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自動運転フォークリフトや安全機能標準装備化、トヨタL&Fが描く物流新時代
深刻な人手不足で、外国人作業員や女性・高齢者といった不慣れなオペレータが増える物流・倉庫の現場。そこで動き回るフォークリフトの安全性や自動化のトレンド、求められているニーズはなにか。
フォークリフトなどの物流機材を開発・製造するトヨタL&Fカンパニー(豊田自動織機)は、トヨタL&Fカスタマーズセンター東京(千葉県市川市)で自動運転フォークリフトや物流ロボットを公開。豊田自動織機 トヨタL&Fカンパニー水野陽二郎プレジデント、同R&Dセンター一条恒センター長、同国内営業部 小倉崇部長らが登壇。次世代物流機材や安全への取り組みなどについて説明した。
トヨタL&Fでは、10年後の物流現場について「すべての人とものがネットでつながり、AIで瞬時に判断される世界のなかで、物流は誰でも必要なときに必要なもの・サービスが受け取れる」とイメージし、「高度化したAIが、サプライチェーンを総合管制する無人化スマートロジスティクス時代になる」と予想。
このビジョンのもとで開発がすすむ自動運転フォークリフト『AGF』(Automated Guided Forklift)を公開。トヨタのAGFは、レーザーセンサとコネクテッド機能を搭載。従来の磁気テープをガイドにして走るタイプとは異なり、レーザーSLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自己位置推定とマッピングの同時実行)誘導式を採用。レーザでルートを決めることから、初期工事要らず、レイアウト変更が容易といったメリットをくれる。障害物検知範囲を拡大させ、遠隔操作も可能、スイッチひとつで搭乗・非搭乗を切り替えることができる。
このAGFは、センサが目、AIが頭脳になり、屋内と屋外で自動運転を実現。GNSSとLiDARで屋外を、ビジュアルSLAMカメラ画像で屋内を、自動で走る。またAIでパレットを認識し、高精度ARマーカーで荷役位置を把握する。
こうした技術が、実証実験中の自動運転ロボットフォークリフトや自動運転トーイングトラクターに活かされ、レーザーによる置き場認識、対象物を画像認識し経路生成・自動運転、ハイリフトローダ横まで自動で走り指定位置で停車するといったテストが物流拠点や空港で繰り返されている。
同社は2月19~21日に東京ビッグサイトで開催される国際物流総合展にも出展。SLAM式AGVや自動モバイルロボット『AiR-T』などを展示する。
◆速度管理機能などを最新モデルに標準装備化
またトヨタL&Fは、物流現場の環境変化に対応した機能追加も発表。深刻な人手不足に直面している物流現場はいま、外国人や女性、高齢者などの雇用が拡大し、不慣れなオペレータが増加。フォークリフトなどの操作も任され、誤操作・急停止・急加速・急旋回などによるトラブルや事故が頻発している。
こうした課題の解決にむけて、同社は、主力商品1.0~8.0トン積エンジンフォークリフト『GENEO』(ジェネオ)と1.0~3.5トン積電動フォークリフト『gene B』(ジェネビー)の一部モデルに、安全運転支援機能を4月1日から標準で搭載させる。
標準装備化する安全運転支援機能は、最高速度を管理者が設定した速度以下に制限する「速度管理機能」と、積荷の状態(揚高と荷重)を検知し車両の加速・減速を自動的に制限する「荷崩れ防止のための加速/減速制限機能」。
速度管理機能があることで、オペレーターは速度超過を意識せず、管理者も速度違反をチェック・警戒する作業から解放される。標準装備化対象車種はGENEO。gene Bにはすでに標準搭載されている。
また、加速/減速制限機能は、オペレーターが積み荷を高く上げたままの状態で、アクセルを急激に踏み込む(離す)、アクセルを踏み込んだままディレクションレバーを走行位置に入れる、といった誤操作を行った場合でも、加速/減速を制限することで安定した走行・作業を維持する。標準装備化対象車種はGENEOとgene B。
トヨタL&Fは、1998年から旋回時の安定性を確保する後輪スイングロック制御機能や、高揚高時のマスト角度を自動で制御するマストティルト制御機能などを主力フォークリフトに搭載。車両の転倒や荷崩れの防止をめざすトヨタL&Fの安全システム SAS(System of Active Safety)をさらに拡充させるという。