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【ホンダ フリード 新型】「フリードらしいデザイン」とは? 新型で実現したデザイナーたちの挑戦

  • 《写真撮影 豊崎淳》
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ホンダは『フリード』をフルモデルチェンジし6月より発売する。2種類の個性あるボディタイプをラインアップする新型だが、そのエクステリアは、フリード最大の特徴であるパッケージや使い勝手の良さが一目で魅力的に伝わるようにデザインされたという。それをどのように実現したのか。デザイナーに聞いた。

◆フリードらしさとは「パッケージの良さやサイズ感」
エクステリアデザインを担当した本田技術研究所 デザインセンターの佐川正浩さんは、先代フリードのマイナーチェンジも手がけたという。「(マイナーチェンジで)フリードのお客様のことをよく知るようになったので、ぜひやらせてもらいたいと思っていました」と嬉しそうに話す。

「とにかくお客様のことを思い浮かべながら、その人に対してクルマを作ろうというのを一番においてデザインしました。デザイナーのエゴとかではなく、ちゃんと使ってくれる人に伝わるデザインにしたかったのです」

今回の開発メンバーの多くが年代なども含めてフリードのターゲット層にぴったりの人たちばかりだったそうで、「みんなまさに買うならこのクルマという人。僕もちょうど子供が幼稚園とか小学校入りたてぐらいです。ですから妻が乗って走っていても、その人に似合っていて、自信を持って優雅に走って、街中にあっても馴染んで、かといって個性が全くないわけではない、そういう姿を求めながらデザインしました」と話す。

佐川さんが思う「フリードらしさ」とは、「パッケージの良さやサイズ感」だという。デザイン的にも、「他にはないシルエットが初代からフリードしかない形でした。そこがフリードらしさ」。例えば、「運転しやすい視界の良さや、広い空間があるけれど、ギュッとコンパクトにまとまっていて。でも全体のシルエットはちゃんと前に向かって勢いがあって、街中でもすいすい爽快に走れそうなシルエット。そういうところをひとつひとつ紐解いて、それをオシャレに見えるように演出しています」と説明する。

同時に「灯体のデザインひとつとってもすごく機能的なところから考えています。はっきりしたシンプルな形がパッと光るとすごくハッとするでしょうし、何よりも気づきやすい。そのうえでちょっとした形や、配置で面白いデザイン、個性にしています。これが一番やりたかったところです」と話した。

◆「スタンスの良さ」と「硬質さ」
新型フリードのデザインにおけるキーワードが「スタンスの良さ」と「硬質さ」だ。その点について佐川さんは、「e:HEV(ハイブリッド)を搭載し、サスペンションなども調整が入りましたので、運転した時にすごくスーッとしっとりした感じで走れたんです。そこで体重のかかり具合とかも含めてその姿と同じになるようにしたいと思いました」と走りをエクステリアデザインでも感じさせたかったことを明かす。そこで、「現行よりももう少し低重心に抑えることで、しっかりしたスタンスを表現すれば地面と一緒に、平行に走るような感じになる。それを念頭に置いてデザインしました」とのこと。

また、リアから見た時のスタンスも、「台形ですが、一番下は内側に絞り込んでいますので、その分タイヤがちょっと見えてくるという姿。広い空間は確保しながら、上下を絞ってタイヤをしっかり見せることで(スタンスの良さを)実現しています」。同時に、コンビネーションランプの位置も少し下に下げることで低重心にも見せているという。

硬質さについても気を使ったそうだ。「デザイン自体をシンプルにまとめてしまうと安っぽく見えたり、商用車的に見えてしまったりすることがあるんですが、ひとつひとつの線をピシッと出すなど、入る線はなるべく形状に沿うようにすることで、工業製品としてカッチリ出来上がるように意識しました。家族の一台として使ってもらうクルマですので、良いものを買ったぞという気持ちには応えなければいけない。そこはすごく気を使ってやりました」と教えてくれた。

フリードにはヘッドライト後端からクルマをぐるりと一周する太いキャラクターラインが入っており、ここまで大胆なものはなかなか他社のクルマでも見ることはない。佐川さんは「勇気がいりました」と明かすが、これも「硬質さを出すため」。

「金属のプレスで凹凸をコの字で付けていくと強度を出すことにつながりますので、カッチリした感じが出るでしょう。また、ヘッドライトからずっと繋がるこの線上にドアハンドル、スライドレール、リアのライセンスガーニッシュに繋がっていますので、このライン上に全部部品を収めることで、全体を綺麗に仕上げようという意図があります」

そしてこのラインには裏話があり、「実はもともと1本の細い線だった」という。試作中にキャビンとボディとで分けてモデルを作った時に、キャビンはデータでモデル化し、ボディ側はクレイを削って行って、その二つを合わせた時に「偶然2本になってしまった」。「それを見てなんか面白いなと思って、そのまま太い線にしてデザインとして残したんです」と偶然の産物だったことを明かした。

