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2035年以降、メルセデスは本当にEVしか販売しなくなるのか

  • 《写真提供 メルセデス・ベンツ》
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11月14日にNHKで放送された「NHKスペシャル・EVシフトの衝撃」を見たのだけれど、いつも取材が緻密なNHKスペシャルにしては誤報を伝えていて驚いた。

番組の中で「メルセデス・ベンツは2030年に完全EV化を表明した」と報じていたけれどこれは間違いである。電動化に関するメルセデスのオフィシャルのリリースに書かれている内容は大きく分けて以下の3つになる。

1,「2025年以降に発表する新しいアーキテクチュアはすべてEV専用とする」

2,「2025年にメルセデスは3つのEV専用アーキテクチュアを発表する」

3,「2030年に市場の受け入れ体制が整っていれば、販売するすべての車種をEVにする用意がある」

という内容で、2030年になったら自動的にメルセデスはEVしか販売しなくなるわけではない。

将来のことは現時点でまだ誰も分からず、だからどう転んでも対応できるよう幅広い選択肢をいまから準備しておこうというのが、メルセデスをはじめとした自動車メーカーのいまの立ち位置なのである。

◆残すは「GLE」と「GLS」 BEVのフルラインナップ化を目指すメルセデス

そのメルセデスは2030年に向けて着々と準備を進めている。『EQB』は簡単に言えば「GLB」をBEVにコンバートしたモデルなのだけれど、EQBの追加によってメルセデスはとりあえずBEVのフルラインナップ化をほぼ達成したことになる。つまり「EQA」「EQB」「EQC」「EQE」「EQS」「EQV」という3種のSUVと2種のセダンとミニバンにより、AからVまでの商品を取り揃えたわけだ。ここに欠けているのは「GLE」と「GLS」サイズのSUVだが、EQS、EQEのBEV専用アーキテクチュアはSUVにも対応可能なので、おそらく近い将来に追加されるだろう。

GLBは「GLA」と共に、MFAと呼ばれるエンジンを横置きにしたプラットフォームを使っているが、EQAと同様にEQBもそれを共有する。BEVであるEQA、EQBはエンジン、トランスミッションの代わりにモーターとバッテリーを搭載するわけで、MFAはBEVにも対応することを念頭に設計されたプラットフォームだったわけだ。

したがって、GLBの3列シート7人乗りはEQBにもちゃんと踏襲されている。ただし、キャビンのフロア下にバッテリーを収めているので、2列目以降のフロアはGLBよりもやや高い。それでもキャビン全体の容量はGLBと比べてもほとんど変わらないそうである。

そんなEQBのエクステリアデザインは、鏡面仕上げの黒い樹脂パネルで覆われたフロントグリルやLEDを使ったテールランプなどでGLBとの差別化が図られている。いっぽうインテリアは基本的にGLBと同じ。エアコンの吹き出し口が銅色になっているのは、銅線で巻かれたモーターを示唆しているそうだ。

◆航続距離は419km 交通事情や道の高低差なども加味しながら最適なドライブが可能に

まず、デビューしたのは「EQB300 4MATIC」と「EQB350 4MATIC」の2タイプのみ。今後、前輪駆動モデルや航続距離の長い仕様が追加される予定もあるという。この2台、モーターの種類もバッテリーの容量も同じだが、EQB300が228ps/390Nm、EQB350が292ps/520Nmをそれぞれ発生する。リチウムイオンのバッテリー容量は66.5kW、航続距離はどちらも419kmと公表されている。充電時間は一般的な急速充電器を使えば、10%から80%までにかかる時間は32分とのこと。ナビゲーションとバッテリー残量がリンクしていて、目的地をセットすると効率的なルートや必要ならば充電施設を経由地にセットしてくれる。

今回、目的地をセットしてディストロニックを使い“半自動運転”を試していたところ、60km/hで走行中に回生ブレーキを使ってゆっくりと減速をしはじめた。「どうしたのだろ?」と思っていたら暫くして制限速度が30km/hの標識が現れた。交通事情や道の高低差なども加味してバッテリーを無駄に消費しない最適なドライブを実践してくれていたのであった。

◆走行状況をモニタリングしバッテリー負荷を低減させる駆動力配分を実現する4MATICの制御

EQBの見所のひとつは4MATICの制御にある。内燃機を積むメルセデスの4MATICは基本的に前後の駆動力配分が固定だが、前後にモーターを搭載するEQBのそれは随時可変のタイプで、なんと最大1秒間に100回もの調整が行われる。プロペラシャフトで前後輪を繋ぐ四輪駆動車は湿式多板クラッチの圧着量などで前後のトルク配分を変化させる方法が一般的。しかしこれだと時間がかかってしまい状況に応じて即時に対応することが難しい。

いっぽう電気を使うモーターならすぐに出力の調整が行えるので、EQBのような制御が可能となる。これにより、FFでもFRでも50:50でも自由自在となり、時々の走行状況をモニタリングしながらバッテリーへの負荷の少ない駆動力配分を実現しているのである。

加えて、メルセデスはこの4MATICを「曲がる」のサポートとしても利用している。駆動力をハンドリングに有効活用する考え方はマツダなどがすでに取り組んでいて、加減速時に起こる荷重移動をよりスムーズかつ最適な量にコントールすることが狙い。実際EQBはGLBよりもよく曲がるのではないかと思うくらい操縦性がいい。車高の高さもほとんど気にならないし、GLBよりも重くなっているにもかかわらず操舵応答遅れもまったく感じられなかった。スクォートやダイブも4MATICによってうまく抑えられている印象を受けた。もちろんこれらの所作には、バッテリーを床下に搭載したことによる重心の低下も大いに影響しているが、BEVならではの制御だと思った。

そもそもGLAよりもホイールベースの長いGLBは乗り心地がよく、EQBはバッテリーの重さが加わってさらに上質な乗り心地になっていた。BEVになってエンジン音がなくなると他の音が目立つようになるため、遮音や吸音をあらたに見直しており、静粛性にも優れている。動力性能はEQB300でも重量増を相殺するくらいパワフルで、EQB350になると日本では少し持て余すだろうと感じるほどだった。

日本導入は2022年の下半期頃が予定されており、仕様と価格はまだ未定だそうである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。