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【ホンダ フリード 改良新型】SUVテイストの「クロスター」、新スタイル提案もユーザーファーストは忘れずに

  • 《撮影 小林岳夫》
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ホンダ『フリード』のマイナーチェンジで、SUVテイストの外観をまとった新ライン、「CROSSTAR(クロスター)」が登場した。

といっても、いかにも悪路走破性が高そうなゴリゴリのSUVルックではなく、あくまで街中でも浮かないサラリとしたSUVテイスト、というところがフリード流だ。これを待っていた、という人も多いかもしれない。都心や近郊で気軽にアウトドアを楽しんだり、日帰りで子どもと自然体験をするといったシティ派ユーザーをはじめ、これまでのファミリーミニバンには抵抗がある、といった新たなユーザー層にもアプローチする。

◆5ナンバーサイズという価値を崩すわけにはいかない

クロスターの外観は主に、つや消しブラックのフロントグリル、アンダーカバー風のフロントバンパー、ルーフレールや新デザインのアルミホイールなど、クロスター専用パーツを採用。さりげなく力強さや遊び心がプラスされている印象だ。

開発責任者の田辺正氏に話を聞くと、現行モデルが出た時からSUVタイプを作りたいと考えていて、ようやく実現したとのこと。「本当は、SUVルックのお約束とも言える樹脂製のホイールアーチカバーもつけたかったのですが、それをつけてしまうと5ナンバー規格を超えてしまうことが判明しました。また、スライドドア開閉時にぶつからないよう、隙間を広げる必要も出てきてしまいます。悩んだ末に、やはりフリードのお客様には“5ナンバーサイズ”という価値が大きなものであり、そこを崩すわけにはいかないと判断しました」。

言われてみると確かに、樹脂製のホイールアーチカバーがあった方がよりSUVっぽさが強まるので、物足りないと感じる人もいるかもしれない。でも、駐車場のサイズや自宅に至るまでの道が狭い、といった事情でフリードを選ぶ人にとっては、5ナンバー規格を超えるその数センチが命取りになりかねない。見た目のキャッチーさをとるか、ユーザーの利便性をとるか。ユーザーを優先したことで、フリードらしさがさらにアップしたように感じる。

◆こだわりのホイールやルーフレール

「その代わり、専用のアルミホイールやルーフレールにはお金をかけてこだわりました」と田辺さんは続ける。アルミホイールはシルバーとブラックのツートーンデザインだが、よく見るとブラックがツヤ消しブラックになっている。これが通常のブラックより製作コストがかかるそうで、ツヤ消しのフロントグリルとのコーディネートやSUVらしさを出すために、あえて採用したものだ。

そしてルーフレールは、あくまでデザインの飾りという“なんちゃってルーフレール"を装着するクルマも多い中、クロスターにはアルミ製で耐荷重もしっかり備えたルーフレールが採用されている。これは、「アルミ製にするとお金はかかるんですが、お客様の安全性や使い勝手を考えた時に、たとえ荷物を積むことが少なくても、洗車をする時にここ(ルーフレール)を掴んで上るかもしれないよね、と開発チームで話し合い、しっかりしたものを装備することにしました」と田辺氏。「現時点で、ホンダ車でいちばん長いルーフレールになりました」と笑う。ここにもユーザー視点が込められている。

また今回のマイナーチェンジで全体的に上質感がアップしたインテリアでも、クロスターには専用のローズウッドパネル、デジタル柄でオレンジステッチの入った贅沢なシートを採用。このデジタル柄は、よく見るとカモフラージュ柄のような感じで、ここでもほんのりとSUVテイストが香るのが楽しい。

クロスターは開発の狙い通り、都会的な雰囲気をしっかり残しつつ、ちょっとアクティブな気持ちを盛り上げてくれる要素が散りばめられていた。でも見た目はサラリとしていても、実際にユーザーが使うシーンを想定した部分ではタフに作られているところが肝だ。ルーフレールはもちろん、なんちゃってのモーター4WDではなく、豪雪にも耐えうる本格的な4WDにこだわったところもそのひとつ。とくに、3列シートを持つハイブリッドの4WDはなかなか他にないので、求めている人は多いのではないだろうか。

「街中でキラリと光る存在に」との願いが込められているというクロスター。遊び心という新たな世界を提案しつつ、5ナンバーを死守したフリードは、やはりその徹底したユーザーファーストが大きな魅力なのだと再確認したのだった。