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自動運転、2030年代はレベル3以上車両が本格普及へ 富士キメラ総研

富士キメラ総研は、2021年以降の拡大が期待される自動運転車の市場(生産台数ベース)を調査。その結果を「2020 自動運転・AIカー市場の将来展望」にまとめた。

◆2045年、レベル3車両は4000万台超に

自動運転車両の世界市場については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響により自動車生産台数の減少が予想されるため、2020年はレベル2以上の自動運転車両の伸びも鈍化するが、2021年以降はレベル2車両を軸に大幅な伸びが予想され、2045年にはレベル2以上車両の市場は1億3552万台が予測される。

2020年時点ではレベル2車両の普及が進んでいる。レベル3(条件付き運転自動化)以上の自動運転車両の実現には自動車技術に加えて、関連法律やインフラの整備に時間を要することから、当面はレベル2車両が市場をけん引すると予想される。

2025年には、レベル2車両は4766万台が予測され、中でも、車線変更サポートや限定条件下でのハンズフリー機能が付随した高機能レベル2の比率が10%を超えるとみられる。また、高速道路限定のレベル3車両が各自動車メーカーから投入され、タクシーなどではレベル4(エリア限定運転自動化)車両も登場するとみられる。

2035年には、レベル2車両が高機能車両を含め、堅調に伸びるのに加え、高速道路限定走行ではあるがレベル3車両の需要が増加するとみられる。また、レベル4/5(完全運転自動化)車両はタクシーやMaaSでの活用だけでなく、市販車でも一部で展開されると予想される。

2045年には、レベル3車両は4000万台を超え、高速道路だけでなく、市街地走行できる車両も増加すると予想される。レベル4/5車両も2000万台を超えるとみられる。レベル2車両は7000万台程度で推移し、高機能車両が8割を占めると予想される。

◆レベル3以上車両、日本は法整備の遅れがネック

自動運転レベル3以上車両のエリア別市場については、当面、普及推進に積極的に取り組んでいる欧州が市場をけん引するとみられる。2020年代は、欧州に加え、中国や北米でも普及が徐々に進み、2030年代前半にはレベル3以上車両の市場は1000万台を超えるとみられる。

日本は、法整備の面で欧米に比べて遅れているため、レベル3以上車両の市場は2020年代前半まで低水準で推移すると予想される。一方、2020年に高速道路限定走行が前提ではあるものの日本自動車メーカーからレベル3車両が発売されるとみられ、市場拡大の足掛かりになることが期待される。レベル4以上車両はインフラ整備や法整備などの課題があるため、2030年代に入って本格的に市場投入されると予想される。

欧州は、政府や消費者の環境保護への要求が高く、自動車メーカーはEVやPHVの展開を強化するとともに、自動運転車の開発にも積極的に取り組んでいる。アウディがレベル3車両を2017年に市場投入、また、レベル4車両についてもVWグループやBMW、ダイムラー、ボルボなどが他地域の自動車メーカーに先んじで2020年代前半に製品化を行う計画であり、レベル3以上車両の市場は当面は欧州がけん引するとみられる。欧州自動車メーカーは、自動運転車やEV、そして、MaaSを同時に普及させることで、従来のディーゼル車販売を中心としたビジネスから置き換わる新たなビジネスモデルの構築を進めている。

北米は、移動手段として自動車が主体であり、自動運転車のニーズが高く、早期のレベル3以上車両の市場形成が期待される。都市近郊道路では自動運転車両に対応したインフラ整備は難しいものの、州間高速道路やUSハイウェイは道幅が広く、ユーザーの運転距離も長いため、レベル3以上車両が普及しやすい環境にあり、長期的には需要が高まると予想される。また、WaymoやUber、Lyftなどの大手MaaS事業者がサービスを展開しているエリアであり、GMやフォード、テスラなどの米国自動車メーカーはレベル4車両を利用したMaaSへの注力度を高めている。

中国は、次世代技術に対して官民共に積極的に取り組んでいる。EVについては補助金政策が行われており、AIについてもBaiduなどのITメーカーが積極的だ。「雄安新区」をはじめ、自動運転を前提とした都市開発が一部で行われるなど、政府主導の積極的な取り組みが進められており、2045年にはレベル3以上車両の最大エリアになるとみられる。

その他地域は、東アジアや、インドや東南アジアなどの新興国で自動車の需要増加とともに、2030年以降に急激な市場拡大が予想される。

◆高機能レベル2車両、2045年には5706万台まで拡大

レベル3車両の早期実現が困難となる一方で、レベル2の高機能化が進展している。現状、レベル2の車両の多くはAEB(衝突被害軽減ブレーキ)やACC(車間距離制御装置)、LKA(車線維持走行支援)の機能を備えるが、加えて、車線変更支援や限定条件下でのハンズフリー機能などを備えた高機能レベル2車両が登場しており、それらの車両の早期普及が期待される。

高機能レベル2車両は、センシング機器を多く使用し、また、複雑なセンサーフュージョンに対しADAS-ECUに搭載する半導体にも処理能力の高いSoCが搭載されることから、システムコストが高くなるため、2020年時点では高級車種のみへの展開に留まっている。しかし、フロント単眼カメラやミリ波レーダーの普及に伴うシステムコストの低減により、幅広い車種での高機能レベル2車両の展開が期待され、2025年の高機能レベル2車両の市場は487万台が予測される。

また、高機能レベル2車両は、レベル3車両でほぼ必須となるLIDARをはじめとした高価格製品が必ずしも必要でないことから、比較的低価格化が実現しやすいため、2025年以降は急速に普及するとみられる。2045年の市場は5706万台が予想される。