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【ホンダ ZR-V】おとなしい外観に詰まったチャレンジ…純正アクセサリー[インタビュー]
ホンダが発表した『ZR-V』は流行りのタフでいかついSUVより上品でおとなしい。カスタムパーツは似合わない雰囲気もあるが、ホンダアクセスは果敢にもこの車の純正アクセサリに挑戦し、新型車発表と同時にパーツを用意している。
カーナビやドラレコなど機能パーツのアクセサリは当然として、エアロパーツ、アルミホイール、イルミネーションなどドレスアップパーツも充実している。それぞれにどんなこだわりがあるのだろうか。ホンダアクセスのチーフエンジニア苗代圭一郎氏、デザイン担当スタッフエンジニア佐藤友昭氏に詳しい話を聞くことができた。
◆「ギラギラ」「オラオラ」を好まない人のカスタマイズ
—-:ZR-Vの純正アクセサリパーツは、全体として質感優先である反面、Modulo Xなどを手掛けるホンダアクセスとしてはおとなしいというかインパクトに欠けるというか、ノーマルとの違いが目立たないようにも思えます。
苗代氏(以下敬称略):むしろそれを狙ったので、それは褒め言葉だと思っています。どこからが用品でどこまでがノーマルか。あえてその違いを狙うのではなく、想定するオーナーを意識した結果のコンセプトです。
—-:ZR-Vそのものが、ありがちなカクカクしたSUV、グリルを強調したオラオラ感とは違った方向性ですが、それをむしろ狙ったということでしょうか。
苗代:はい。車両自体のコンセプトがまさにそのような家族像をターゲットとしています。あまり自分を押し出さず、フレンドリーで付き合いやすい家族。30代共稼ぎ、50代子育て卒業組。行き届いたセンスにこだわりのある夫婦をイメージしています。市場調査でもそういった人はあまりギラギラしたものは好まないので、カスタマイズとはいえ悪目立ちしないアクセサリを意識しました。
佐藤氏(以下敬称略):デザインコンセプトに「グラマラス&エレガンス」というフレーズがあります。本機のデザインチームといっしょにアクセサリも考えていました。本機にはXとZという2つのグレードが設定されますが、ホンダアクセスの純正アクセサリは、もう一つ別のグレード、XとZの延長線上にあるアクセサリとして設計しました。加飾よりも機能や一体感を重視しました。
—-:エンブレムのキットもメッキではない落ち着いた色合いですね。
苗代:オリジナル色とのカラーコーディネートを考えた色合いにしました。
◆イルミネーションは上品かつシーケンシャル点灯で個性も強調
—-:インテリアではイルミネーションに凝っているようですが、最近はそのようなニーズが増えているのでしょうか。
佐藤:市場の声もありますが、どちらかというとアクセサリチームの意向が大きいと思います。ZR-Vはコンセプトに合わせた質感を達成しており、デザイン完成度が高いので、アクセサリや用品でできることの幅が狭いといえます。さらに完成度を高めるものとしてイルミネーションに挑戦してみました。
ドアポケット内側、センターコンソールボックス、ドリンクホルダー、フットライトなど細かいところを演出します。サイドステップガードとリアゲートの下側、リアパネルライニングカバーのイルミネーションはシーケンシャル点灯します。上質な光を追求するため、ドアの開閉タイミングや点灯時間を調整しました。
—-:ゆったりした動きで、ギラギラやピカピカと違った雰囲気のシーケンシャル点灯はかっこいいですね。
苗代:ありがとうございます。ワンランク上の上質な光のため、色は白に統一しました。また、パドルライト(ドアオープンで路上の足元を照らすライト)は、ロゴを投影するパターンではなく、白のラインを2本、グラデーションをかけて照らします。加飾部品ではありますが、足元を照らすという機能性も備えています。
◆カスタムチャネルの使い分けがホンダアクセスの強味
—-:個人的には『ヴェゼル』あたりからホンダのデザインコンセプトやターゲットが少し変わってきた、新しい世代を意識するような感覚があるのですが、ホンダアクセスとしてホンダ車の変化みたいなものは感じますか?
苗代:現場として何かが変わったとは感じていません。ホンダアクセスは購入の後押しになるような用品、買った後の満足感を味わってもらうための製品を開発しています。どんな車両がきても、それを引き立てる、仕上げる、という方針に違いはありませんから。ただし、やり方はそのときの技術や車種の特性に合わせて変えています。
佐藤:どんな車両でも、チャネルの使い分けが得意なのがホンダアクセスの特徴です。カーナビやオーディオから、Modulo Xのようなチューニングパーツやホンダドッグスやアウトドアアクセサリなど振り幅が広いので、変化があっても対応できているからかもしれません。
—-:ZR-Vのアクセサリ開発で苦労した点、工夫した点などはありますか。
佐藤:とくに技術で革新的なことはしていませんが、部品の設計でのハードル、技術的なハードルはありました。フロントリア、サイドのエアロパーツは、スケッチで光の通り方を、ハイライトや陰影を入念に考えました。フロントスカートとフォグライトガーニッシュではライトの位置にもこだわった点があります。クラウチングスタートをイメージして、少し前傾姿勢したような形を演出しています。
苗代:日本のあとEUで発売する予定があるのですが、EUの法規やニーズに合わせるための苦労や工夫もあります。EU向けでも、デザイン+仕様や機能を壊さないデザイン、造形に自信があります。
◆欧州も意識したZR-Vは北米HR-Vとは真逆のデザイン
—-:今回のアクセサリはEU投入も最初から意識していたのですか?
苗代:はい。設計段階から欧州でも売るといわれていました。苦労したのは、排ガス・風洞テストです。法規制が違うのでセッティングは何度もやりなおしました。なじんでいるのは見た目だけでなく機能・性能もです。ノーマルととても親和性が高いアクセサリに仕上がりました。
佐藤:テールゲートスポイラーはいちばん風の影響を受けます。少し変えただけでCd値は変わってしまいますし、挙動も変わってきます。ホンダの設計からは、かなり作りこんでいるのでアクセサリは難しいとまで言われました。純正を殺さず性能も下げないように、針の孔をつくチューニングでした。
—-:空力パーツの開発となると、たとえばModulo Xでの作り方や技術を何かを取り入れたのでしょうか。
佐藤:直接利用した技術はありませんが、手法は同じです。風洞に発泡スチロールを持ち込んで細かく削り込み、エアロパーツの調整を行いました。Modulo Xの開発は、自分もやっていたのでいろいろ試してみたいことはありましたが、ZR-Vではコンセプトとも違ってくるのであえてやりませんでした。
—-:そうなると気になるのはZR-V Modulo Xバージョンですが、計画はありますか?
苗代:そこはノーコメントで(笑) 北米ですでに発表したHR-Vは、ベース車はZR-Vと同じなのですが真逆のデザインですよね。グリルデザインやフェンダーも変えています。北米仕様はとにかくタフなデザインや作りが必要です。
佐藤:セダンライクなものからクロスオーバー、商用車的なものまで、SUVはとらえ方の幅が広い面白いカテゴリーだなと思っています。ロールスロイスが『カリナン』(SUV)を作る時代ですから。
—-:なるほど。ホンダアクセスがModulo Xをやらなくても、ギャップ萌えが好きな人はZR-Vのような見た目がおとなしい車こそあえてカスタム素材としてやりそうですね。