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【ダイハツ ムーヴキャンバス】可愛さは親しみ…商品企画担当[インタビュー]
2代目となったダイハツ『ムーヴキャンバス』は、可愛らしさをどうとらえるかに腐心して企画が進められたという。そこで商品企画担当者に、初代の強みや弱み、そしてそれらを踏まえた2代目へのこだわりについて話を聞いた。
◆可愛いを探して
—-:松田さんは商品企画に移られてはじめて車種のメイン担当になられたそうですね。このムーヴキャンバスの担当が決まった時、どう思いましたか。
ダイハツ営業CS本部国内商品企画部の松田梨江さん(以下敬称略):ムーヴキャンバスのことは街中で見かけて可愛いクルマだなと個人的にも思い、知っていましたのでこんなクルマを担当させてもらえるんだというのが嬉しかったですね。ちょうどムーヴキャンバスのターゲットユーザーと同世代ということもあって、たくさんの人が自分に意見を求めてくれたのも、大変幸運だったなと思います。
ダイハツデザイン部第1デザインクリエイト室課長の芝垣登志男さん(以下敬称略):擦れていない商品企画が来たという感じで、逆にそれが良かったですね。
松田:あまり背景や知識がないことで、周りにたくさんご迷惑もおかけしたんですけれど、そういったところをそのようにいってくれる人もいたので、ここまでやって来れたのかと思います。
—:ムーヴキャンバスの担当になった時に、どんなクルマにしたいと思いましたか。
松田:まず、いまのムーヴキャンバスのファンは離れさせてはならない、ずっとファンで居続けてもらいたいと思いました。街中で見かけた時にあのクルマは可愛いってなることは、確実に守りたいと思いました。
—:可愛いという一言は、ものすごく幅広いですよね。それをどう捉えていったんでしょうか。
松田:自分の中にある可愛いは、自分が思っている可愛いでしかありませんよね。そこで本当にたくさんの人のご意見を聞いたということに尽きます。コロナ禍でしたので社内の女性社員を中心に、たくさん「可愛いとは何か、どんなキャラクターが好きなのか、どんな商品を使って、どういうふうに暮らしているのか」まで掘り下げて、いろんな方に価値観を聞いていきました。「ブランド物が好きですか」とかそんな細かいことまで、若い女性だけではなく、大人の女性にも聞いていきました。
◆さりげなさが重要
—:結果としてムーヴキャンバスの可愛さはなんだったんでしょう。
松田:ムーヴキャンバスの可愛さは親しみですね。背伸びをしないで選べるクルマというところです。その親しみにはいくつか思いがあって、そのひとつは自分で扱いきれる大きさというところも親しみですし、あとは可愛らしいフェイスというところも親しみに通じています。また自分がリラックスできる内装空間というところも親しみだと思うんです。そういうところがムーヴキャンバスに欠けてしまうと、それは初代のムーヴキャンパスについて皆さんが思っていたものではなくなってしまうのではないかなというのはありました。
—:松田さんは芝垣さんたちデザイン部が提案した3案をご覧になったときにどう思われましたか。
芝垣:今回大事なキーワードの一つとして遊び心というのがありました。これらの案にも細かなこだわりがたくさん詰まってるんですけれども、ちょっと要素として大きいかな、こだわりがたくさん見えすぎてるかなと感じました。もうちょっとさりげない細かさというところ、それがおしゃれだという女性が多いので、そういうところはもうちょっと要素として小さくてもいいんじゃないかなというのを感じました。
松田:デザイナーのエゴが出ちゃっている感じのようです。
—-:もっとスッキリさせたいイメージなんですね。
松田:特徴的という点では全部特徴的だとは思うのですが、その特徴がわかりやす過ぎるというか、ムーヴキャンパスの程良い特徴以上のところまで行ってしまってるような印象を受けたのを覚えてます。
