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まずバッターボックスに立て…トヨタ カムリWS 開発の異例

2017年に発売されたトヨタ『カムリ』、2018年にはスポーティな、ツートンカラーが特徴の「WS」グレードが追加された。勝又正人チーフエンジニアによると、カムリは開発過程において、ちょっとした異例の展開があったという。

新型車の開発はおおむね行程・手順が決まっており、エクステリアデザイン開発の最終段階では、フルサイズのモデルを作って役員にプレゼンテーションする。デザイン案の決定がイレギュラーだったという。

服で太って見える色や痩せて見える色があるように、プレゼンモデルの塗装は、形に影響を与えないようなニュートラルな色が選ばれる。市販車の外装色が一色だけの設定ということはないから、まずニュートラルな色で三次元のフォルムを吟味し、次に車体色を合わせていく。フルサイズのプレゼンではシルバーグレイに塗られることが多い。

新型車の開発要件は市場動向や環境規制などさまざまで、デザインの選択肢も増える。そういった複数のモデルがシルバーグレーに塗られてプレゼンテーション会場に並ぶわけだ。

カムリで開発デザイナー自身が推していたのは、のちに市販されるフォルムに赤×黒のツートンだった。そこで、その仕様のフルサイズモデルをプレゼンテーション会場の隅に“参考出品”として置いておいたのだという。役員は“参考出品”に目を留め、GOサインを出したそうだ。

勝又チーフエンジニアは「豊田章男社長がいつも言うように『まずバッターボックスに立て』です。やりたければやってみろ、チャレンジ精神ですね」と説明する。打順を抜かしたような気もするが。

デザイナー推しのツートンだが、北米市場ではフルモデルチェンジと同時に設定され、日本市場では1年後の導入となった。「自信があるなら日本でも最初から入れろ、という話になりますが、旧型の販売実績を鑑みるとそこまで強気には……」と勝又チーフエンジニアは苦笑する。日本では満を持しての登場となった。