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自動運転でドリフトする スープラ 、その技術は安全性向上に…トヨタ
トヨタ・リサーチ・インスティテュート(Toyota Research Institute)は2月2日、サーキットをドリフトしながら自動運転できるように、車両をプログラムすることに成功した、と発表した。
『スープラ』の実験車両に自動運転プログラムを組み込んだ。最新のソフトウェアが1秒につき20回、走行ルートを計算。サーキットでのドリフトしながらの自動運転でも、車両のバランスを保つという。
◆ステアリングやブレーキをコンピューターで自動制御
サーキットでの自動運転ドリフトには、「NMPC(非線形モデル予測コントロール)」と呼ばれるテクノロジーが用いられた。トヨタ・リサーチ・インスティテュートは、ドリフト状態から、タイヤのグリップを回復させたドライビングにスムーズに移行できるNMPCコントローラーを開発した。
自動運転の研究用に特別にカスタマイズされたスープラでテスト走行を行った。場所は、米国のサーキット「サンダーヒルレースウェイ」。スープラの実験車両では、ステアリング、スロットル、クラッチ、シーケンシャルトランスミッション、4輪独立ブレーキを、コンピューターで自動制御する。
また、データを収集する目的で、サスペンション、エンジン、トランスミッション、シャシー、ロールケージや消火器などの安全システムが、「フォーミュラドリフト」で使用されているものと同じシステムに変更された。
◆プロドリフトドライバーの具志堅士郎選手がプロジェクトに参画
トヨタ・リサーチ・インスティテュートは、スタンフォード大学のダイナミックデザインラボと協力。エンジニアは、プロのドライバーの技術と自動運転技術をどのように組み合わせるかについて、研究を行ってきた。目標は、新しいレベルのアクティブセーフティテクノロジーを開発し、それを広く普及させて、トヨタや他の自動車メーカー車に搭載できるようにすることだ。
トヨタ・リサーチ・インスティテュートとスタンフォード大学のダイナミックデザインラボは1年前、衝突を回避し、ケガや死亡事故を防ぐために、新しいレベルのアクティブセーフティ技術の開発に着手した。スペシャリストの「GReddy」と、プロドリフトドライバーの具志堅士郎選手もプロジェクトに参画した。熟練したドライバーに匹敵する運転技術を車両に搭載することで、危険な状況に遭遇した一般的なドライバーの対応能力を引き上げ、道路上のすべの人々の安全を追求していくのが目的だ。
トヨタ・リサーチ・インスティテュートのジョナサン・ゴー氏は、「濡れた路面や滑りやすい路面に遭遇した場合、プロのドライバーは車両をドリフトさせて対応できるが、ほとんどのドライバーはプロではない。障害物を認識し、サーキットなどのクローズドコースで障害物を回避し、自動運転でドリフトできる車両をプログラミングした」と語る。
◆ドリフト中の後輪駆動車を制御できる自動運転アーキテクチャ
自動車事故により、米国では年間およそ4万人、全世界では年間およそ135万人が死亡している。トヨタの目標は、その数をゼロにすること。今回の研究を通じて、自動車事故による命を救うことを目指している。
トヨタ・リサーチ・インスティテュートは、スタンフォード大学との実験により、ブレーキ、ステアリング、駆動力を利用して、ドリフト中の後輪駆動車を制御できる自動運転アーキテクチャを生み出した。プロのドリフトドライバーの技術に触発された研究では、自動運転技術に人工知能(AI)アルゴリズムを組み合わせることを目指している。
なお、トヨタ・リサーチ・インスティテュートは、突然の障害物や路面凍結などの危険な道路状況に遭遇した場合、事故を回避するために、自動運転ドリフトの技術を生かしていく、としている。