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日産 はたらくクルマ 展示会…ワーケーション向けや一風変わったものも
日産自動車のGRANDRIVE(神奈川県横須賀市)で、日産と関連企業が運用している「はたらくクルマ」の展示会第3回が開催された。2020年に行われた第2回に引き続き、今年もメディア向けの開催となった。
昨年は主にコロナ禍の防疫に注力した車が集ったが、今年は環境に優しいEV車やEVバッテリーを利用した車や、昨今注目されている「ワーケーション」に着目した車が多く並んでいた。
まずはEV関連車からご紹介。
1台目は宝自動車交通が運用する、『リーフ』をベースとしたタクシー車両だ。同社は以前から環境に対する意識を高め、初代リーフの頃からタクシー車両に導入、現在は2世代目を運用しているという。都内では電気自動車のタクシーはとても珍しく、お客さんから声を掛けられることもままあるそうだ。
そんなリーフのEVバッテリーに着目し、リーフの再生バッテリーを利用した車も2台展示。
ひとつがシンコーフレックスが作成した再生バッテリー使用のゴルフカートだ。ゴルフカートは一日に走行する距離がある程度決まっており、10kmも走行できれば十分なのだそう。そこで着目したのがリチウムイオン電池バッテリーとなる。従来の鉛電池バッテリーより軽量で、1日の走行距離に必要な容量ならばサイズも半分以下で済み、かつ環境にも優しいため、様々なゴルフ場からの要望を受け開発に着手したそう。動力には上記の通り、リーフの再生バッテリーを使用することで、大幅な軽量化を実現。振動も少ないため、実際に乗っているゴルフプレイヤーからも好評と担当者は語っていた。
続いてコアテックが開発した、こちらも再生バッテリー使用のスポーツカーが登場。こちらは二輪、後ろ一輪のいわゆる「リバーストライク」で、普通免許があれば運転可能かつ、サイズ的には車検不要な中型バイクに仕上がっている。「乗って楽しい」をコンセプトに開発したそうで、80km/hで走行可能。高速道路も乗れる上、観光地でのドライブも視野に入れているという。当日はまだナンバーが取得されていない試作車なので実走を見ることはできなかったが、テストドライブではかなりの爽快感があったそうだ。
同社は同じリーフの再生バッテリーを使用したポータブルバッテリーも開発しており、車体側に展示されていた。こちらはSDGsに配慮したエコな設計となっており、災害時や非常用電源、アウトドアなどでエコな電気を供給可能だ。
次に紹介するのはまさに「はたらくくるま」の代表格といってもいい車両たちだ。
まずは展示会の中で最も異彩を放っていた、厚木市立病院の「DMAT」移動用車両。「DMAT」とは災害派遣医療チームの頭文字(Disaster Medical Assistance Team)を取ったもので、災害が発生した際に速やかに活動できる機動性を持ち、専門的なトレーニングを受けた医療関係者で構成されたチームである。この「DMAT」は全国に拠点を持ち活動しているが、神奈川県厚木市にある厚木市立病院もこの「DMAT」の指定病院となっており、隊員が活動する際にこの移動用車両を活用するというわけだ。
一見レーシングカーのようなデザインが目を惹くが、これは日産の全面協力によるラッピングで、医療を象徴する十字と、それを支える「愛」「勇気」「希望」を表す3本線で構成されている。さらに昼夜問わず活動するスピード感と力強さ、信頼感を表現する黒と白が前後に配色されており、このデザインとなったそうだ。このデザインは唯一無二のため、日本一格好いい「DMAT」車両として隊員のモチベーションもアップしているそう。
ちなみに、この車両はクラウドファンディングで資金調達を行うなど、色々と変わった経歴の車でもある。さらに、厚木市立病院のホームページにて、当車両のペーパークラフトを配布しているので、興味が湧いた方は作成してみてはいかがだろうか。
続いて、真っ赤な車体が見覚えのある、東京消防庁の広報車両だ。『エクストレイル』をベース車両としており、災害時や関連行事などの撮影、記録を行うために活用されている。こちらはいわゆる消防車ではないが、消防活動時の作戦立案、民間や報道機関への情報提供に加え、映像による周知や注意喚起など、様々な点で活動している車両といえる。
