注目の自動車ニュース
マツダ、新型コロナウイルス感染症患者の搬送車両を開発
マツダ株式会社は、新型コロナウイルス感染防止に向けた支援活動として、新型コロナウイルス感染症の軽症患者や無症状の病原体保有者等を搬送する車両を開発。6月5日に広島県に9台の車両を提供した。この発表に伴い同日、オンライン説明会が開催された。
説明会には、株式会社マツダE&T 常務執行役員・内藤久佳氏、マツダ株式会社商品戦略本部長・本橋真之氏が登壇。まずは本橋氏が開発コンセプトについて発表を行った。
「この車を開発するにあたり重視した部分は、大きく分けてふたつある。緊急性と社会貢献性の2点だ。緊急性についてはマツダグループが保有する技術や設備、人材を結集させて行政の要望に迅速にこたえること。そして社会貢献性については、医療従事者や患者等を支援し、困っていることを解決するための取り組みであるということだ」
「車両開発の際には開発者たちだけでアイデアを出すのではなく、実際に保健所などに出向き、現場での決まり事などをリサーチした上で開発に役立てた。また、社会貢献という部分については、広島県が設置した医療・経済支援のために設置した寄付金窓口から、1台販売されるごとに10万円を寄付させていただいている」と語った。
車の仕様については、車内空間の広い『CX-8』をベースに、前席と後席の間に隔壁を設け、医療従事者が座る前席を正圧、患者が座る後席を負圧にする空調システムを設け、感染リスクを下げる役割を果たす仕様になっている。
また車の使いかたなどもマニュアル化し、販売店、使用者様にもしっかりと説明し安心して使っていただけるようにすることも命題としているとのこと。
続いて内藤氏から、車両開発についての説明が行われた。マツダE&Tは、もともと福祉車両などを手がける会社のため、その開発技術をいかして今回の車は製作されているという。まずは広島県や医療関係者の要望をまとめて、それらを解決するための仕様を策定した。
要望については4つ。ひとつ目は、搬送者の快適性の確保、ふたつ目は、運転手の後方視界の確保。3つ目は、患者との会話の頻度が高いため隔壁越しでも会話できるシステムの構築。4つ目は、前席と後席の圧力差がわかるシステム。
快適性については、車両内が広いCX-8を使用。隔壁についてはFRPを使って成形し、空調システムについては、3Dプリンターで製作したダクトなどを使用。後席側に設置されている排気システムにはHEPAフィルターを設置するなど、医療関係者からの意見を取り入れた設計になっているそうだ。前席には圧力差がわかる差圧計を配置し、前席と後席の会話用にワイヤレスの通話システムも搭載できるようになっている。患者搬送車としての使用が終了した場合は、隔壁を外し公用車として利用できる用にもなっているとのこと。
価格については仕様によって異なるため発表していないが、車両本体価格と、隔壁など架装費用については最低限の費用としてプラスする程度で、販売される。また架装の期間については、部品などが調達できていれば、最長でも1か月程度、仕様によってはもっと早く完成できるとする。