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自動運転レベル3相当の実証実験で直面する課題、大学発自動運転ベンチャーが語る
大学発の自動運転ベンチャーは、いまどのあたりを走り、どんな課題に直面しているか—。
埼玉工業大学発の自動運転ベンチャー「フィールドオート」は、損害保険ジャパン日本興亜などによる自動運転車(レベル4相当)の遠隔監視・操舵介入の公道実験(都内 9月27日)に参加。交通量の多い都内の青梅街道で、埼玉工大の自動運転実験車(レベル3相当)を走らせた。ティア4の受託という位置づけで、今回は、東京西新宿の損保ジャパン日本興亜本社ビルから、中野坂上のハーモニータワー(プライムアシスタンス本社)まで、青梅街道を1.5km、自動走行した。
今回の実証実験では「運転手が運転席に乗っていない自動運転車両(レベル4)を、遠隔地の運転手が監視、緊急時に介入する」という実験と、「4台の自動運転対応車両、うち2台は運転席の運転手が緊急時に介入する自動運転走行(レベル3相当)、が公道走行し、遠隔地で監視する」実験という2つの内容が実施されたが、今回、埼玉工大発ベンチャーのフィールドオートはレベル3相当の走行実験に参加した。
この実証実験を経て、フィールドオート社長で埼玉工業大工学部情報システム学科の渡部大志教授は「青梅街道は、埼玉工大周辺の深谷や、お台場の道路状況とはだいぶ違った。さまざまな調整を経て、本番では他車両の流れに乗って安全に自動運転走行できた。その過程で、ティアフォー関係者と共同で実験しながら教えてもらったことがいろいろあった」と語る。
●公共駐車場の出入口バーが開かない!
「大学がある地元・深谷では、20km/h程度でトラクターといっしょに走っていても交通障害にならないレベル。でも交通量の多い青梅街道ではそうはいかなかった。他車両と歩調をあわせながら40~50km/hで走らないと交通の妨げにもなる。また右からも左からも車両すれすれの距離でオートバイに追い抜かれたりしてヒヤッとする場面も」
「また、地元・深谷のようなのどかな田舎道とは違い、車間距離や障害物までの距離はより緻密にしないと、どんどん間に割り込まれてしまう。今回は、深谷やお台場の平地と異なり、駐車場エリアを含めてかなり高低差があった。上り坂では(アクセルの)ストロークが不足して車間距離が長くなったり、下り坂では車間距離が短くなったりする傾向が見られた」
「さらに、田舎道を走ってるときは障害物までの距離も余裕をもたせて設定しておけば安全は確保できるけど、その設定のままだと、都心のコインパーキングなどにある出入口バーを認知した場合、かなり前でクルマが停止してしまい、バーが開かないという事象もあった。こうしたあらゆるケースに対応できるよう、プログラムを書き換えて、現場で安全に走行できるようにしていった」
「今回の実証実験で、こうしたケースを想定した修正はできた。でも突貫工事の印象もややあって、まだ市販のACC車のような滑らかな乗り心地ではない。このあたりはまだまだ改善の余地がある。でも今回、交通量の多い青梅街道で、安全に自動運転できたのは手応えを感じた。地元・深谷の道ならば、どこでもすぐに自動運転モードで走れるかもしれない」(渡部教授)
●地下駐車場からなかなか公道へ出られない!
自動運転ベンチャー「フィールドオート」の渡部教授は、今回の青梅街道での自動運転(レベル3相当)実証実験でみえてきた課題をこう語る。
「実は今回、必ずしも解決にいたらない問題もあった。現在のプログラムは、安全サイドに立っているので、近くに人がいるといつまでも発進できない。そのため、地下駐車場では人の行き来も多く、そこからなかなか公道へ出られないという事象もあった。こうした地下駐車場のような場所では、当面、自動運転車が警備員の誘導に従って走行する必要があるかもしれない」
「たとえば今後は、自動運転車からクラクションを鳴らすとか、または人がアイコンタクトなどを取りながら運転するように、自動運転車もじわりじわりと前進できるできるように、自動運転車両のAI(人工知能)がほかの人やクルマとのコミュニケーションをとりながら運転できるようになるといい」
渡部教授は最後に、「今後も、こうした産学連携による共同実験に参加しながら、AI人材教育と研究を継続しつつ、より実践的な経験を重ねていきたい」と話していた。