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ヤマハの「グリーンスローモビリティ」、あえて未完成でお披露目した理由
ヤマハ発動機は、国土交通省や環境省が推進する「グリーンスローモビリティ」(GSM)に対応したコンセプトスタディモデルを静岡・磐田市にある本社で報道陣に公開した。同社の電動ゴルフカートをベースに、地域住民の足やリゾート地での移動手段としての活用を想定しているという。
GSMは電動で20km/h未満で公道を走る4人乗り以上のモビリティと定義されている。ヤマハがこのほど公開したGSMコンセプトスタディモデルは、同社の3列シート仕様の電動ゴルフカートをベースに製作したもの。
開発を指揮する先進技術本部NV事業統括部LSM開発部の米光正典部長は「我々の車両は20km/h未満なのでゆっくりしか走れないし、航続距離も30~40km。だからラストワンマイルとか、限られたエリアで、ゆっくりだけどこっちの方が良いよねというような所でニーズを探していくうちに、既存の自動車に求められるサービスや性能とは違うものは何かということを考えて製作したのが、今回のモデルになる」と話す。
実際の製作にあたっては「ゴルフカートはゴルファーが使うのに最適化されたデザインで、実際に街で走らせるとちょっと違うぞというところが結構ある。街を走らせるのにベストなものは何かを探った」という。その結果、「人と人がつながるとか、会話が弾むということを目指し、今回このような提案をした」と米光氏は語る。
公開されたGSMコンセプトスタディモデルは屋根がなく、2列目シートの背面が可動式で3列目と対面できるようにもなっている。外装にはシート素材や地元の木材などがあしらわれているほか、内装にはガーベラやトルコ桔梗といった地元特産の花が飾られ、シートカバーには遠州綿紬やコーデュロイといった同じく地元を代表する素材が使われている。
デザイン企画を手掛けるデザイン本部の小川岳人氏は「できるだけカバーをしないデザイン。プラスチックは多用しないで、使っていくと味がでてくる素材だけで構築しようとしている。また乗っている人と歩いている人が話すといった低速、オープンならではの価値観も重視した」と語る。
さらに「最終的には屋根を付けたいと思っている」としながらも、「あえて未完成の状態になっている。今の時代、完成してから皆さんにお届けするのでは遅れてしまうと思っていて、地域の皆様とか、市町村の方と一緒になってモノづくりを今、進めている」とも話していた。