が続いている。AEB(自動緊急ブレーキ)の標準搭載が日米欧各国で進んでおり、中国でも急速に搭載車種が増加している。このため、車両の前方を検知するレーダ(77GHzミリ波)やセンシングカメラの出荷数量が拡大。2019年におけるレーダの世界市場規模は4608億円、カメラは8086億円だった。
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、世界の新車販売台数が大幅に落ち込むために、日米欧中各国のADAS搭載車両の市場規模も縮小。特に減少幅が大きいのが欧州、米国で20%以上の落ち込みとなる見込み。このため、2020年のADAS/自動運転用センサの世界市場規模は、前年比18.3%減となる1兆1112億円になると予測する。
2019~2020年にかけての注目トピックは「3眼カメラ」「CIS(CMOSイメージセンサ)の高画素化」の2点。3眼カメラは視野角(FOV)52度の標準カメラに、望遠カメラと広角カメラを1モジュール化したもの。2019年に市場投入された自動化レベル2+車両に採用されている。望遠/広角カメラを追加することでカメラの検知範囲が格段に広がり、先行車両の加減速やカットイン(割り込み)、道路形状を早めに認識することでスムースな加減速と自動操舵によるハンズオフ実現に寄与している。
一方、CISの高画素化については、1.7MピクセルCISを採用したセンシングカメラの搭載が始まっている。従来の1.3Mピクセルから1.7Mピクセルに高画素化することで、FOV52度から100度に広角化。交差点におけるAEB機能を実現している。さらに、2Mピクセルを搭載したステレオカメラの採用も始まり、今後は実現する運転支援機能や、車両セグメント/グレードに応じて、CISの高画素化とカメラタイプの使い分けが加速する見込みだ。
将来展望については、2025年のADAS/自動運転用センサの世界市場規模は、メーカ出荷金額ベースで2019年比82.4%増の2兆4808億円に成長すると予測する。2020年は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の影響を受けて一時的にマイナス成長となるが、2021年からは回復基調に戻る。2025年に向けてADAS装着率は日米両国が90%、欧州80%、中国で70%を超えるために、ADAS用レーダ、センシングカメラの出荷数量が堅調に推移する見通しだ。
また、自動化レベル2+の搭載車両の拡大がセンサの市場規模拡大をけん引する。レベル2+の高速道路限定ハンズオフ機能の採用が高級車を中心に始まっており、これから2023年にかけて主要自動車メーカにて市場投入が活発化。レベル2+ではハンズオフを実現するために、フロントに長距離レーダ、センシングカメラを配置するだけでなく、前後左右に短距離レーダを搭載してフロント/リアの検知範囲を広げている。このため、レベル2+搭載車両の拡大が、短距離レーダの出荷数量を押し上げる。2024~2025年にかけては、CMOSプロセスによる短距離レーダのコストダウンが進むために、レベル2+は低速ハンズオフを中心に中級車まで設定車種が拡大する見込みで、2025年におけるレーダの世界市場規模は同84.6%増の8505億円に達すると予測する。