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【ホンダ フィット 新型】単眼カメラとなったホンダセンシング、その実力を体験した

新型ホンダ『フィット』は全グレードに「Honda SENSING」を標準装備にした。全車速追従クルーズコントロールも実現するなど、時代に則った最先端の予防安全性能となっている。その実力を、試乗を通して体験した。

◆「カメラ+ミリ波レーダー」から「広角化した単眼カメラ」へチェンジ

これまでHonda SENSINGは基本的に、フロントウインドウに備えた単眼カメラとフロントグリル付近にセットしたミリ波レーダーの組み合わせとなっていた。それぞれの得意分野を活かすことで高精度な検知能力と制御を実現することとなり、ホンダはこの考え方を軽自動車にまで幅広く採用していた。

新型フィットはこの考え方を大きく転換。センサーの視野角を従来の50度から100度へ拡大した単眼カメラに加え、前後の超音波センサーを組み合わせてセンシングする方式へと変更したのだ。

超音波センサーは、壁などを検知した際の近距離衝突軽減ブレーキや後方誤発進抑制機能のためにつかうのが基本だが、走行中は他車両が近づいてきた際にもこのセンサーを組み合わせて活用する。加えて、広角化したカメラによって、これまで難しかった、左右の車線から割り込みされた時の制御も可能としたのだ。

ホンダによれば広角化した単眼カメラはフランスのヴァレオ製で、車両前方の広範囲な対象物を検知できることを最大のメリットとする。ただ、広角化したことは光学的に考えれば、遠くの像は小さく映ることになって、遠方の対象物を捉えにくくなる。そこでセンサーの解像度を上げて対応するわけだが、それを単純に実行すれば処理するデータ量が増えてしまい、より高性能な画像処理チップの採用が不可欠だ。

そこでホンダが解決策として採用したのが、イスラエルのモービルアイ製の最新画像処理チップ「EyeQ4」だ。

EyeQ4は日産が「プロパイロット2.0」の3眼カメラにも採用したものとしても知られる。ホンダはこの技術を使うことで、水平視野角を大幅に拡大しながらも安定した追従に成功したのだ。これにより、右折時の認知能力拡大へにもつながり、従来なら検知できなかった右折時の対向車やその先で横断している歩行者を検知できるようになった。

また、同じ車線上を走行している先行車だけでなく、対向車線の車両も検知して自動ブレーキを動作させることにも対応した。これまでのHonda SENSINGでも対向車線へのはみ出しについては回避制御を実現していたが、今回ははみ出した際にドライバーが回避操作を行わないと自動的にブレーキを動作させる。さらに加減速の制御アルゴリズムを徹底的に見直すことで、ACCの動作ラグを短くして自然な追従を可能としたという。

◆制御の巧みさに脱帽。単眼カメラの不安はほぼ払拭されていた

新型フィットのe:HEVを試乗すると、アクセルを踏み込んだ途端、力強い加速でスタート。モーターならではの力強いトルクで反応してくれ、これには従来のハイブリッドをはるかに超えたリニアリティを感じた。その思いを抱きつつ高速道路へと入り、ACCの動作状況を試すことにした。

ACCを動作させるには、ステアリングにあるACCスイッチを押して、走行したい速度に達したときに「SET」ボタンを押す。これでACCでの走行が可能となる。設定の上限は135km/hまでで、120km/hの制限速度にも対応した。

レーンキープアシスト(LKAS)をONにした際の白線の認識力は高く、緩やかなカーブなら車線内の中央をほぼ正確にトレースしていく。その応答性はかなり良好と言える。

ACCでは車間を3段階に切り替えられるが、これを最も車間が短いモードを選ぶと先行車にグッと近づきつつも、先行車との車間はほぼ均一で走行。最も車間が長いモードで先行車を遠方で捉えると、若干、その車間にばらつきが見られたが、それでも不安を感じさせることなく追従できていた。

何よりも感心したのが、先行車に続いて停止した時。試乗コースでは渋滞に遭遇しなかったため、一般道の信号で停止する車両を捉えて試してみたのだが、先行車がスピードを緩めるとそれに追従しながら自動で停止した。

その制御が巧みで不安はまったく感じさせなかったのだ。それどころか、停止して最後にブレーキを緩めることでノーズダイブによる揺れ戻しをなくしている。この制御のはまるで経験のあるドライバーが操作しているかのようだった。これを踏まえると、単眼カメラだけでもかなりハイレベルな制御が行えていたと言っていいだろう。