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アストンマーティンの次世代EV、テスラのライバル「ルシッド」がパワートレイン供給へ
アストンマーティン(Aston Martin)は6月26日、米国のルシッドグループと提携を結び、次世代の高性能EV向けにパワートレインの供給を受けると発表した。
アストンマーティンは2019年、ブランド初の市販EVの『ラピードE』発表した。ラピードEは、アストンマーティンの4ドアスポーツカー、『ラピード』をベースに、EVパワートレインを搭載したモデルだ。ラピードEでは、2つのモーターが合計で最大出力612ps、最大トルク96.8kgmを発生。0~100km/h加速4.2秒、最高速250km/h(リミッター作動)の性能を実現していた。1回の充電での航続は約322km。限定155台が生産された。
◆将来の電動モデルの基盤になる新しいプラットフォーム
ルシッドグループは、米国シリコンバレー発のEVベンチャー企業だ。テスラのライバルになり得る存在といわれている。ルシッドの4ドアEVが『エア』。このルシッドの現在、将来のパワートレインとバッテリー技術が、アストンマーティンの新型EVプラットフォームの中心的な役割を果たすという。
アストンマーティンの電動化プログラムは、英国の高級車ブランドによる広範囲な「Racing. Green.」サステナビリティ戦略の柱となるものだ。今後5年間で、先進テクノロジーに20億ポンド以上の投資が行われる予定。この投資は、内燃エンジンからEVテクロジーへと段階的に行われる。
アストンマーティンは、インテリジェントで適合性の高い車両プラットフォームの開発において、卓越した実績を持つ、と自負する。アストンマーティンが開発した新しいプラットフォームは、ハイパーカーからスポーツカー、GT、SUVに至るまで、将来の電動モデル全体の基盤になる。その最初のモデルは、2025年の発売を目指している。その前に、アストンマーティンは初のプラグインハイブリッド(PHEV)ミッドシップエンジンスーパーカー、『ヴァルハラ』を2024年に発売し、2026年までにすべてのアストンマーティンの新しいモデルラインナップに電動パワートレインの選択肢を設定する予定だ。長期的な目標は、2030年までに主要な製品ラインナップを完全に電動化することにある。
◆メルセデスベンツとの提携は維持
また、メルセデスベンツは、アストンマーティンに対して、内燃エンジン、ハイブリッド、EV向けに、現在および将来の世代のパワートレインおよび電気/電子アーキテクチャーを含む、幅広いテクノロジーを、引き続きアストンマーティンに供給する。
アストンマーティンにとって、ハイブリッドやEVパワートレインへの移行は、大きなチャレンジという。近未来のアストンマーティンの電動モデルには、ルシッドのパワートレインテクノロジーと、メルセデスベンツの電子アーキテクチャーを中心に、クラスをリードするパフォーマンスと洗練された車両ダイナミクスの最適な組み合わせによる持続可能な次世代テクノロジーを採用する。
その最大の特長は、バッテリーシステムの効率だ。これは、パッケージングと質量の点で大きな利点をもたらすという。具体的には、エネルギーの放出や回生速度、効率を制御するインバーターテクノロジー、無段階に調整可能な4輪トルクベクタリングを可能にするツインモーターテクノロジーなどがある。
◆洗練されたエアロダイナミクスが航続を延ばす
各ホイールへの出力配分を正確に制御することで、新たなレベルのスリリングで楽しいドライビング体験を実現する、と自負する。各ホイールにかかるトルクを正確に測定することで、同じプラットフォームとパワートレインのハードウェアを使用しながら、EVモデルごとに独自の動的仕様を策定していく。
この作業の一翼を担っているのが、「アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)」だ。アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ1チームのコンサルティング部門のAMPTは、F1のノウハウと方法論をアストンマーティンのロードカープログラムに適用し、迅速な問題解決スキルとテクノロジー移転により車両開発のペースを加速し、効率性とパフォーマンスを向上させるという。
また、洗練されたエアロダイナミクスは、EVの効率を向上させ、航続を延ばす。同様に、インテリジェントなパワートレイン管理により、1回の充電で最大限の航続を実現することを目指している。
◆ブレンボやピレリが開発に参画
次世代の高性能EVには、電動式の冷却用ベントやホイールアーチとアンダーボディ周囲のエアフロー管理によって、EVパワートレインの強大なパワーとトルクを受け止めるために必要なワイドタイヤによる空力への影響を軽減する。
長年の技術パートナーのブレンボは、ブレーキを電子的に制御する新しいブレーキ・バイ・ワイヤー・テクノロジーを開発中。これにより、車両の航続が伸び、ブレーキレスポンスが改善され、パッドの摩耗とブレーキダストの発生が抑制される。
ピレリは、「ピレリ・サイバー・タイヤ」機能を搭載した最新世代の「P Zero R」タイヤを開発している。これは、広範囲なデータを収集し、個々のタイヤにかかる負荷を計測可能なゲージにより、実際の走行における航続をより正確に計算できるセンサーシステムになる、としている。