また、こちらは資料による参考のみとなっていたが、『NV400』をベースとした日本初のEV救急車も東京消防庁では取り入れ、池袋で実際に活動している。EV車両のため振動や騒音が少なく、車内電力で電動ストレッチャーを稼働することもでき、災害時の電力確保も可能とまさに新時代の救急車といった具合だ。
そしてもう一台、これまた馴染みのあるロゴが目立つローソンの移動販売車両(『NT100クリッパー』ベース)も展示されていた。こちらはコンビニやスーパーがない山間部や坂のきつい地域などで実際に稼働している移動販売車両で、4つの温度を管理できる冷蔵庫や冷凍庫の機能を備えている。
およそ300アイテム(店舗の1/10)を搭載し、ルートに沿って定期的な巡回や老人ホームへの訪問販売などが行われている。同じローソン店舗での商品補充など、コンビニチェーンのメリットを生かした商品ラインナップが強みだ。車両での移動販売自体はかなり前から行っており、この車両も9年前から稼働しているそうだ。しかし昨今、お客さんや加盟店からのニーズが高まり導入地域が増えているそうで、注目が集まっている。
時代のニーズにあわせた車として「ワーケーション」に特化した車両も展示会には3台ラインナップされていた。
『エルグランド』のVIPパワーシートパッケージをベースにした豪華な車両は、「移動会議室」実証実験車両 Minimoだ。大日本印刷、日産自動車、ゼンリン、ソフトバンク、クワハラの5社が共同で開発した車両で、車での移動中に快適なWeb会議ができる「移動会議」となっている。「移動時間を有意義に活かす」をコンセプトに、高級ミニバンの後部座席を改良。打ち合わせやプレゼンテーションを効果的に実施できるよう、3カ月に及ぶ実証実験を行ってきた。外部からシャットアウトされた上質な車内空間に、大画面モニターと快適な通信環境、ドライバーと連絡を取れるツールなど、会議室として必要な機能を詰め込んだ珍しい一台となっていた。
そして日産からの出展として『NV350キャラバン』をベースとした「ワーケーション」向けコンセプトカーが2台展示。片方は可動式のオフィスがバックヤードから引き出せる「OFFICE POD CONCEPT」で、まさにオフィスがそのまま車から出てくるイメージだ。好きな場所でオフィスを展開し、開放的なデスクワークができるほか、くつろげるルーフバルコニーも用意されており、究極の「ワーケーション」カーとなっていた。
そのコンセプトカーをより現実的な市販モデルに落とし込んだのが、「MOBILITY CONCEPT」だ。こちらはトランスポータープロショップ「オグショー」とコラボし、日産内で企画開発中のアクセサリーなどをふんだんに搭載したモデルとなっている。広い車内にデスクや稼働シート、頭上レールなどを積み、ルーフ埋込み型のスピーカー、エンジン稼働中にスモーク状態と透過状態を切り替えられるフィルムなど、車内環境を快適にするたくさんの新アクセサリーが搭載されていた。機能性と新機軸を両立したこれらのアイテムにより、仕事のオンオフを切り替えやすい環境を作成、時間や場所にとらわれない「ワーケーション」ができるようになっている。
最後に紹介するのは、福祉車両の技術を利用した、『ノート』の助手席回転シートだ。こちらは「はたらくクルマ」の技術を元に一般車両に応用したもので、簡単操作で助手席が回転するため、乗り降りが簡単になるシートとなっている。足が不自由な方や和服・タイトスカートなどで乗り降りをスムーズにしたい方などに好評なシステムで、ぱっと見は普通のシートと変わらないのも人気のポイントだという。
シートの回転は横の紐を軽く引っ張るだけで行えるので、力はまったくいらず、スムーズに乗り降りが行えた。こちらはディーラーオプションとしてすでに選択可能で、電動の昇降装置と違いコストもあまりかからないので、人気を集めている。
以上で、全10台を紹介させていただいた。実用的な車両やすでに大活躍中の車両、時代の変化を感じさせる車両など、バラエティ豊かなラインナップとなっていた。カーボンニュートラルへの転換も進んでいる昨今、「はたらくクルマ」も内外共に環境に優しく、便利に進化していることを感じられた。今後はさらにどのような進化を遂げていくのか、非常に楽しみである。