芝垣:もっとさりげなくみたいな印象にしてほしいという要望をもらっていました。これみよがしに見えちゃっていると。おそらく丸だとちょっと可愛すぎるとか、ウキウキ方向だとちょっと“いきっている”みたいな。そういうのを我々はあえて個性として出そうとしているんですけど、それが今回のターゲットでは逆に邪魔なものとして感じられるということで、そこは難しかったですね。
松田:頭身大の自分でいること、自然体の自分でいること、健康で快活でいて、それが素敵なんだという価値観を持っている人たちに対して、これがいいよ、これがいいよといい過ぎてしまうのは、実はちょっと敬遠されてしまうのではないかという懸念がありました。なので、その人たちが自分たちにとって等身大だと思ってもらえるような表現にしたかったんです。すごく難しいんですけど・・・・。
芝垣:そういうことだと思うんですよね。目指してたものが、我々が想像していたものよりも高かったということです。
◆2つの課題
—:商品企画として先代の振り返りもやられたと思います。そこでは良い意見と悪い意見が出たでしょう。それぞれどういう意見がありましたか。
松田:良い意見では、デザインで3つありました。ひとつは可愛いスマイルフェイス。そしてサイドから見ても、前後ろから見てもムーヴキャンバスとわかる特徴的なツートーン。そしておおらかなロングキャビンや丸いシルエット。この3つはユーザーインタビューしても常に出てくる意見でした。
一方の悪い意見では、ちょっと走りの面で、山間部にお住まいの方などからはターボは必須、ターボが欲しいという方がいらっしゃいました。また、ムーヴキャンパスを検討されている方の中には、私の家は家族みんなで1台のクルマを使わなければならないのですが、自分だけの意見であればムーヴキャンバスは欲しいけれど、あまりにも可愛いらしすぎて、その意見が通りづらいというお話もありました。
その2つを解決する術として、今回ターボの設定と、セオリーとストライプスの設定に至りました。
—:マーケティング的にセオリーとストライプスはどのくらいの割合になると思いますか。
松田:期待を込めて、半々になるといいなと思っています。その理由としては、ツートーンに負けないぐらいの不可価値を、モノトーンのセオリーに付与できたと思っていますし、さらに今回同価値、同価格として販売いたします。
◆ホッとするインテリア
—:ムーヴキャンバスの商品企画で、いまお話しいただいたこと以外でこだわられたところを教えてください。
松田:内装の居心地の良さはかなりこだわった点の1つです。運転はもとより、クルマという機械自体に苦手意識を持っている方にも、親しみを持ってリラックスしていただける空間にしたいと、お部屋のような空間を意識して開発しました。その結果、他のクルマにはない軽自動車初の保温機能付きカップホルダーですとか、色合い、デザイン、使い勝手も含めてゆっくりできる、リラックスできる空間になっていると思います。
特に軽初の保温機能付きカップホルダーですが、気持ちがホッとするのホッとと、温かいのホットとをかけてまして、”ホッとカップホルダー”と名乗っています。ではなんでホッとするのかというと、25度の室温で、2時間後にも42度で保温できているという機能を持たせました。この42度という数字にかなり技術部がこだわっていまして、人間が飲み物を飲んだ時に、ホッとする温度を突き詰めて検討した結果がこの42度だったのです。ファーストフードやコンビニなどでテイクアウトしたカップや缶、ペットボトルでも使用ができますので、どんな人でも困らないんじゃないかなと思っていますし、色々な人に喜んでいただける装備になっていると思っています。
またロゴマークにもこだわりました。どういうものだったら保温しいてると思っていただけるのか。熱くしてるではなく、保温しているというところを表現するマークに仕上がっていると思います。
芝垣:湯気の出方とかによっては温泉みたいになっちゃったりしますし、暑くなるように見えたり、湯沸かしのように見えたりして、そういうところは検討会をかなりやった結果、ホッとするロゴにたどり着きました。