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【日産 エクストレイル 新型】「ヒット作の次は同じコンセプトだとダメ」デザイナー渾身の見どころとは

  • 《写真撮影 中野英幸》
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  • 《写真提供 日産自動車》
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  • 《写真撮影 中野英幸》
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2022年7月20日、ようやく日本登場となった、日産の新型『エクストレイル』。初代の「タフギア」に原点回帰しつつも上質感もあるエクステリアデザインと先進的なインテリア、そして日産の技術が惜しみなくつぎ込まれたパワートレインなど、どこをとっても他社に引けを取ることのない仕上がりぶりで、まさに「日産渾身の一台」となっている。

そんな新型エクストレイルの魅力の中でも、今回はデザインに着目。新型エクストレイル開発に携わった日産のデザイナーたちに伺った話をもとに、新型エクストレイルのデザインの魅力に迫っていく。

「上質さを身にまとったタフなSUV」がコンセプト
お話を伺ったのは、新型エクストレイルを含む昨今の日産車全般のデザインを統括している、グローバルデザイン本部 第二プロダクトデザイン部 プログラムデザインダイレクターの入江慎一郎氏と、新型エクストレイルおよび『ノート』『ノートオーラ』のインテリアなども担当した、グローバルデザイン本部 第二プロダクトデザイン部 デザインマネージャーの能代洋平氏だ。

日産のエクストレイルといえば、初代エクストレイルのデビュー時には「タフギア」をキーワードとし、2代目でもそれを継承。先代である3代目は、タフギアに先進技術を足した都会的なクロスオーバーSUVへと舵を切ったことで、初代~2代目のファンからは当初、「上品になりすぎた」と揶揄されたこともあったが、結果的に3代目は、2018年の4WD SUVカテゴリにて登録車販売台数ナンバー1を獲得し大成功している。

今はどのセグメントでも、多種多様なSUVが乱立している時代。そんななかでエクストレイルが存在感を発揮するには、やはり初代のタフギアというアイコンをきちんと継承することだと考えたと入江氏はいう。3代目の「先進性」と「上質感」を継承しつつも、「タフギア」に原点回帰し、もう一度SUVライクな分かりやすい形にしたかったそう。「ヒット作の次は同じコンセプトだとダメ」(入江氏)。映画などと同じく、成功した次の作品は特に難しく、今回の新型エクストレイル開発も非常に困難だったそうだ。

「無意識によさを感じる」デザイン
新型エクストレイルのデザイン先行検討が始まったのは、2018年ごろとのこと。パワートレインが電動化されていく時代においては、デザインにおいても大きくシフトが必要と感じていたという。そこで入江氏をはじめとした日産デザイン部門が立ち上げたのが、すべての日産車におけるデザイン共通言語「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」だ。

「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」は、半永久的に飽きがこず、日本的な美意識をもちながらも、先進性を加味していく、というもの。タイムレスだけではクラシカルでオーソドックスに感じられてしまうため、日本的な美意識や先進性を加えることで、電動化時代のデザインとしたかったという。2020年5月の決算発表で表明された15車種の新モデル「A to Z」は、この「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」に沿って、デザインの方向性を一気に揃える、という動きの一環だったそうだ。

前述したように、新型エクストレイルでは全体のシルエットをがっちりといたタフさが出るように表現したという。具体的には、ボディサイドにはキャラクターラインを極力減らして無駄をそぎ落とし、最後に残った要素だけを魅せたかったそう。またフロント周りは、初代や2代目が持っていた角ばったラインに、これまでのように「メッキ」で上質感を表すのではなく、つくりこみの良さで表現した。「なんとなく高級に見えるような、「完成されたよさ」を無意識に感じてもらえるようにした」という。

入江氏によると、ボディサイドでブランドを最も表現できるのはCピラーのデザインにあるという。今回の新型エクストレイルでも、「バッヂがなくても車種が分かる」ほど、歴代の特徴をとらえた造形となっているとのこと。確かに、「く」の字型にデザインされたリアクオーターガラスの後端は、歴代エクストレイルと同じに見える。

身近なスマホのようなディスプレイを目指した
インテリアも新型エクストレイルのウリの一つだ。インテリアのコンセプトは「プレミアムコンフォート」。12.3インチの液晶メーターと、同じく12.3インチのナビゲーションモニターや、ノート/ノートオーラ、キックスでも採用したブリッジコンソール、そして電制シフターとその下側のストレージ、後席から楽にアクセスできるバタフライ式センターコンソール、さらにはアンビエントライトや木目調パネルなど、先代と比べると、2世代は新しくなった印象を受ける。 

「プレミアムコンフォート」というコンセプトは、どのメーカーでもやっていそうな「ありがち」なコンセプトだが、今回の新型エクストレイルでは細部にまでこだわってつくられた印象で、「本物のプレミアムコンフォート」を感じさせる仕上がり。なかでも特にこだわったのが、ディスプレイのデザインだ。

インテリアデザイン担当の能代氏によると、新型エクストレイルの12.3インチの液晶メーターとナビゲーションモニターは、デジタルで使いやすそうな印象を与えるため、とにかくサイズを大きくしたかったという。イメージはスマホやタブレットのような、身近にあるデジタルデバイスだそうだ。

新型エクストレイルでは、アリアやノート/ノートオーラ、サクラといった最新世代が採用している、2枚の液晶モニターをつなげるディスプレイ(日産ではモノリスと呼んでいる)は採用していないが、新型であるT33型は、2020年に北米仕様が発売開始とタイミングが早かったため、間に合わなかったのだろう。いずれはモノリスへと統一されていくことを期待したい。

すでに次のアイディアも
ようやく販売開始にたどり着いた新型エクストレイルだが、すでに次のアイディアも、頭の中に入っているとのこと。入江氏は、建築家の隈研吾さんのモダン建築をよく見ているようで、そこからインテリアの構成を考えたりもするそう。特に、釘を使わない構造や、継ぎ目が分からないようパーツ同士の組みあわせの境目を消すような加工などの細部の加工ついて、クルマに持っていけるものは織り込みたいと考えながらみているとのこと。新型エクストレイルでも、地味な細部を詰めていったことが、「上質さ」につながったと考えているそうで、ぱっと見では気づかない細部にこそ、デザイナーとしてのこだわりがあるようだ。

デザイナーの心意気まで理解をすると、新型車の見え方が変わってくる。引き続き、日産車のデザインには注目していきたい。