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アルファロメオ・スプリント、70年の歴史…2ドアクーペ[フォトヒストリー]
FCAジャパンは、アルファロメオのスポーツサルーン『ジュリア』、SUV『ステルヴィオ』にエントリーグレード「スプリント」を設定し、10月3日より発売する。“スプリント”と聞くと古いアルフィスタはむずむずする。
近年のスプリントは各車種のエントリー仕様に用いられるサブネームだが、かつては2ドアクーペに用いられていた名称で、その歴史は古く、長い。
●1900スプリント
アルファロメオは1950年に『1900』(セダン)を発表、戦前のエキゾチックカーメーカーから、市場の拡大を図る。1951年に追加された2ドアクーペの「1900スプリント」が最初のスプリントだ。セダンよりホイールベースが短い「1900C」シャシーを用いているので「1900Cスプリント」という表記も見られる。続いて上級仕様の「1900スーパー・スプリント」も設定された。
●ジュリエッタ・スプリント
アルファロメオの量産車メーカーへの転換を成功させたのが、1954年発表の『ジュリエッタ』だ。1900より小型軽量のジュリエッタは、まずクーペの「ジュリエッタ・スプリント」から発表された。デザインはコーチビルダーのベルトーネだ。
ジュリエッタ・スプリントは「ジュリエッタ・スプリント・スペチアーレ」、「ジュリエッタ・スプリント・ヴェローチェ」と、バリエーションを展開していく。車体を軽量化してエンジン出力を増強したジュリエッタ・スプリント・ヴェローチェは1957年に登場する。発売前の1956年ミッレミリアで総合11位に食い込んで注目を集めた。
量産車のプラットフォームに、顧客の求めに応じた車体を架装することは、当時はまだ普通だったが、そういったコーチビルダーにアルファロメオと同じミラノに本拠を置くザガートがある。ジュリエッタ・スプリント・スペチアーレをベースにした「ジュリエッタSZ」(SZ=スプリント・ザガート)は、1959年からカタログモデルとなった。「1.3リットル・グランツーリスモ」カテゴリーに対応した軽量・高性能仕様だ。
SZの後期型は「カムテール」あるいは「コーダトロンカ」と呼ばれる、空力特性向上のために車体後端を平面で切り落としたようなデザインになった。前期型が80台、後期型が30台作られたという。
●2000スプリント、2600スプリント
上級レインジの1900は『2000』、『2600』とモデルチェンジ、それぞれ「スプリント」がラインナップされた。1962年に発表された2600スプリントは、その警察仕様「パンテーラ」が人々の印象に残っているようだ。1900シリーズに設定されて以来、いっぱんに州警察仕様バトカーが「パンテーラ」、カラビニエリ(国家治安警察隊)仕様パトカーが「ガゼッラ」のあだ名で呼ばれるようになり、中でも2600スプリント・パンテーラは人気があるようだ。
●ジュリア・スプリント
ジュリエッタの後継車として『ジュリア』が登場するのは1962年、今度はセダンから発表された。スプリントは、「ジュリエッタ・スプリント・スペチアーレ」の1.3Lエンジンをセダンと同じ1.6Lに換装、車体はそのまま「ジュリア・スプリント・スペチアーレ」に車名を変更して販売された。「ジュリア1600スプリント・スペチアーレ」の車名もあり、若干の混乱が見られる。
ジュリア・シリーズの最初のスプリントが1966年発表の「ジュリア・スプリントGT」だ。1.3L系との識別のためか、「GT」が付けられた。GTのボディを形状はそのままにアルミ製にして軽量化を図ったのが1965年発表の「ジュリア・スプリントGTA」だ。Aはalleggerita=軽量化された、の意味。翌1966年のジュネーブモーターショーで今度は「ジュリア・スプリントGTV」が発表される。VはヴェローチェのVで、レースを前提としたGTAに対し、その公道仕様とも言える。GTAもGTVもアルファロメオ伝統の車名となった。
●アルファスッド・スプリント
70年代にアルファロメオは大衆車の『アルファスッド』を世に送り出す。“スッド”にもスプリントは設定された。標準仕様にも2ドアクーペは設定されていたが、同じ2ドアクーペでもスプリントのデザインは別物だ。
近年は車形にかかわらず、各車種のエントリー仕様をスプリントと呼んでいるが、このように、もともとは基本形のセダンに対し、2ドアクーペをスプリントと呼んでいた。各種派生形の出発点となることが多かったから、その意味ではエントリーモデルと言えるかもしれない。