◆同時進行でデザインされた「エアー」と「クロスター」
新型フリードには「エアー(AIR)」と「クロスター(CROSSTAR)」の2種類がラインアップされる。従来モデル以上に差別化が図られたように見えるが、デザイン上のこだわりはどのようなところにあるのか。開発当初から同時進行でデザインが考えられていたというが、実はそこに佐川さんのクロスターへの思いがあった。

「マイナーチェンジの時にクロスターを追加したのですが、(ベース車から)変えられる部分に限界があって悔しい思いをしたのです。そこで新型では全部やりたいことをやろうと思ったので、初めからキャラクターチェンジできるようにスケッチも常に両方をセットで描きながらやっていました」

その上でエアーは「視界の良さやユーティリティから考えていくと、止まった形になってしまうので、走りや動的な部分を両立させていくのがエアーで気を使ったところです」と佐川さん。もちろんクロスターも同様だが、よりそれらを強調して考えて仕上げていったのがエアーとのこと。

また、エアーのナンバープレートの右上には、小さな4本のスリット(開口部)がある。佐川さんによると、「e:HEVのラジエーターが左側についているんです。その分開口が多く必要でした。左右対称に穴をバッと広げるよりは、アクセントと機能両方兼ね備えた形で配置しています」と説明。因みにガソリンモデルも同じように穴が開いているのでそこでの区別はできない。

◆新型で実現したクロスターの「アーチプロテクター」
一方のクロスターは、「とにかく遊び尽くして、汚れてもかっこいいというのがひとつ。そしてどこかモダンな感じもあるというのは心がけました。エアーとの作り分けでは、大胆に下回りを黒にしちゃおうと。でもシルエット自体はすごくシンプルなんです。いろいろパーツが付いたり、色が変わったりしても遠目から見た全体のフォルムはすごく綺麗な塊のまま。実はそこにシルバーのガーニッシュを入れることで、ちょっと可愛いと評価する女性もいました。結構タフに作ったのに、そういう印象が生まれるのは綺麗な塊のままだからかもしれません」と説明する。

特にグリル周りは特徴的だ。「エアーのセンターにドカンと(グリルを)開けたのがクロスターで、より力強くしています。その真ん中をシルバーにすることで、このセンターの形をより強調しているという考え方」と佐川さん。同時に「金属のエンボスをいっぱい入れることで金属的な強さを出したい、エアーとキャラクターをガラッと変えて、“ギア”みたいな見え方をさせたいという意図です」。

最も佐川さんがこだわったのはアーチプロテクターだ。これこそマイナーチェンジでできなかったことだった。その理由は、「スライドドア部のインテリアのライニングと干渉してしまうから」。そこで、「早い段階からインテリア担当と話をして、もうちょっとだけスライド時の内装側を削ってもらえればアーチモールがつけられる、と相談しながら進めました」と話した。

◆悪目立ちせず、汚れても格好いいカラー
エアー、クロスター共に新たな色を採用するなどで、それぞれの個性を強調している。本田技術研究所 デザインセンター デザインCMF担当の三輪あさぎさんは、まずエアーのシーベットブルーについて、「この色は紺と青の中間ぐらいの色ですが、中間的な、中性的なところを狙っています」と話す。

フリードは初代からブルーがテーマカラーに入っていた。「すごく彩度の高いブルーはどうだろうか、ものすごく濃い紺みたいな色はどうだろうと考えていましたが、ブルーの中間領域の色は、男女問わずすごく選びやすい色だと思っていました」。一方で、「近所で悪目立ちしたくないという奥様の声がかなりあったんです。家の雰囲気と合っていなくても嫌だし、できるだけトーンは抑え気味で彩度もそんなに高くないブルーにしています。街並みや、家の前に置いたときにすごくしっくりくるような色味を選んでいます」と説明する。

クロスターはどうか。「使い方を考えると泥道やキャンプ場に行くでしょうから、汚れが気になるでしょう。その汚れが目立ち難い色を選んでいます」と三輪さん。また、多少泥がついたとしても、「その泥が映えるような、泥がついているのすら格好良いみたいに見えるようにコーディネートしています」と話す。

因みにクロスターの「デザートベージュ・パール」は新たに開発されたカラーだ。そこまでこだわったのは、前述の泥汚れにプラスし、「ベージュ領域は女性も選びやすいと直感的に思っていました。私もベージュのクルマが欲しいと思っていた時に、ホンダにはないなと思ったのです(笑)」と自身もフリードのターゲットユーザーであることから、自分や周りの意見を踏まえながらデザインした。

そして三輪さんは、「エアーもクロスターも女性限定とか男性限定のようにしたくなくて、どちらのお客様も年齢も問わずに選んでもらえるような色を意識して作っています」とコメント。因みに三輪さんの好みはクロスターのデザートベージュ・パールだそうだ。

悪目立ちせず、街に溶け込みながら、でも、乗っている本人も気持ち良くストレスなく走らせることができる。それをデザインでも実現すべく開発されたのが新型フリードだ。内外装デザインやCMF、パッケージ担当までターゲットユーザーだったこともあり、開発途中では担当領域外でも多くの意見を出したという。自分の欲しいクルマをという視点が多く盛り込まれている新型フリード。市場でも大いに受け入れられそうだ。