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ビプロジー、新会社を設立して自動運転車安全評価のためのプラットフォームを提供

  • 《写真撮影 山田清志》
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BIPROGY(ビプロジー、旧日本ユニシス)は9月6日、内閣府や三菱プレシジョンなどと記者会見を行い、新会社を設立して自動運転安全性評価のためのプラットフォーム「DVIP(Driving Intelligence Validation Platform)」製品とサービスを同日から提供すると発表した。

自動運転の実現には、安全性の確保が欠かせないのは言うまでもない。そこで、内閣府は戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の第2期で「自動運転」を12課題のうちの1つとして、産学官共同で取り組むべき研究開発テーマとして推進することになった。

SIP自動運転では、さまざまな交通環境下におけるセンサーの弱点現象の検証など、自動運転における安全性確保のための重要課題に対応するため、2018年にDIVPコンソーシアムを設立し、産学官のオールジャパン体制で「仮想空間における安全性評価環境の構築」に取り組み始めた。

「ビプロジーと三菱プレシジョンはコンソーシアムのメンバーとしてDIVPの開発に携わってきた。今回、DIVPの社会実装を目指して事業化することになった。その事業化にあたって、ビプロジーは新会社『V-ドライブ テクノロジーズ』を設立し、三菱プレシジョンとの業務提携のうえで、DIVP製品とサービスをワンストップで提供していく」とビプロジーの佐藤秀彰執行役員は説明する。

V-ドライブ テクノロジーズは「自動車・自動運転分野で、世界最高性能のDIVPシミュレーションを武器に事業運営体制を構築し、ツールチェーン構築を軸に各社との互恵的なパートナーシップを築き、自動運転の安全性評価の基盤確立を目指す」(宮地寿昌社長)という。

同社は製品企画開発、ユーザー窓口、DIVP製品とサービスの提供を担当し、ビプロジーは自動運転安全性評価のためのプラットフォームDIVPに関する知的財産の管理、三菱プレシジョンは仮想空間走行環境モデル作成プログラム「SDMG(Space Designed Model Genertor)」の提供をそれぞれ担当する。これによって、シナリオ作成からシミュレーション実行までのツールチェーンをユーザーニーズに合わせてクラウドやオンプレミスなど多種多様な形態で提供できることになる。

今回開発されたDIVP製品にはこんな特徴を備えている。まず、実現象と一致性の高いシミュレーションもでるであること。センサー出力を精密に再現するため、各センサー検出原理、使用電磁波帯域における物理現象を、反射物性の原理原則に基づきモデル化し、実車試験結果との突き合わせにより一致性検証が実施されている。

2つ目がシナリオ作成→認識性能評価→車両制御検証が一気通貫で可能なプラットフォームであること。DIVPの研究成果がツールチェーンとして提供され、AD/ADASシステムの安全の鍵となるセンサーの弱点の再現、およびシナリオ作成から結果解析・評価までの効率化が可能となっている。

そして、3つ目が既存のシミュレーションソフトとの結合性が確保されていること。ドイツを拠点とする国際標準化団体ASAMの標準であるOSI、Open Scenario、Open Drive等に準拠することにより、既存のシミュレーションソフトとの結合が容易で、ASAMに対して標準仕様を提言するなど、国際標準化活動にも貢献しているそうだ。

「今後は、安全性のシナリオ作成から結果の解析・評価までを効率的に行うことが可能になって、自動運転車や先進安全性車両の開発、センサーの開発に役立ててもらえる」と内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の木村裕明参事官は話す。なんでも実車走行で行っていた1年の開発が3週間ほどで済むそうだ。

このプラットフォームの出現によって、これまで欧米の後塵を拝していた日本の自動運転の開発が一気に加速するかもしれない。