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ダイハツの DNGA エンジンは、タンブルとEGRを強化…ダイハツ タント 新型に搭載へ
今年7月に主力モデルの軽スーパーハイトワゴン『タント』のフルモデルチェンジを予定しているダイハツ工業。次期タントは、同社の新世代のクルマづくりの基盤技術であるDNGA(Daihatsu New Global Architecture)によって作られるモデル第一弾。デビューに先立ち、新しいエンジン、変速機など、仕様のアウトラインが公開された。
次期タントのエンジン型式は現行モデルと同じ0.66リットル直列3気筒DOHC「KF」型。シリンダーの直径とピストンの往復行程はそれぞれ63mmと70.4mmで、これも現行型と変わらずである。が、実際にはシリンダーブロック、シリンダーヘッド、水路など大部分が改設計を受けており、部品の流用は10%程度で、それもボルトやシールなど定型部品にとどまるなど、全面刷新に近い改良であるというのがダイハツ技術陣の主張だ。
自動車メーカー各社による軽自動車用エンジンの改良戦争は激しさを増しているが、最大の争点となっているのは言うまでもなく熱効率の改善。目下、改善のカギを握るとされているのはシリンダー内の吸気の縦方向の渦、すなわちタンブルを強化することと、排ガスの一部をシリンダーに戻して酸素量を減らし、ポンピングロスを削減する大量EGR。ダイハツの技術陣はその両方について性能強化を図ったという。
タンブル強化については、吸気ポートをストレートに限りなく近づけることで、ポートを細くしたりバルブ開閉量を絞ったりといった損失の要因になる手法を極力排しながら吸気の流速を稼ぐことができたという。実数は不明だが、ダイハツの示したグラフから推定すると、タンブル比(吸気行程で縦渦が何回りするかを表す数値)は2.8前後。それでいて流入係数(ポンピングロスの少なさを表す数値)はタンブル比が2を切るエンジンと同等の良さであった。
もう1点のEGRも、エンジニアによればかなり大量に行っているという。ガソリンエンジンはリーンバーンのように酸素を余らせると排出ガスコントロールが難しくなるため、通常は酸素が余らないように混合気を燃やす。その酸素が含まれていない排出ガスの一部を吸気ポートに戻すと、低負荷時に空気を吸い込む総量をスロットルボディで抵抗を発生させながら大きく絞らなくても酸素量をある程度コントロールすることができるのだ。
が、言うは易し、行うは難しというのが大量EGRというもので、排出ガスの還流量を増やすにつれて混合気を均一に燃やすのが難しくなり、ノッキング(異常燃焼)が起こりやすくなる。ダイハツはそれを防止するため、日本車の量産ガソリンエンジンとしては初めて、スパークプラグが1回の爆発あたり2発、火花を飛ばすマルチスパーク方式を採ったという。
そのほかにも損失低減のための小さな工夫がエンジンの隅々にめぐらされている。その結果、新KFエンジンの自然吸気版のピーク熱効率はおよそ35%、ターボ版は31%に向上したと、ダイハツのエンジニアは語った。非ハイブリッドでも40%ないしそれに近い数値が珍しくなくなってきた普通車用エンジンに比べると悪いように思えるが、車体が軽く、小さいため、この性能でも燃費は十分に稼げる。ちなみに現行の軽自動車のエンジンとしては、日産やホンダをしのぎ、効率ナンバーワンとダイハツのエンジニアは主張している。スペックは自然吸気が最高出力52ps、最大トルク6.1kgm、ターボが最高出力64ps、最大トルク10.2kgm。